対談
Interview
マーケティングのフレームワークだとなかなか自社を客観的に分析できず、どうしたらいいかわからない方におすすめです。
【Eコマース先生 川添 隆(カワゾエタカシ)氏 略歴】
全国のEコマース担当者を応援し、Eコマースビジネスの可能性を伝えるEコマース業界の先生。企業再生を2社経験し、Eコマース売上2倍以上に携わったのは5社。併せて、デジタル実装が苦手な企業の中で、ビジネスやコミュニケーションのデジタル実装に従事。
アパレル関連企業を3社を経験後、2013年7月よりメガネスーパーに入社。7年でEコマース関与売上は7倍、自社Eコマースは月間受注は13倍に拡大。現在は親会社の株式会社ビジョナリーホールディングス 執行役員として、Eコマース事業・オムニチャネル推進などの領域、IT、新規事業を統括。2017年より代表を務めるエバン合同会社では小売企業、大手メディア、B2Bスタートアップ、D2Cブランドへのアドバイザーに従事。
【世界へボカン株式会社 代表取締役 徳田祐希 略歴】
日本の魅力を世界へ伝えるというミッションの元、13年以上にわたり、多国籍メンバーと共に越境EC、海外BtoBマーケティングに取り組む。
年商35億→500億に売上を伸ばす等、数多くの実績を残す。
Shopifyマーケティングエキスパート。
世界へボカン 徳田(以下 徳田)
こんにちは!世界へボカンの徳田です。
本日はEコマース先生の川添さんに自社の強みや弱みを把握して売上を伸ばす方法について伺いたいと思います。
よろしくお願いいたします。
川添 隆(カワゾエタカシ)氏 (以下 川添氏)
よろしくお願いします。
徳田
簡単に自己紹介お願いできますでしょうか?
川添氏
Eコマース業界の先生として活動しております、川添隆と申します。
仕事としてはメガネスーパーのグループ会社であるビジョナリーホールディングスのデジタル、IT、新規事業の執行役員を行ったり、あとは複数の小売企業や、D2C、BtoBのスタートアップのアドバイザーをしております。
Eコマース先生としてはEC事業の可能性や、全国のEC担当者応援などになります。
最近はInstagramのReelsで注目のネットショップとかをご紹介しております。
よろしくお願いします。
徳田
いつもお世話になっております。
ボカンチャンネルも2回目のご出演ありがとうございます。
徳田
早速なんですけども、どんなふうに企業の強みや弱みを見つけるんでしょうか?
Eコマースのサイトを持たれてる会社さんのコンサルなど、そういう時に見たりするんですよね。
川添氏
私自身がECの相談とか実際アドバイザーとして入る時に最初にその会社の強みとか弱みはどこだろうであったり、主に強み、どこを伸ばしたらいいんだろうかってところを見ているんですけれども、主に3つの軸で見ています。
川添氏
1つ目は客観視するというところで、これも当たり前ではあるんですけど業界の当たり前、その会社の置かれている業界の当たり前をまず見ましょう。
例えばメガネスーパーに入ってECサイトを改革していくときに、僕自身はコンタクトレンズ付けないんですけど、メガネスーパーのECサイトはコンタクトレンズをメインに販売していました。
では「コンタクトレンズって言うのはどういうふうに販売しているんですか?」と聞くと「受注発注です。注文が入ったらメーカーに発注してそれが届いたら発送というのが普通です」と言われたんですよね。
でもコンタクトレンズってなくなった時に欲しいものなんじゃないですか?と聞いたら「それはそうですよ。むしろ慌てて買う人多いですとか、やっぱりめんどくさがって買わない人が多いです」と言っていました。
「ということは在庫を持って早く出したほうがいいんじゃないですか?むしろ強みというよりは業界の標準に対してそういう形がいいんじゃないでしょうか?」そう聞くと、「実は一部、在庫を持って即日で出してるやつあるんですよ」と。
しかしサイトを見るとそれが何も書いていない。
それはいいことやってるけど、書いてないので打ち出しましょうって言ったんですね。
徳田
なるほど。
まずは業界の基準とか当たり前を聞いて自社がどうなのかをまず把握する。
それがウェブサイトに見える化できてるかどうかもチェックするという3段階があるわけですね。
結構業界ごとに粗利率とか進め方とかも全然違う、かつ思い込みはお互いあるかもしれないので、そこを確認するって大事ですね。
川添氏
あとは僕もずっとアパレルやってきていて、例えばアパレルも生産のリードタイムが速いところと遅いところ、じっくりものづくりするところとクイックに販売するところありますよね。
じっくり生産するところは割と在庫を発注して、それを長く売っていく。
クイックなところは、たとえば3週間とか最短2週間で追加で生産して売れたものを足していくっていう2つがあるんですが、どっちが良い悪いないんですね。
それでなおかつ規模が大きいところだと、そういう生産体制がしっかりしてるところもあり、ちいさいところでもそれをクイックに回せるところもあります。
マルキュー系のブランドに僕が転職をした時に、最初に数字を聞いていったんですね。
当時2010年の3月で、Eコマースのデバイスの売上の比率でモバイルの売上(当時だとスマホではなくガラケー)の比率って何パーセントですか?と聞いて調べると85%から9割位あったんですよ。
実は業界の標準として、マルキュー系はそんな感じだったんですが、前職のECサイトではいろんなことを駆使して頑張って、4割ぐらい行ってたみたいな感じなんですよ。
それを比較すると、「えっなんでそんなに高いんですか?」と思うのですが、別に特に特別なことはやってない。
ということはお客様、ユーザーの属性がそういう属性なんですね。
ということはモバイルファーストでサイトを作らなければならない。
モバイルファーストで情報を届けていけるというのは大きな強みだし、モバイルのメールとかをしっかりやっていけば、売上に繋がるんじゃないかっていうヒントも見つかりました。
いわゆるECの業界の水準みたいなと比較したりして、強みを見たっていうことですね。
徳田
なるほど、その業界の水準と比較してどうなのかっていうところと、EC全体の業界の水準と比較した特異値っていうところを把握して、だったらこういう打ち手がとれるという強みを生かした打ち手が考えらるということですね。
川添氏
いろんな情報交換を皆さんされると思うんですけど、僕が何で相談を受けるんですかというか、無料で相談受けることもあるんですけど、それはやっぱりいろんな会社の話を聞いていくとそれぞれの業界の水準がわかる。
だから比較材料がもっと多くなってくる。
なのでこれを見てらっしゃる方もいろんな方と情報交換するときはそれぞれの業界でどんな特異性があるのか、どこに違いがあるのか見ると、自分たちの業界はこういったところが特殊で、さらに自分たちはこういうところに強みがあるんだっていうのが見いだしやすいです。
徳田
ついつい自分たちの業界の人たちと集まって話がちですが、異業種だったりとか、アパレルでもマルキュー系、何々系などで全然基準値が違ったりするので、そこを把握することによって自分たちがどう違うのかを把握することができるという事ですね。
川添氏
2つ目は、その企業、自分がいる企業出自のを聞くことです。
出自とはどんな成り立ちで、どんなビジネスからスタートしているのかなどで、アパレルだけではなくて、いわゆるモノづくりと小売りという関係性があったときに、例えば家具もニトリさんSPAという業態がありますね。ユニクロもSPAです。
いわゆる製造と小売を全部一体としてやりますというのがトレンドというか、ほぼ当たり前になってきています。
ただこのSPAの企業に関しても、モノづくりのメーカーが後から小売を始めた場合と、最初に小売、仕入れ販売をして始めた企業だと全然考え方が違います。
ざっくりいうと、メーカーからスタートした場合は物作ったら売れるでしょという、ある意味プロダクトアウトの発想ですよね。
作れば売れるでしょのような。
逆に小売からスタートしてきた人は、お客様を見てそれに合ったものを仕入れれば売れるでしょという考え。
生産リードタイムの事を考えると、小売系のところはクイックに調達をしたい。
売れたものをさらに作るや、たとえば隣で売れてる物をインスパイアして出すなど、そういった発想が強い会社が多いです。
一方でメーカー側はしっかりと時間かけてモノづくりしてや、作ったものを販売すればいいじゃんという、必ずしも皆さんそうではないんですけども、やはりその発送とか考え方っていうのは、結構依存度が高いですね。
徳田
在庫の持ち方も、仕入れればいいやという考え方ならば、ちょっと多めに持つなどして、利幅は少なくなるけれど売っていくという場合と、生産からやるところは結構大事に持っていくというところですね。
あんまりバリエーション持たないや、SUKを少なくするという持ち方だったりする形ですね。
川添氏
IT系の無形商材扱ってる会社が、Eコマースをスタートしようとすると、物を持つということに非常に抵抗感を覚えると思うんですよ。
また、粗利率が低いことに対して、違和感を感じたりすると思うんですよね。
徳田
すごく怖いですね。
粗利率は何個売らなきゃいけないんだろうって思いますよね。
川添氏
あとBtoBの企業がBtoCをやる時も同じような考え方ですよね。
BtoBの場合は1対1でも、10社アプローチして1社決まれば売上としては見込みが立つと思うんですよ。
しかし、小売で10人アプローチして1人だけだと全然規模感出ないので、効率が全然違います。
徳田
営業成約率ってBtoBだと20%とか30%だといいという話だと思いますし、製造業だと1社量産化になればそれでOKだと思うんですが、小売だと10人お客様が来て、1人とか2人しか買わなかったらその日きついという話になると思うので営業成約率の基準値も出自によって変わってきたりするということですね。
徳田
3つ目は何でしょうか?
川添氏
3つ目は、複数の関係者に聞いてクロスチェックをすることです。
企業の強みであるとか弱みってのは、もちろん社内の人が把握されているケースもありますが、どちらかというと弱みを理解はしているけど強みが明確に理解されてないケースと、主観的な理解で、客観性が乏しいというケース。
これは往々にしてあります。
なので1番目の業界水準と比較しましょうというのも一つのやり方です。
3番目の場合は直接人に聞いたりします。
これは例えば店舗をやっている企業であれば店舗のスタッフに聞いてみる、エリアのマネージャーに聞いてみる、もちろん経営者に聞いてみることもそうですし、あとは直接お客様に聞くこともあります。
これはWebアンケートでも、直接グループインタビューでもいいですが、お客様にどういう風に利点を感じてもらっているか。
取引先もそうですよね、取引先はいろんな業界、その業界の中でいろんなプレーヤーをみてるので、その中でうちってどんな風に見えてますかと聞いてみます。
それぞれの立場によって見える角度が違うので。
徳田
なるほど、「そういう風にみえてるのか」というのがわかるんですね。
川添氏
たとえば自分たちが強みだと思っていても届いてない事って絶対あるじゃないですか?
そこのギャップを理解することが重要です。
自分の強みだと思ってたけど、取引先の人に聞くと「いや、そんなの普通にやってますよ」って言われたら強みとして薄かったってことになるので。
徳田
我々も製造業などですと、海外の製造業の代理店さんにどういう理由でえらんで頂いてるのか、どういう理由で選ばない時があるのか、いろいろな仕入れ元がある中でなんでこのクライアントを選んでくださっていて、どういうポジションで見てるのかというお話をしました。
すると、高品質の特注品とかをお願いするときは依頼するが、汎用品をお願いするときはあんまり依頼しないということが分かりました。
「こういう風に見えているのか、しかし特注品は自分のサイトに見えてない」というのが結構あったりするので、客観的な声を聞くだったりお客様に近い人に聞くっていうのは結構行わせていただいています。
この前ですとインドネシアだったり、香港だったり、シンガポールみたいなところから聞いてみると、国ごとに見てるポイントが違ったりするので、多角的に見るといいなっていう所がひとつ。
そして川添さんがおっしゃったように、同じお客様というポジションでもみなさん見る角度が違ったりしますし、社内でいうと視座が違ったりすると自分たちの強みだったり、弱みってところも異なる視点で見えたりすると思うので、それはやってみるといいかなと思いました。
こんな感じで客観的に3つのポイントで自社の強みと弱みを把握して打ち手を考えていくってところであったり、その後の優先順位を決めて、こういう風にやっていったらいいんじゃないですかと川添さんがアドバイスされるっていうことですね。
川添氏
そうですね、特に補える弱み、すぐに着手できる弱みを補うっていうのも一つ手としてはあるんですけど、売上や利益を増やす、お客様の体験をよくする最短の選択肢っていうのは、自分たちが気づいてないんだけど、ほかの人から強みだと思ってもらっていることを強調する。
これが一番わかりやすいですよね。
さっき僕がメガネスーパーに入ったときの話しましたが、実はいろんないいことやってるけど、それが表に出てないってことは、それは出した方が絶対にプラスになるというお話をして、ある意味見せるだけで売上がすぐ翌月に1.3倍くらいになりました。
徳田
なるほど、強みを見える化するということですね。
僕も川添さんもいろいろアドバイスさせていただく立場で、いろいろ言ってますが、いろんな会社様を見てる僕らでも客観視するのは難しいので、自社での仕事をずっと取り組んでる方は、なかなか自社でアイディアとか次の打ち手が見えなかったり、優先順位が決められないと思うので、ぜひ外の意見というのを聞いてみてもらえるといいのではと思いました。
徳田
何屋かというのがすごい大事だな思っていて。
何をやるか、何をやらないかを決めていかないと、いろんな打ち手って取れてしまうと思うので、そこに対して出自があったりとか、自分たちの強み、弱みを客観的に聞いて絞り込んでいくっていうところができると、売上が伸びるんじゃないかなと、聞いていて耳が痛かったです。
川添氏
何屋かってわかりやすくお客様にも伝えた方がいいと思いますし、それは変わっていっていいと思うんですよ。
いわゆるD2Cのスタートアップみたいに、お客様の課題解決をするための会社ですとか、もう少し具体的に言うと、アメリカのマットレスブランド「キャスパー」って別にマットレス屋さんっていう風に書いてはなくて、The Sleep Companyと書いてあるのは、マットレスというのはおそらくソリューションの1つでしかなくて、あくまでも良い眠りを提供する会社ですと位置づけているためです。
ということはいろんなそれに付随するサービスとか、コンテンツが作り出せると。
恐らくマットレスブランド、マットレス屋さんですとなったら、マットレスを売ることしかできなくなってしまうので、さっき途中で変えてもいいって話しましたけど、ちょっと違うなというか、手詰まり感が出ちゃう可能性があるので。
「〇〇メーカーです」でスタートして小売に入って行ったらいわゆるSPAですね。
例えば服のSPA、家具のSPA。でも家具を届けたいのではなくてよりよい生活届けたいんですとなると、生活にまつわるソリューション提供しようかなっていうところになってきます。
徳田
ブランドパーパスですね。
何を目的とした組織なのかっていうところが明確だと自分たちのやるべきことの定義がクリアになってくるということですね。
これ結構面白い内容だったと思います。
本日は貴重なお話しいただきありがとうございました。
川添氏
ありがとうございます。
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