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製造業の海外WEBマーケティング:成功するために知っておく6つのこと
- 2025.03.23
- 海外BtoB

はじめに:製造業の海外展開におけるWEBマーケティングの重要性
国内外で一定のシェアを獲得した製造業でも、海外市場へ新規分野で新たに進出する場合、「自社の強みが通用するのか?」「どの国や地域で通用するのか分からない」といった悩みに直面することがあります。
国内市場での成功がそのまま海外で通用するとは限りません。市場調査や競合分析が不十分なまま進出すると成果を上げるのは難しくなります。
こうした課題を解決する鍵が「WEBマーケティング」です。WEBマーケティングを活用すれば、低コストで効率的に市場を分析し、自社に最適なターゲットを絞り込むことが可能です。さらに、現地ユーザーに合わせたコンテンツ戦略やSEO施策で競争力を高められます。本記事では、製造業が海外展開を成功させるために必要なWEBマーケティング戦略を、具体的な方法や事例を交えて詳しく解説します。
1. WEBマーケティングは製造業の海外展開におけるマーケット開拓の効果的なツール
ある程度の規模を持つ製造業が海外市場で売上拡大を目指す際、代表的な手法として次のようなことが上げられるのではないでしょうか。
- 既存顧客へ別分野の製品を訴求、新規営業をかける
- 様々なプロモーションを行い、新しい市場を開拓
この2つの手法は、これまでにも取られていた手法です。すでに取引のある顧客企業に対して,従来とは異なる分野やカテゴリーの製品・サービスを追加提案し,顧客あたりの売上を伸ばすことは、信頼関係が構築されている顧客への提案となるため,比較的短期間で成果を出しやすく,特に大手企業や広い製品ラインナップを持つ企業ではやりやすく、成果が出やすいので、まず行いたいことです。
一方で、プロモーションによって新しい市場を開拓するのはかなり資金がかかるため、簡単に行うことは難しいという問題がありました。しかし、今では、新しい市場開拓を目指す際にはWEBサイトを軸としたさまざまなデジタル戦略が有効です。海外での拡販は限られた人員で行う必要があり、資金的に難しいことが多いのですが、WEBを通じて自社製品がどのような分野や用途に対応可能かを明確に発信することで、潜在顧客からの問い合わせを効率よく獲得できます.特にニッチ製品や特定分野に高い専門性を持つ中堅企業にとって、この方法は自社の強みを正確に伝え、新たな市場を低コストで発掘できる利点があります。
日本の製造業はこれまで自社の営業チームや代理店などを利用して新規開拓を行ってきており、WEBマーケティングについてはまだまだ得意分野ではありませんでした。しかし、WEBマーケティングは資金を押さえながら、結果を定量的に測れ、プロジェクトの投資への見通しも予測しやすいため、資金力が限られる中小企業や、新規プロジェクトを手がける事業部にとって非常に強力なツールとなるでしょう。
2. 最初に行うこと:海外で戦える製品を抽出する
製造業が海外市場で成功するには、まず自社製品が競争力を発揮できる分野を的確に見極める必要があります。そのためには、現地市場のニーズを徹底的に把握することが不可欠です。具体的には,WEBを活用した市場調査を通じて、現地のユーザーが抱える課題や製品への要求を明確化し、競合他社の製品との差別化ポイントを分析します。下記に最低、これだけは実施していただきたい調査内容をご紹介します。
ヒアリングとインタビュー
海外において自社製品が競争力を持つ市場を特定するには、まず既存の顧客からのフィードバックや類似製品の販売実績を検討します。私たちは、海外リサーチをする際、まず、ご担当者へのヒアリングから始めます。可能ならユーザーへのヒアリングをしたいところですが、難しい場合はお客様へ直接接触のある現場の営業マンや、代理店の方にヒアリングを行います。日本のマーケティング担当の方と一緒に現地の営業担当者の方にヒアリングすると、普段、浮かび上がってこなかった現場の視点が再確認できて良かったとおっしゃって下さることが良くあります。
検索キーワードの把握
また、WEB分析ツールを活用し、海外からの自社サイト訪問者がどのような製品やコンテンツに関心を示しているかを把握することで、潜在ニーズを発掘できます。顧客が能動的に行う最初の行動は検索であることが多いことから、検索キーワードが非常に重要です。自社の海外向けWEBサイトがある場合はGoogle Search Consoleで確認しますが、これから海外WEBサイトを構築するような場合は、Ahrefsや、Google広告のキーワードプランナーなどの分析ツールを利用して、商材やサービスに関連する検索キーワードを確認します。
競合調査の実施
さらに、競争優位性を高めるためにターゲット市場での競合企業調査を徹底的に行うことが重要です.自社製品の強みを明確にした上で、競合の弱点や空白となっているニーズを特定し、効果的なマーケティング施策を展開します.こうした綿密な調査こそが、海外市場で成果を出すための戦略立案につながります。
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3. 社内調整:製造業のWEBマーケティングに対する社内の不理解と解決策
製造業のお客様とお話ししていて、よく担当者様からのお困りごとを伺うことがあります。それは、上長や経営層とのWEBマーケティングに対しての認識のずれです。今まで、日本の製造企業は営業中心の海外展開をしてきたこともあってか、WEBマーケティングについての重要性はこれまで低く見積もられがちでした。また、短期的な結果を求められることもあり、そんな時、ご担当者がどのようにして社内での理解を得ているかを伺うと、大体、このようなお答えが返ってくることが多いです。
(1)経営層の理解不足による課題と解決策
課題
製造業においてWEBマーケティングを導入する際、『経営層の理解不足』が課題となるケースは少なくありません。経営層が短期的な売上増加に重きを置いている場合、中長期的な施策であるWEBマーケティングについては「効果が見えにくい」と敬遠される傾向があります。その結果、必要な予算や人材が確保されず、成果が出にくい悪循環に陥ることがあります。
解決策
経営層に対しては、WEBマーケティングの特徴と具体的な成功事例を共有し、『成果が出るまでのプロセスや期間(2〜3年のスパン)』を明確に説明することが重要です。中長期的な事業戦略としての意義を理解してもらうため、小規模なテストマーケティングを実施し、早期に具体的なデータを示すことで、WEBマーケティングへの理解や期待値を徐々に高めていくことが有効です。
(2)短期的成果を追求する傾向への課題と解決策
課題
WEBマーケティングでは、問い合わせやリードの獲得は比較的早期に実現できるものの、実際の受注や売上につながるまでには2〜3年を要することが一般的です。そのため、短期的な売上目標を優先する企業では、成果が出る前に施策が中断され、継続的な取り組みが難しくなるという課題があります。
解決策
短期的成果を求める傾向への対策として、まず社内でWEBマーケティングの位置付けを明確にし、『リード獲得から受注に至るまでの具体的プロセス』を営業部門も含めて共有することが重要です。さらに、営業部門との連携を強化し、獲得したリードを早期にフォロー・育成(ナーチャリング)する仕組みを構築すると、比較的短期でも成果が上がる可能性が高くなります。結果が明らかになると、WEBマーケティングを単なる販促手段ではなく、企業全体の成長戦略として継続的に取り組める体制が整います。
4. 本格利用の準備:WEBマーケティングを活用した市場調査と製品開発
製造業が海外市場で成功するためには、WEBサイトを活用した市場調査と製品開発が不可欠です。海外市場向けのWEBサイトを立ち上げ、現地の顧客ニーズを直接収集することで、市場の実態をより正確に把握できるようになります。そのWEBサイトを制作するためにはまず、市場調査を行い、最低限、顧客像を把握し、顧客が求めている情報を的確に配置したWEBサイトが必要になります。日本のお客様と海外のお客様は文化的な部分を含めて、国内のお客様と求めるものが違うため、国内のWEBサイトを単純に翻訳したものは機能するとは限りません。私たちの場合、特に、顧客像と自社の強みにフォーカスをあてた3C分析を行い、初期のWEBサイトをデザインするようにしています。
WEBサイトを構築する前に必要な調査
自社分析
- 担当者へのヒアリング
- 自社製品の強み・弱みの洗い出し(市場・競合調査後に策定)
顧客分析(市場分析)
- 顧客へのヒアリング
- キーワードの需要調査
- 市場状況の把握(市場に関する記事などを調査)
競合分析
- 市場調査をもとに競合を抽出
- トラフィック分析ツールによる分析
- 定性的なWeb構造、コンテンツの分析(特に問い合わせフォームへの導線設計など)
- SNSの定性、定量的な調査
WEBサイトが構築できたら、問い合わせフォームから届くお客様からの問い合わせや、分析ツールに残る訪問者の行動を分析することによって、どの製品や機能に関心が集まっているのか、市場で求められている特徴が何なのかをリアルタイムで確認することが可能です。さらに、こうしたWEBマーケティングの情報を活用することで、ターゲット市場のニーズを掴んだ製品開発が可能となります。競争力の高い製品開発を行うためにも、WEBを通じた市場調査の重要性は必須となっているといっても過言ではないでしょう。
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5. 競合対策:中国製品との競争と日本企業の戦い方
近年、中国企業の製造技術は急速に進歩し、製品スペックの面では日本企業と遜色ない水準にまで達しています。また、マーケティングの訴求もうまく、価格競争力においても優位性を持つことから、多くの海外市場で中国製品が台頭し、海外を目指す日本企業にとって大きな脅威となっています。しかし実際には、初期の性能や価格は魅力的でも、『品質の安定性』『納期』『アフターサポート』の面で後になって日本製品の優位性に気付くということも多いようです。そのため、中長期的な視点で信頼性を求める顧客は、依然として日本製品を選ぶ傾向があると言い、海外の営業担当者の方はそこをアピールして成果を上げているといいます。
こうした状況で日本企業が中国製品に打ち勝つためには、『自社の優位性を明確に伝える戦略』が必要です。例えば、日本企業の強みである次のポイントをWEBサイトや営業資料を通じて具体的に訴求することが重要となります。
『高い品質管理基準』
『安定したアフターケア体制』
『長期的なコストパフォーマンス』
たとえ、導入コストが高くとも、耐久性やメンテナンスの面で総合的に競争力があることを訴求したり、生産現場の安定的なパフォーマンスや、安心感など、訴求できる部分はまだ日本製品には数多くあります。
そのためには、現地市場や競合製品の課題を徹底的に調査し、自社製品の優位性を客観的なデータとともに示せる情報収集と発信戦略が不可欠です。中国製品との差別化ポイントを明確に示し、市場の信頼を勝ち取ることが日本企業に求められています。
6. さらに考えたい:海外WEBマーケティングで成果を出すために
製造業が海外WEBマーケティングで成果を出すには、これまでにも述べてきたように、まずターゲット市場を明確にし、現地顧客のニーズを深く理解することが重要です。顧客が抱える課題や求めている情報を分析し、現地の言語や文化に合わせたコンテンツやメッセージを発信することで、効果的なマーケティングが可能になります。そのうえで、自社のグローバルWEBサイトを起点として、下記のようなWEBマーケティングが展開可能です。
展示会を活用したリード獲得とフォローアップ
海外では展示会(トレードショー)がBtoBマーケティングの主要な場となっています。これは日本の製造業も大いに利用してきました。展示会ではリアルな接点を作り、製品や技術を直接アピールできますが、展示会の前の告知と、その後のフォローが重要となります。これにWEBマーケティングを利用することにより、効率的な展開が可能となります。自社サイトやSNSを通しての告知や、広告による来場訴求や、展示会後にWEBサイトやメールマーケティングを活用し、関心を持った企業との関係を継続しながら、リードの育成などでの利用が見込まれます。
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SNSの活用:BtoB企業におけるLinkedIn戦略
日本企業はBtoBマーケティングでのSNS活用に消極的ですが、海外ではLinkedInが営業ツールとして不可欠になっています。定期的に業界の知見や導入事例を発信し、ターゲット企業と接点を持つことで、見込み客との関係を築けます。また、FacebookやX(旧Twitter)を補助的に活用することで、ブランド認知を高めることも可能です。現在、イノベーティブなBtoB企業には、ソートリーダーシップ(Thought Leadership)という概念で、CEOや企業のプロダクト開発者が積極的に自社のアイデアを発信し、その分野での認知を高めるというマーケティング手法が注目されています。これには、主にLinkedInとXが利用されることが多いです。
デジタル広告とSEOを活用した効率的なリード獲得
自社の競争力を発揮できる市場にターゲットを絞り込み、SEOやWEB広告(Google広告・LinkedIn広告など) を組み合わせることで、効率的にリード獲得を進められます。SEOでは、ターゲット市場で検索されるキーワードを意識し、現地向けのコンテンツを充実させることが重要です。一方、デジタル広告を活用すれば、特定の業界や役職のターゲットにピンポイントでアプローチでき、短期間での認知向上が期待できます。ただし、それには、WEBサイト内の情報の充実が不可欠です。お客様の貴社理解のステージにあわせたコンテンツを前もって用意しておかないと、広告からの訪問者が貴社のお客様になってくれません。
長期的な視点でのマーケティング戦略
即時的な売上だけでなく、中長期的な視点でリードを育成し、継続的に顧客との接点を作ることが重要です。展示会・SNS・デジタル広告を、WEBサイトにあるコンテンツと組み合わせながら信頼感と認知度を高め、お客様の第一想起の対象となることが重要となります。
まとめ:製造業の未来を切り拓くWEBマーケティングの可能性
製造業が海外展開を成功させるには、自社製品の競争力が最も発揮される市場を明確に特定し、その市場に向けて的確な情報発信を行うことが重要で、そのためにはWEBマーケティングが不可欠です。
そのためには、次のようなPDCAのサイクルを実行する事が必要です。
- 市場ニーズの詳細な分析を行い、ターゲット顧客が求める価値を理解する。
- WEBサイトやSNSを活用して魅力的なコンテンツを発信し、中長期的視点で継続的にリードを育成し、信頼を高める仕組みを構築する。
- 来訪者の問い合わせや訪問履歴を分析し、訪問者の意図を推論する。
- ターゲット市場ごとの戦略を具体的に策定し、実行・改善を繰り返しながら競争力を高める。
製造業にとって、WEBマーケティングは強力なパートナーとなり得ます。弊社もBtoBのWEBマーケティングに関して、海外市場調査や随伴サービスなどのメニューをご提供しています。もし、ご興味があればお気軽にお問い合わせください。
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