コラム
Column
越境EC(えっきょうイーシー)とは、海外の消費者に向けてWEBを通して商品を販売することを指します。日本から米国、中国をはじめとした海外へ販売する越境ECサイトの取引額は年々増加の一途を辿っています。 【越境】とは境界線や国境を越えることを言い、 【EC】とは”electronic commerce”(エレクトロニックコマース=電子商取引)の略です。
越境ECサイトは、インターネットを使用し、海外の消費者に販売する通信販売全般を示します。 大きく分けて英語圏のeBayやAmazonのFBA(フルフィルメント by Amazon)、中国語圏の淘宝網(タオバオ)、天猫国際(ティーモールグローバル)のように、海外のユーザーに使用されているモールに出店するケースと、独自ドメインを取得し、自社で海外向け通販ショップサイトを運営する2種類に分かれます。 最近のトレンドとしては、独自ドメインを取得し、越境ECショップを立ち上げるショップオーナーが増えてきており、独立行政法人中小企業基盤整備機構等の行政による助成金も越境ECサイトの増加を後押しをしています。
越境ECの市場規模は年々増しております。経済産業省の平成28年の発表によると、日本の越境 BtoC-EC(米国・中国)の総市場規模は 2,396 億円となりました。このうち、米国経由の市場規模は 2,170 億円、中国経由の市場規模は 226 億円です。 現状では、越境ECに関しては、日本から米国へ販売するものが多いです。経済産業省の調査データによると、越境EC市場規模は2020年に米国向けで2565億円、中国向けで267億円迄伸びると予測されています。
モール型は、ebayや天猫国際等、ターゲットとする国で使用されているプラットフォーム上に商品を掲載し、販売する方法です。 独自ドメイン型は、自社ドメイン上にECサイトを構築し、海外に販売する方法を意味します。 それでは、それぞれの特性や相性の良い商品はどういったものなのでしょうか?
モール型と独自ドメイン型どちらが適しているかは商品や戦略によって異なる為、一概には言えません。 ただ、商品のニーズが顕在化しており、価格の優位性がある商品を取り扱う場合は他社と比較検討され易いモール、価格よりも品質やサービス重視の場合は、じっくり商品の価値を訴求できる独自ドメインが良いでしょう。 ※商品のニーズが顕在化しているか否かは、モールでの該当および類似商品の出品数やキーワードプランナーでの検索ボリュームを参考してみてください。
モール型の場合、消費者にとって商品の価格が主な差別化戦略のポイントとなります。 知名度の高い商材を取り扱っており、価格の優位性のある企業はモールを使用すると良いでしょう。(何処よりも安く日本の家電製品が仕入れられる等、仕入れに優位性がある企業にオススメ) 集客自体はモールがしてくれる為、モール内での差別化戦略、集客を強化することで売上を伸ばすことが出来ます。 同じ商品で価格を一度に比較される為、安くないとそもそも商品詳細ページに遷移されません。 ニーズのある商材で価格さえ勝っていれば販売数を伸ばしていける可能性が高くなります。
逆に、価格以外の差別化戦略をとっている場合は、独自ドメインのショップサイトと相性が良いです。 独自ドメインの場合、集客を自力でしなければならないのが一番大きな難点です。 独自ドメインショップのメリットは、情報を豊富に掲載でき、オムニチャネル(検索エンジンだけでなく、メルマガやソーシャル等あらゆるチャネルで顧客との接点を持つこと)で再訪問を促すことができる事です。 顧客接点を多く持つ事で、徐々にユーザーの理解を深めながら購入につなげる戦略をとることができます。 また、独自ドメインサイトでは顧客をロイヤルカスタマー(継続的な商品の購入、積極的な他者への推奨)化する事で収益を最大化していき易いのが特徴です。
一度の購入で終わりというより、優れたユーザー体験を通してどれだけリピーターとなってもらえるかが、売上を伸ばしていくのに重要な鍵となります。
《モール出店型と独自ドメインECサイトの違い》
企業によっては、最初の顧客接点としてモールを活用し、フロントエンド商品(※)を販売し、同梱物や獲得したメールアドレスを通して自社サイトに引き込んでいこうとする戦略をとるところもあります。 自社サイトの作りこまれていない状態だったり、集客が出来ていない場合は、最初にモールでユーザーの反応を見るというのも戦略としてありかもしれません。 ※フロントエンド商品 集客商品とも言い、ユーザーに購買体験をしてもらう為の利幅の薄い、顧客にとってお得な商品 ※バックエンド商品 利幅の大きい本命商品 ※オムニチャネル リアル(実店舗)とネット(インターネット通販)の境界を取り払い、商品を販売すること。越境ECにおいてもリアル店舗とネットは分断されたものではなく、相乗効果をもたらします。
越境ECが注目されている理由は大きく分けて3つあります。
1つは、少子高齢化に伴う、国内の消費者の減少により、可能性が無限にある海外にネットショップオーナーが目を向けている事です。 例えば、日本の伝統スポーツである剣道の防具販売の企業では、国内の競技者人口の減少に伴い、競技者が増えつつある海外に目を向け越境ECに力を入れました。 これにより、海外からの売上が全体の売上の約20%を占めるまでになったところもあります。
2つ目は、日本が国策として2020年に訪日外国人旅行者数4000万人を目指しており、多くの誘致活動が行われている事です。これにより、日本や日本製品に注目する外国人が増えており、越境ECの後押しをしています。 例えば、本来はなかなかECでは売ることが出来ない甲冑等の高級品(1点100万円程)も、訪日旅行者に実物を見せたり、触れたりして貰う事で、価値を伝え、帰国後にオンラインで販売する等、越境ECもオムニチャネル化(※)と共に海外への販売のチャンスが増えています。
3つ目として、1・2の動きから越境ECを支援する事業者が増えており、これまでよりも海外に向けてネット販売をする事のハードルが下がっている事です。 越境ECで使用できるカートシステムのMagentoやEC CUBEのカスタマイズおよび運用を手掛けるWEB制作会社が増えていますが、越境ECでの成功事例はまだまだ多くないのが実情です。(2017年6月時点)
越境ECサイトの取扱商品は多岐にわたりますが、日本製および日本文化に根差した商品を取り扱う企業が成功しています。 BE FORWARD 東アフリカを中心に日本の中古車を輸出している。月に15,000台もの中古車を輸出している日本最大の中古車販売越境ECサイト FROM JAPAN 日本国内のオークションサイト、ECサイトで販売している商品の購入代行サービスを提供している越境ECサイト TOZANDO 1989年より海外に剣道、合気道、居合道等の武具や衣類を輸出する老舗越境ECサイト CD JAPAN 日本のアニメやCD等のポップカルチャー商品、伝統工芸品を販売する越境ECサイト Sazen tea 抹茶をはじめとした日本の茶葉や作家の茶器を販売する京都発世界の越境ECサイト
海外では中古車や熊野筆、抹茶等、日本特有の技術力を用いた商品やアパレルやアニメ等のPOPカルチャー商品が売れています。 ただ同じ商品を扱っていても戦略が異なれば結果も異なるので、誰に向けた商品なのか、何故、自社商品が海外のターゲットするユーザーに選んでもらえるのかを常に突き詰めて考える必要があります。
越境ECの運営で企業がつまずくポイントは、大きく分けて商品力、集客、接客の3種類に分かれます。
1つ目のつまずくポイントは、そもそも海外で売れない商材を取り扱っている事です。いくら世界規模の市場でも、商品力が乏しければ、海外で勝負していくことは難しいです。 また、良いものであれば売れるというプロダクトアウト的な発想では越境ECでは成功できません。
商品そのものの機能や特性だけでなく、マーケティングのP(Product、Place、Promotion 、Price、)の4つを含み、どの市場でどの商品をいくらで売るのか、これらの要素を整理し、参入の余地があるのか検討する必要があります。
5000円以下の低価格商品のみを販売しており、複数購入やリピートが見込めない場合どんなに商品の優位性があっても粗利が低く、費用対効果が出しにくくなります。また高い送料を払ってまで購入したいと思うユーザーが少ない為、なかなか上手くいきません。 <攻略法> まず、取り扱おうとしている商品が海外でニーズがあるものなのかを客観的に見てみることです。 また企業で取り扱う商品がどういったものかによって、モールで取り扱うか独自ドメインのショップで展開すべきかが大きく変わってきます。 自社の商品やポジショニングを元にどちらのモール、独自ドメインどちらが適しているか見極めましょう。 独自ドメインの越境ECで成功しているのは、オリジナル性の高いCとDの商品群。モールの場合は、最安値で提供できるのであればAの商品群が売れます。
参考:【実践編】はじめての越境EC 売上・成約率を上げる5つの切り口 代表的な越境EC運営事業者として挙げたBE FORWARD社は、中古車を商品として捉えるのではなく、ユーザーが車両を購入してから、手元に届くまでのサービス全体を商品と捉える事で大きく成功を収めました。
参考:アフリカ・新興国向け中古車販売越境ECサイト成功事例 株式会社ビィ・フォアード
次のつまずくポイントが集客の壁です。多くの企業が国内の成功体験をベースに海外WEBマーケティングの戦略を考える為、海外SEOやリスティング広告が上手く出来さえすれば商品が売れるものだと考えてしまいがちです。 しかし、日本国内での商品の認知度と比べ、海外での日本商品の認知度は圧倒的に低く、商品名等だけで集客しようするとすぐに頭打ちになってしまいます。 逆に広義な一般名詞で集客をしようとすると、商品説明が乏しい英語サイトでは商品の魅力を伝えきれずに、離脱されてしまいます。 <攻略法> まずは、指名検索で確度の高いユーザーを取り込み、売上を安定させます。 そこから徐々に非指名検索、一般名詞で成約が獲得できるようサイト内の情報を追加していきましょう。 見込み客をどれだけ集めることが出来るのか、そして訪れたユーザーに価値を伝えることが出来るのが重要な鍵となります。 参考:越境ECの成功をはばむ「集客」「価値」「市場」の3つの壁。乗り越える方法とは?
最後に最も大きく立ちはだかるのが接客の壁です。これは独自ドメインで展開する際には避けられない壁でもあります。 独自ドメインの場合は決済、信頼性、言語などの壁が存在します。ユーザーが使い慣れたプラットフォームであるAmazonやeBay等のモールと比べ、独自ドメインサイトは、認知度や信頼性が低く、そのままではユーザーに決済情報を入力してもらいにくい傾向があります。 <攻略法> 信頼性を獲得する為の情報提供や強い商品力があって、初めて独自ドメインの越境ECサイトは売上を伸ばすことができます。 またWEBで接客する際は、ただ情報を提供するだけなく、ターゲットユーザーに伝わる英語で訴求する事が求められます。商品のブランドイメージや世界観に応じ、使用する単語や表現を調整し、接客する事が越境ECで売上を伸ばすのに重要な要素です。 参考:越境ECサイトの英語の改善で売上を伸ばす2つの秘訣
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