コラム
Column
越境ECサイトの運営には様々な課題がありますが、その中でも最も大きな課題の1つは英語(言葉の壁)です。 言語の壁はみなさんが思っているより高く、正しい文法、単語を使用したとしても、コンテクスト(文脈や背景)に沿っていなければ、意図した通りに伝える事ができません。 以前、私がカリフォルニアにいた時に、パーティーで初めてお会いしたアメリカ人と話していると、彼が突然、日本語でこう言いました。 「オマエノエイゴ・・・ナオス。」 おそらく私の英語に違和感があったようで、それを日本語で指摘してくれようとしたのだと思います。意味は通じるのですが、内心「おいおい他にも言い方あるだろ」と思ってしまいました。 パーティーの時は笑い話でしたが、越境ECサイトを見ているとそんな笑い話のような英語サイトが無数にあります。商品や企業の特徴を説明をしている時に、不自然な言い回しの文章ばかりだったら、それこそ笑えません。 サイトを信頼していいいのかわからないですし、「クレジットカード情報なんて絶対渡したくない!」と思うのが普通でしょう。 例えば日本語でも、 「君の英語間違ってんでー。」 なんて言われると、関西弁か!などと突っ込んでみたくなります。 標準語と違うイメージを持つ方が多いかと思われます。 言葉遣いによって印象が異なるのは日本語も英語も一緒で、また会話とサイト上でも同じことです。 サイト上での英語は、レストランでいうところの【接客】と言えるでしょう。 正しい英語で伝えるだけでなく、ターゲットとする見込み客に対し、適切な言葉で説明が出来ているか否かで、商品やサイトの魅力の伝わり方は大きく異なります。 そこで今回は、越境ECサイトの英語の改善で売上を伸ばす2つの秘訣について、お話したいと思います。
そもそもなぜ越境ECの英語で、ユーザーに与える印象を考える必要があるのでしょうか? 答えは簡単です。英語はWEBサイトにおける「接客」の一部だからです。 WEBサイトはいわば自動化された接客システムであり、商品の良さを分り易く丁寧に伝える事が求められています。 同じ商品でも、ターゲット層によって英語を使い分けることで、商品の良さを最も適切な言い回しで伝えられるようになり、お客様の心象や購入する確率が改善します。 越境ECサイトの成約率を上げる方法の記事でも、どのように正しい英語でユーザーの意思決定に繋がる情報を提供するか触れております。 https://www.s-bokan.com/blog/ec/5-tactics-to-improve-conversion-rate.html#2-1
同じ内容でも、ブランドイメージに合わせて英語を使い分けることは重要です。 一般的な英語を使用するのか、より難しい高級感のある英語を使用するのかで、異なる印象をユーザーに与えられます。 高級感のある商品やブランドの場合は、ブランドイメージを保つために英語への配慮が必須です。エクセレントな商品はエクセレントな表現を、幅広く多くの方に使用してもらいたい商品は誰でも使えそうな表現をするということですね。 例えば、「焼肉は日本で必ず食べるべき料理である」という説明をするにしても、ターゲット層によって英語が異なります。 一般層向けの場合、以下の英語の言い回しになります。
一方で、高級な焼肉を求めているユーザーには、次のような英語が適切でしょう。
越境ECサイトを構築する際に、日本語の原稿を翻訳するのか英語ネイティブにライティングしてもらうのか等いくつか選択肢があります。下記の記事ではそれぞれの選択肢に関する説明がされているので、参考にしてみてください。 https://www.s-bokan.com/blog/contents-building/how-to-make-english-contents.html
英語は住む地域によって単語やスペルが異なります。
最も簡単な例はサッカーです。 私は海外サッカーが好きでよく見るのですが、英語で説明するときはFootballを使います。 昔アメリカで「Footballが好きなんだ」と言ったところ「そんな痩せた体型で出来るわけがない」と言われました。 実はFootballはアメリカではアメリカンフットボールを意味し、サッカーはSoccerという単語が使用されます。 その他にも「イケている」という意味としては、awesomeという言葉がよくアメリカで使用されますが、イギリスではbrilliantを使用します。 このように、英語圏の人間は、言葉遣いの違いだけで、どの地方から来た人間か直観的にわかります。また、現地に合わせた英語を使用しなければ、異なる意味として捉えられるケースがあります。 間違った単語の使用は商品に対する誤解や不信に繋がり、購入率が低下する危険性があります。
また、国によって異なるスペルが使用されることもあります。 良い例としてはcenterという単語のスペルです。 私がイギリスの大学院で勉強をしていた時は、周囲の人はみなcentreというスペルを使用していました。 その他にもFlavor(アメリカ英語)はFlavour(イギリス英語)、optimize(アメリカ英語)はoptimise(イギリス英語)といった感じで、国によってスペルが異なります。 【例】 地域に応じた英語の使い分けを、サイト上ではどのように活用すればよいでしょうか。 例えば、賃貸情報を英語にしたとします。 米:This is an cozy apartment with an elevator with good access to…. 英:This is a cosy flat with a lift with good access to…. [解説] Apartmentやelevatorはアメリカ英語、cozyというzのスペルはアメリカのスペルなので、上の文章はアメリカ英語の文章になります。 一方で、イギリス英語であるflatやlift、cosyというスペルから、下の文章はイギリス英語であることが想定できます。 どちらが適切かは、ターゲット層によります。 アメリカがターゲット層である場合はアメリカ英語、イギリスがターゲット層である場合はイギリス英語を使用しましょう。 このように、どの国のユーザーをターゲットとするかどうかで、使用する単語、スペルは変わってきます。
重要なのは、貴社がターゲットとするユーザーに応じて適切な英語を使用することによって、ビジネスに大きなインパクトを与えることです。 越境ECにおけるビジネスインパクトとは、売上の増加と、それに付随するKPI(流入数、購入率、滞在時間)の改善が挙げられます。 例えば、次のような越境ECサイトの事例があります。 ある越境ECサイトでは、日本語サイトの原稿が翻訳された文言がそのまま使われておりました。 これでは、ただ日本人向けの訴求内容を英語にしただけのもので現地のユーザーに響く内容ではありませんでした。 そこで、現地ユーザーのニーズをインタビューやフォーラム等で調査し、現地に合わせた訴求を用意すると共に、サイト内のテキスト要素、title、description、<h1>等の英語表現のリライトを実施しました。
自然検索では大きく分けて2点の変化が見られました。 1つ目がサイト内、title、hタグの文言のリライトによる流入数の増加 2つ目がdescriptionの書き換えによるSERPs(検索結果ページ)上でのCTRの向上です。 施策実施の1か月後には、流入数はなんと9.2%も増加したのです。 また流入だけではなく、購入数も同様に増加致しました。
実際にユーザーが商品の情報を読み込んでいるかどうか判断する指標の一つとして平均滞在時間を見ています。 (平均滞在時間が長ければ良いというものではありませんが、商品の購入を真剣に購入するにあたり、最低でも4~5分は見るだろうと予測の元、一つのKPIとして設定して見ています。) 英語文言のリライト施策実施後には1セッションあたり225秒→300秒と75秒ほど滞在時間が伸びました。 英語を改善したことで、ユーザーがある程度時間を要して真剣に情報を読む気になった(検討するようになった)ことを示しています。
今回のリライトの結果、1か月あたりの購入数が37%増加しました。 流入数の増加と共にサイト内の訴求内容が現地の人向けになった事で、CVR(成約率)も向上した事が成約数の増加に大きく繋がっています。 平均滞在時間が伸び、販売数が37%向上したという結果から、訴求の見直し、英語文言のリライトを行ったことで、より多くの割合のユーザーに商品の魅力が伝わったと言えます。
越境ECサイトを運営する上で言語の壁は常につきまとうものです。英文法、英単語、英作文などの課題だけでなく、 細かく突き詰めれば ・ブランドイメージのためのコンテクスト(文脈・背景) ・ターゲット層に沿った単語の選択 ・ターゲット層の方言の使用 などが、英語の質を決めると言えます。 このような細かいニュアンスはネイティブのライターのみが使いこなせます。 手間はかかりますが、一度改修出来れば貴社サイトの財産として蓄積していきます。 接客にはターゲット層に響く言葉が必要です。ターゲット層にとって適切な言葉を選ぶ事は、必然的にビジネスにインパクトを与えます。 越境ECで売上伸ばしていく為には、ターゲットを意識した細部の調節が求められます。 ついつい売上を上げようとすると集客に目が行きがちですが、接客も同じくらい重要です。売上が伸び悩んでいる、価値をなかなか感じてもらえないとお悩みの際は、ターゲットユーザーを意識した訴求や英語の見直しをしてみてください。
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