コラム
Column
コロナ禍で世界の国々での間での行き来が止まり、展示会等も行われなくなった為、海外の顧客と接点を持つことが非常に困難となり、今、インターネットの活用に期待が高まっています。
コロナが始まる前までは、ZOOMと言っても何のことか知らない人が大半でしたが、今では日常的に使うツールとして、多くの人が知るようになっています。急速なデジタルシフトが起きつつある中、海外取引を増やす事を計画している企業は、今後、ネットの活用が成功を左右すると言っても過言ではないでしょう。
しかし、その要になる自社のWEBサイトを構築する際、多くの企業は単純に自社サイトを直訳したサイトを作ったり、Shopify等を使い単純に商品登録をしてストアをオープンしたりした結果、集客が出来ないという問題に直面する事が多く発生しています。
このような問題を回避するには、事前に入念な調査をすることが重要なのですが、意外と海外WEBサイトを作成する前に調査をしないケースが多いのです。 今回は事前の調査が何故重要なのか、そして、どんな調査を行うかについてお話します。
海外に出店したり、工場建設したりする事が決まると、そこには多くの予算が投入される為、事前に入念な調査を十分な資金をかけて行う事が普通です。しかし、海外WEBサイト構築の場合、それが越境ECの様に実際に海外のお客様に商品やサービスを購入して頂くサイトであっても、出費を押さえる為に事前調査を行わないで制作してしまい、失敗するケースが後を絶ちません。
現地で現地法人を作り、建設したり、従業員を多数雇用したりする事に比べると、WEBサイト構築のリスクは少ないのですが、サイト構築費とEC運営のための人件費、それに何よりも貴重な時間が失われてしまう事について、意外と軽視されているのが現状です。
筆者は中小企業の海外展開支援を公的機関で10年行った経験が有り、その後、弊社で調査戦略に携わっていますが、海外への商品販売で失敗する事例として、下記の様なケースに集約されるようです。
恐らく一番多いパターンだと思いますが、国内の企業サイトを単純に直訳して他言語サイトを作るケースです。このようなサイトの場合、広告を出しても問合せ率が上がらないというご相談が非常に多いのです。また、越境ECの場合も、国内レベルの売上に持っていく事が難しい事が多くなります。これは、海外の顧客の需要や、感性が日本の顧客とは違う事が多いために起こります。また、直訳は意味を成さない事があり、信用性を棄損してしまう事もあります。
このケースもとても多いのですが、国内で積みあがった在庫を海外で販売したいというケースです。この時、海外での需要や相場観に関して反映することはあまりありません。何故、国内で売れていないのか検討されていない事が多く、商品を海外市場に最適化することも有りません。売り手側の都合で商品を選び、市場価格をあまり考慮しないで値付けをしてしまうケースです。
日本の国内市場である程度売れたために、海外もすぐに進出したい。その為に越境ECや、BtoBの問合せを得るためのWEBサイトを構築する事が良くあります。国内で有名だから海外でも売れるという推測でサイト構築をしてしまうケースです。ただし、その製品そのものが海外で馴染みのある商品なのか、ブランド知名度があるのかを確認しないでサイトを構築してしまうと、検索需要がなく、集客が出来ない事が多々あります。
海外向けサイトで失敗する最大の理由は、顧客を知らないまま、サイト構築してしまう事にあります。私たちは、日本で売れている製品がそのまま海外でも通用すると思いがちですが、意外と海外のお客様は保守的であったりするため、海外の認知度や、採用実績がないと中々広まりません。
海外展開を、現在行っている事業の単なる商圏の拡大と考えると、失敗の原因になります。海外展開は、どちらかというと新規事業に近いイメージで取り組むべきと筆者は考えています。その為、海外の顧客に販売するには、徹底的に顧客像の解像度を高めて、お客様の望む商材と、お客様の判断基準となる情報(コンテンツ)を十二分に提供していかなくてはなりません。
しかし、日本企業はコンテンツの準備が苦手なところがあり、提供するものがカタログやスペックシートのみとなりがちで、お客様の悩みや課題を解決するという訴求が中々提供出来ない事が多いのです。
また、現場にWEBマーケティングの担当者がいないため、問題点が抽出できず、正しいロードマップに基づいた施策と予算の管理、運用が出来なかったり、現地のユーザー像が明確でない為に、的外れな商品、サービスを提供してしまったりするケースも多く見受けられます。
上記で挙げた失敗事例の様なケースでは、マーケットニーズが無いのにサービスの提供を始めてしまい、売上が全く上がらなくて撤退という話も良く聞きます。こうなってしまうと、資金の回収は絶望的です。
これを回避するには、やはり、事前に入念な調査を行う事が必要となります。調査の上で、戦略をある程度決めておけば、状況に応じた施策が取りやすくなりますので、収益化する可能性を上げる事が出来るのです。
私たちは通常、海外のWEB制作や、ネットでの施策を行う前に、下の三つをかなり入念に調べます。
1.対象顧客と市場について(Customer)
2.競合について(Competitor)
3.自社について(Company)
いわゆる3Cと呼ばれるフレームワークですが、これは、顧客解像度を上げ、競合が採用している施策から、海外市場での最適な施策が推測可能となるからです。 では、海外WEB制作において、3C分析の役割を順番に見てみましょう。
まず、WEBサイトは集客した人に商品を買って頂くか、問合せをして頂くことが必要になります。そのためには、ターゲットとしているユーザーが求めている物、サービスを的確に提供する、又はその情報を伝えなくてはなりません。
ここで重要なことはユーザー像の解像度を上げる事です。マクロ的なアプローチとしては、その市場の中にターゲットとしているユーザーがどれだけいるのか?という定量的なデータを収集します。そもそも市場性が無ければそのエリアに向けて売っても買ってくれる人がいないからです。WEBであれば、検索需要などもユーザー像を知る良い定量的なデータとなります。
ミクロ的なアプローチとしては、記入式のアンケートをしたり、ユーザーインタビューをしたりします。アンケートでお答え頂いた方に後日、ユーザーインタビューを行うと、アンケートの様な調査だけでは分からない、より深いユーザーの欲求を知ることが出来たりします。ユーザーインタビューが難しいBtoBのケースでも、海外販社や海外支店の営業担当者にインタビューをすると、ある程度の顧客像がつかめます。
このような調査を行う事で対象製品やサービスに対するユーザーの行動が見えてきますので、しっかりと調査をしてユーザー像の明確化を行います。
対象顧客が明確になると、正しい競合が見えてきます。既に海外展開をしていて、競合が明確に分かっている場合は良いのですが、日本で競合だからと考えていると、ユーザーの関心が別のところにあり、思いもしない競合がいたりするので注意が必要です。
正しい競合相手が定まったら、その競合のWEBサイトを徹底的に調べる事によって、競合が行っている施策が見えてきます。そこで、日本ではない海外という未知の市場において、鉄板の成功事例を学ぶことが出来るのです。競合相手のWEBサイトを徹底的に調べると、彼らの集客方法や商品の特徴、強み、販売方法、ロジスティック等が見えてきます。これらの情報をまとめ上げ、ベストプラクティスを探ります。
特にBtoBのお客様の場合、一回の訪問で問合せをして頂くことは稀で、何回もWEBサイトを訪問して頂き、自社について詳しく知って頂く事が必要となってきます。それには、単にお問合せフォームへのリンクをトップページに置くだけではなく、詳しい商品情報や、ホワイトペーパー、製品カタログのダウンロードといったコンテンツが重要となってきます。
このようなコンテンツが十分に準備されて初めて、広告で成果が上がっていきます。こうした顧客をお問合せに導く階段設計が非常に重要となりますが、これは海外の競合のWEBサイトを徹底的に調べる事によって必要なコンテンツが見えてきます。
また、私たちはイスラエルで生まれた競合分析ツールのSimilarWeb等を使用して、競合がどのくらいの訪問者数を持ち、どの様なチャネルで流入しているか、どの様な検索ワードを利用しているかといった事も分析しています。こうした競合を取り巻く様々な指標を入念に調べていくと、海外市場においての最適な施策がベストプラクティスとして見えて来るのです。
対象顧客と市場を知り、競合について知った後、改めて自社について分析を行うと、自社が行えていない様々な施策が見えてきます。また、弱みだけではなく、他社と比べて自社の強みも分かります。この際、必要であれば自社の強みや弱み、自社が置かれている機会や脅威等をSWOT分析と呼ばれるフレームワークを利用したり、自社のUSPの定義をしたりします。
ここまで調べて、ようやく戦略を考える為の情報が集まって来るのです。こうして3C分析をして得た情報を元に、戦略を作っていきます。
参考:3C分析編 3分でわかるはじめての海外WEBマーケティング
海外WEBサイト構築の際、3C分析を終えた後、STP分析を行い、方向性を決めます。 STP分析とは、Segmentation(セグメンテーション)、 Targeting(ターゲティング)、 Positioning(ポジショニング)の頭文字を取ったもので、具体的には下記の様な事を行います。
自社製品を取り巻く市場を、顧客の欲求、種類によって、切り分けます。
セグメントを切り分けた後、自社商品と最も相性の良い顧客がいる場所を探ります。ユーザーインタビューやアンケート等から、ペルソナを設定し、顧客像を明確化します。
市場に置ける自社と競合の立ち位置を確認し、どの立ち位置を狙っていくかを明確化します。
STP分析をすると、どの様な顧客に、どの様な訴求をすると良いかが分かってきますので、それを元に、WEBサイトのコンテンツを作成していきます。具体的なコンテンツの種類は、3C分析で調べた競合サイトの内容や、SNS、広告等が参考になります。
参考:【海外戦略を考える時に役立つSTP分析】 はじめての海外WEBマーケティング
海外で調査をせずに営業活動をすると、それは”Shooting in the dark”(暗闇で射撃する)と揶揄されるそうです。海外の顧客の事を分からないまま、日本国内と同じ感覚で営業活動に入ると失敗の可能性が上がってしまいます。
勿論、試行錯誤をしながら、改善を行っていくというのも一つの手法としてあるでしょう。しかし、全く分からないまま改善を行うのと、ある程度顧客と競合の事が分かっている状態で改善を行うのでは、成果が出てくるスピードが違いますし、そもそも市場性がない所への展開を防ぐことが出来ます。
いきなりユーザーインタビュー等を社内で行う事は難しいかもしれませんが、デスクトップリサーチと呼ばれるネット上での調査でもかなりの示唆を得る事が出来るでしょう。もし、海外サイトを構築するのであれば、必ず、入念な調査を行って、顧客と競合について良く調べてください。
弊社では、そうした調査・戦略立案から、サイト構築、コンテンツ作成、広告運用までをワンストップで行える体制を持っています。その起点となる調査戦略立案に関する情報は、下記からご覧いただけます。宜しければ、是非、ご覧ください。
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