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ハイコンテクスト、ローコンテクストを理解する
- 2025.03.07
- 越境EC

「ローコンテクスト(Low Context)」、「ハイコンテクスト(High Context)」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
一般的に日本語は「ハイコンテクスト文化」と言われており、英語は「ローコンテクスト文化」と言われています。
実際にどういったことを指しているのか具体的に説明しましょう。
ハイコンテクスト文化
言語やコミュニケーションが非常にコンテクスト(文脈や背景)に依存する文化のことを指します。
このような文化では、言葉そのものだけでなく、相手との関係性や状況、非言語的なサイン(表情やジェスチャー、声のトーンなど)が重要な役割を果たします。
言葉に直接的な意味を込めるのではなく、暗黙の了解や文化的な背景を通じてメッセージが伝わります。
例えば、下記のような上司と部下の立場の違いと言葉のニュアンスの違いで、同じことを言っている場合でも受け手側が捉える内容が異なってきます。
(上司 → 部下)
「今時間ある?」 → 「何かお願いしたい」
(部下 → 上司)
「今お時間いただくことはできますか?」→「相談がある」
上司から「今時間ある?」と言われたときに、たいていは「何かお願いされたいんだな」と理解し「はい、大丈夫です」と答えます。
逆に上司に「時間あるけど何ですか?」とまで答えてしまうと失礼であると判断することの方が多いでしょう。
一方部下から少し神妙な面持ちで「今お時間いただくことはできますか?」と声を掛けられた場合、「何か大事な話がありそうだな」と理解するのではないでしょうか?
ローコンテクスト文化
言葉そのものが最も重要で、言外の意味や背景、非言語的な要素(表情やジェスチャーなど)に依存せず、コミュニケーションが比較的直接的で明確である文化です。
この文化では、何を伝えたいのかをはっきりと言葉で表現することが重視され、暗黙の了解やコンテクストを前提にした理解はあまり求められません。
ローコンテクスト文化では「言わなくても察してくれるはず」 という前提が少ないため、話の目的を明確に伝えることが重要になります。例えば下記のような表現になります。
(上司 → 部下にお願いがある場合)
“Hey, do you have a moment? I need you to take care of something.”
(「ちょっと時間ある?お願いしたいことがあるんだけど。」)
(部下 → 上司に相談がある場合)
“Excuse me, do you have a minute? I’d like to ask for your advice on something.”
(「すみません、お時間を少しいただけますか?ご相談したいことがあるのですが。」)
英語がローコンテクスト文化を形成している背景
英語発祥の国々(イギリスとアメリカ)の影響
英語がローコンテクスト文化である背景には、イギリスやアメリカという国々の文化や社会構造も深く関わっています。
これらの国々は、商業、法制度、教育、政治など、さまざまな面で明確さや論理性を重視してきました。
この社会的価値観が英語の使用にも反映されており、ローコンテクスト的な特徴が強化されました。
1. イギリスの法制度と商業文化
イギリスはコモン・ロー(普通法)を基盤とした法制度を持ち、契約や法律文書では精緻で明確な表現が求められました。
この法的・商業的背景が、英語をローコンテクスト的な言語にした要因の一つです。
イギリスの商業取引や契約書では、詳細で誤解のない表現が重要視されます。
商業的な文章や法的な文書は、曖昧さを排除し、何が合意されたのかを明確にすることが求められます。
このスタイルが、日常的な英語のコミュニケーションにも影響を与えました。
2. アメリカの合理主義と個人主義
アメリカは、特に18世紀以降、合理主義と個人主義が根付いた国です。
この価値観が、明確で直接的なコミュニケーションを重視する土壌を作りました。
特に、移民社会であるため、異なるバックグラウンドを持つ人々との意思疎通には、できるだけ曖昧さを排除した明確な言葉が必要とされました。
アメリカでは、ビジネスや法律の場面では特に、直接的で簡潔な表現が重視されます。
アメリカの契約書や法律文書は、細部まで詳細に記載され、解釈の余地を残しません。
これは、英語が持つローコンテクスト的な特徴を強化しました。
3. 教育と合理的な思考の重視
イギリスやアメリカの教育体系は、論理的思考や明確な表現を重視しています。
特に、アメリカの教育システムでは、自分の意見をはっきり述べることが奨励されます。
この教育的背景が、英語のコミュニケーションにおいても明確で簡潔な表現を促進したと言えます。
アメリカの大学では、論理的なエッセイやレポートを書くことが重視され、文章構造や表現においても無駄を省き、簡潔で明確に伝えることが求められます。
このような教育文化が、英語をローコンテクスト的にしています。
4. 法的契約と商業契約社会
アメリカは、契約社会とも言われ、すべての取引や合意は文書で明確に定められます。
この文化的背景も、英語のコミュニケーションにおいて明確さと具体性を重視する傾向を強めました。
特に、アメリカではビジネスにおいて直接的で簡潔な表現が好まれるため、英語全体にその影響が及びました。
アメリカの契約書や商業文書は、曖昧さを排除するために非常に具体的であり、解釈の余地を最小限に抑えます。
これが、英語のローコンテクスト的な特徴の一因となっています。
日本語の超ハイコンテクストな典型ワード「大丈夫です」
日本語の「大丈夫です」という表現は、ハイコンテクスト文化の良い例です。
このフレーズは、文脈や相手との関係性に大きく依存しており、その意味が状況によって大きく変わることが特徴です。
1. 「大丈夫です」の意味の多様性
「大丈夫です」という言葉は、非常に多くの意味を持ち、具体的な状況や相手の立場によって解釈が異なります。
何かを断る場合
例えば、誰かが「これを手伝いましょうか?」と提案してきた時に、単に「大丈夫です」と言うだけで、手伝って欲しくないという意図が伝わります。
例:「大丈夫です、ありがとうございます。」(助けは必要ない)
問題がないことを伝える場合
病院で診察を受けているときに、「大丈夫ですか?」と聞かれて、「大丈夫です」と答えるときは、問題がない、健康に問題がないという意味になります。
例:「大丈夫です、問題ありません。」(体調に問題なし)
不安を伝える場合
一方で、「大丈夫です」という言葉が、実は不安や心配を隠すための言い回しとして使われることもあります。
例えば、誰かが心配して「本当に大丈夫?」と聞いた時に、「大丈夫です」と言って、実際には不安を感じているという場合です。
例:「大丈夫だと思います。」(不安を感じているが、言葉では大丈夫と言っている)
2. 「大丈夫です」の曖昧さを表す例
コンビニで従業員が「袋にお入れしますか?」と尋ね、お客さんが「大丈夫です」と答える場合、問題はその答えが非常に曖昧であるという点にあります。
「大丈夫です」という言葉自体が、相手が理解すべき文脈や状況によって、OKだったりNOだったりの意味を持つため、従業員がその意図を正確に理解するのが難しくなります。
日本語では、ダイレクトに「いらないです」と言うよりも、相手への気配りや配慮をふまえて「大丈夫です」と、遠慮がちな表現を使うことが多いため、この言い回しがよく使われます。
3. 曖昧さと相手の理解
このように、「大丈夫です」という表現は非常に曖昧であり、相手が文脈をしっかり読み取ることが求められます。
日本語の文化では、この曖昧さを理解し合うことが重要で、相手の表情、声のトーン、会話の流れなどから、言葉の真意を読み取ることが一般的です。
ローコンテクストとハイコンテクストで表現されるキャッチコピーの違い
ローコンテクストのキャッチコピーは、消費者がすぐに行動に移せるように具体的で簡潔な情報を提供します。
一方、ハイコンテクストのキャッチコピーは、消費者に深い意味や感情を想起させ、製品を使うことの精神的な価値やライフスタイルの変化を暗示することが多いです。
そのためハイコンテクストのキャッチコピーはラグジュアリー商品などに使われるケースが多い傾向にあります。
ローコンテクストのキャッチコピー
新しい洗剤の広告: 今すぐ試して、99%の汚れを落とします!
スマートフォンの広告: 今すぐ超高速インターネットを体験!
飲料の広告: Zero calories. Maximum taste.(ゼロカロリー、最大の味)
スポーツシューズの広告: Run faster. Last longer.(速く走れてより長持ち)
ハイコンテクストのキャッチコピー
高級車の広告: ただの移動ではなく、人生を豊かにする時間を。
日本の高級茶の広告: 心を整え、静寂のひとときを。
高級車の広告: The ultimate driving experience.(究極のドライビング体験)
高級時計の広告: Time is a luxury. Make it yours.(時間は贅沢だ。自分のものにしよう。)
以上のように、ローコンテクスト、ハイコンテクストを理解することで、特に海外に商品を販売する際には、より英語の表現を気を付ける必要があります。
特にWebサイトでは日本語をベースに作成した英文が使われるケースが多いですが、日本語をベースにしているが故に、曖昧さが残っていたり、海外の人にとって理解しづらい表現になっているケースが多くあるため、注意が必要です。
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