対談
Interview
この記事でわかること
この記事を読むことで、EC-CUBEを使ったECサイト構築のリアル、そして大塚さん、(株)Refineの成り立ちが分かります。
【株式会社Refine 代表取締役 / ECプロデューサー 大塚和男氏 略歴】
全くの異業種からWEB制作会社を起業。難易度の高い案件でも対応できる技術力を武器に「『時間を作り出す価値』を提供する」をミッションに掲げ、EC構築の専門家としてEC-CUBEプラチナパートナー、Shopifyエキスパートとして活躍。
【世界へボカン株式会社 シニアSEOスペシャリスト 加納宏徳 略歴】
コンテンツ制作チーム唯一の日本人メンバー。前職は伝統工芸品の海外向け通販サイトで越境EC運営とマーケティング全般を3年ほど担当、広告なしで約500万の甲冑を売るなど実績を残す。
世界へボカン株式会社 シニアSEOスペシャリスト 加納宏徳(以下加納)
大塚さん、お時間頂きありがとうございます!お客様の声記事でもお話をお伺いしましたが、本日はRefineさんのEC構築のリアルな話やEC-CUBEについて、くわしくお聞きできればと思います。まずはRefine(リファイン)さんと、大塚さんの仕事について教えて頂けますか?
株式会社Refine 代表取締役 / ECプロデューサー 大塚和男 様(以下大塚)
「EC-CUBE」と「Shopify」を使った国内向けECサイトの制作を、年間40店舗ほど手掛けております。比率は大体EC-CUBEが6割、Shopifyが4割です。大手の雑貨屋さんなどクライアントさんは様々ですね。開発がメインで、初期構築して納品させていただいた後、保守に入ります。
Refineの特徴として、EC運営には「守り」と「攻め」の部分があると思っていて。
加納
...守りと攻めですか?
大塚
ええ。僕らはEC運営で発生してしまうコストを減らすことを「守り」と呼んでいます。たとえば、なにかしらの理由で注文中にお客様が離脱してしまい、決済完了していないが商品在庫が確保されてしまった「未入金注文」の処理。これが溜まってしまうと、売れていないのに販売できない在庫が増えてしまうため、スタッフが定期的に注文を手動キャンセルする必要があります。これは結構な労力だと思うんですね。
それをシステム側で「一定の時間が経過したら自動的に注文キャンセルして在庫を戻す」処理を入れてあげると、そこだけの人件費が浮くわけじゃないですか。こうやってECのシステム改善を通じて、事業のコスト構造を改善することを僕らは「守り」と呼んでいます。
加納
なるほど、注文のキャンセル処理はお客様のお金に関わる処理なのでミスできませんし、そのシステムがあれば、毎日気を使っていた作業が無くなりますね。
では「攻め」に関しては...?
大塚
「攻め」の部分は、分かりやすく言うとUXやUI を向上させ、より購入しやすくする施策です。クライアントさんの要望を聞きながら新機能を取り入れたりなど、既存のサイトにプラスアルファで機能を足していくような形です。ECサイトの目的はコンバージョン獲得することなので、そこにいかに近づいていけるか。
UI・UXデザインを変えることによってコンバージョン率を改善できる。たとえそれが0.1%や0.05%でも、売上が上がっていくわけじゃないですか。
加納
元のサイトがアクセス数1万・コンバージョン率が1%だったとして、改善が0.1%でも売上は110%になりますよね。
大塚
そういうことですね。EC-CUBEって何でもできてしまうシステムで、どうしても攻めの部分より守りの部分に目がいきがちなんですよね。それは僕らもですし発注者もですね。
加納
さきほどEC-CUBEは何でもできるEC構築システムとおっしゃっていましたが、EC構築できるプラットフォームはMagentoやShopifyだったり、他にも色々ありますよね。大塚さんが公式プラチナパートナーを獲得するほどEC-CUBEに特化されたのは、何かきっかけがあったのでしょうか?
大塚
13年ぐらい前の話ですが、当時はプログラマーではなく、デザインやコーディングするフロントエンド* が専門だったんですね。でも株式会社Refineの創業時、初の受注がフルスクラッチ* でドロップシッピング* のシステムを構築する案件でした。何もない所から管理画面やフロントUI作ったのですが、これがすごい面倒くさかったんですね。
*編集部IT用語解説
・*フロントエンド=Webサイト等で直接ユーザーの目に触れる部分のこと
・*フルスクラッチ=既存のコードを一切使わずにゼロから開発すること
・*ドロップシッピング=在庫を持たずに商品を販売するECの仕組み
加納
自身の専門分野外なのに、1からECシステムをすべて作る... それ、ものすごく大変じゃないですか?
大塚
本当に大変なんですよ。当時オープンソース=無料で使えるシステムでは「OSコマース」や「Zenカート」などの海外製はあったのですが、最初のサーバー設置でくじけたり、いざカスタマイズしたくても資料がすべて英語だから訳が分からない。今みたいに「ボタン一つで簡単インストール」なんてサービスも無かったので、すべて自分で設定する必要がありました。
なので自分で1からECを作ったのですが、当たり前の機能をつけ忘れたり....。作っていたサイトは一般のユーザさんも管理画面にログインする仕様だったので 、UIもある程度こだわる必要があり、非常に大変でした。
加納
なるほど、当時は結構ハードルが高かったんですね...
大塚
高かったですね... それに加え「ECやりたい」と思った時にスクラッチで作ると、時間かかる上に600~800万規模が当たり前でした。
MakeShopなどのショッピングカートASPもあったのですが、やりたい事、カスタマイズが出来なかったりで、ありきたりなテンプレートを使って制作していて。そんな事情が重なり、何か解決策はないかと探している時に「EC-CUBE」を知ったんですよ。インストールすればショップができる、オープンソースで国産のEC構築システム。「これはいい!」となり、そこからですね。
大塚
自分のリソースだけ使って、いきなりECが出来上がるオープンソースの魅力にはまり、利用し始めてそこからです。2007年当時は「1系」のEC-CUBEを扱う制作会社は多くなかったのですが、版を重ね2.4系が出た2009年ぐらいから、だんだん他の制作会社が EC-CUBE使いはじめて。
加納
かなり時代に先駆けていたんですね
大塚
でも何かしら(会社として)尖ってないと僕が気が済まないタイプだから、まずは「価格と実績本数」と決め、なんでもEC-CUBEで作っていました。通常の商品購入ではなく「見積もりの問い合わせ」が目的の不動産系のサイトをEC-CUBEで作ったり、車の見積もりサイトをEC-CUBEで作り、来店予約を受け付けたり。
その次が印刷ですね。枚数とインクなどの複雑な価格表のマトリクスがあるのですが、そういった価格計算ロジックをEC-CUBEで初めて実装したのがRefineです。そこからどんどん「えげつない仕様の EC-CUBEといえばRefine」と評判がつき、複雑なロジックの制作も手掛けました。
EC-CUBEの「3系」が出たのが2015年で、Refineはいち早く3系での制作実績がトップになり、そのままプラチナパートナー、トップベンダーになりました。それまでは中小企業とのお付き合いが多かったのですが、プラチナを獲得してからは上場企業のECの制作もしております。
加納
EC-CUBEとの関係が深いRefineさんですが、Shopifyエキスパートでもあるんですよね...?
*編集部用語解説「Shopifyエキスパート」とはShopifyサイトの実績が豊富で、審査を受け「信頼できる」と判断されたShopifyパートナー。公式から成功するブランドやビジネスを構築することにも長けた、高い技術を持つデザイナー、開発者、コンサルタントのみに与えられる資格です。
大塚
ええ、3年前に「これ伸びるよ」と言われてShopifyを知ったのですが、まだまだ管理画面とか日本語じゃない状態だったんですね。でも2020年、緊急事態宣言を受けて「お店開けられないので2週間後にオープンしたい」など、とにかくすぐECを作りたいお客さんから相談いただいたのですが、EC-CUBEだとどうしても3~4ヶ月かかってしまう。
ではShopify でやってみましょうとなり、本格的に動き出したのが2020年の6月で、3ヶ月後の9月にはエキスパートになり、そこからEC-CUBEとShopifyの二刀流になった感じです。
加納
そこからたった1年弱で、いまは案件の4割がShopifyになってるんですね...
大塚
そうですね。結局プラットフォームって何でもいいけども、たまたま僕らがEC-CUBEやっていて、これでECの未来を構築できるだろうなと思い、やり続けた結果なのかなと思っています。そのECの知見があるからShopifyに対しても抵抗感がないし、EC-CUBEのカスタマイズを知ってるからShopifyをカスタマイズすることに対しても抵抗感は全くないですね。
そもそも「プラットフォームを通じてお客さんの要望を叶える」をずっとやっていたので、プラットフォームが変わったとしても、コアは変わらないですね
加納
大塚さん、2007年に起業する前はミュージシャンだったと風の噂を聞いたのですが...?
大塚
プロのミュージシャンをやってたわけではないです(笑)
Refine起業する前は2年間の空白があり、その前は喫茶店の店長だったんですよ。音楽歴でいうと、高校からライブやっていました。社会人になって2、3年ぐらいでバンドは辞めたのですが、1998年にX-JapanのHideさんが亡くなったのをきっかけに、高校時代のバンド仲間に連絡して再結成。そのバンド名が「Refine」でした。
加納
社名はそこから来てるんですね!お店の店長や会社の経営など、時間がいくらあっても足りないと思うのですが... 大塚さんが社会人になっても音楽を続けられるのはなぜでしょう?
大塚
音楽の自己表現する部分が、自分の生き方とマッチしていたからですね。
小学6年生でも身長が130センチと体が小さくて、スポーツは体格の差で絶望的に勝てなかったです。そういう事情もあり「自分の居場所を作らないと」と感じていました。小学2年の頃入っていたマーチングバンドでドラムセットを試したら、なんと8ビートができたんですね。面白いなと思い、隊長にかけあい、太鼓担当になりました。
音楽って「比較」ではなくて「僕の色はこうです」「こういう表現がしたい」が認められる世界かなと。音楽ジャンルの好みが合わないことはありますが、何かと比較されず受け入れてくれる人たちが必ずいるから、承認欲求が満たされるところがすごくあって。
加納
なるほど、自分の居場所探しでたどりついた答えの一つが音楽だったんですね。
大塚
ええ。当時学校には音楽をしに行っていたような感じでした。授業はほとんど出ていなくて、遅刻の回数100回とかですごい親に怒られました。いつもブラスバンド部室で友達と曲を聴いたり弾いたりと、高校は楽しかったですね... 中学高校時代で「大塚和男=音楽」のイメージが確立されていたので、40歳の同窓会で同級生に「音楽やらずに会社の経営してる」と言うとびっくりされましたね。
中高で音楽はじめた時の「自分の居場所」を作る思考回路がRefineでも生きていて、「何かのトップになろう」とか「他とは違うやり方にしよう」という行動になったのかと。「EC-CUBE取り組むなら、それで一位になろう」とか。今回のBack Market案件のチャレンジにも繋がっていると思います。
加納
今後目指している展開はありますか?
大塚
冒頭でも話した「ECの守りと攻め」の中でも、「攻め」の部分をもっと確固たる形にしていきたいですね。お客様に「この勝ちパターンで行きましょう」と言えるまで作りたいなと思ってます。
大塚
そうなると、売上アップのための手段をいろいろ手にしておきたい。この要望にはこのツール使う、そのマーケティング施策ならこれで対応できる状態にして、さらにその施策で「どう成果が上がったのか?」を可視化するBI ツールは作りたいなと思います。
加納
ツール入れたけど売上あがらなかったっていうのはよくある話ですよね...
大塚
「どのツールが良くなかったのか」を判断するBIツール。マーケティングオートメーションを導入したけども、実際の効果を検証すると、結局無駄だった.. なんていうのは普通に分析すればわかっちゃうので。
日本国内のDXはまだ全然進んでない分野で、そこをもっともっと提案して、実現できる事を伝えていきたいですね。Refineのミッション・ビジョン・バリューに共通して「時間を作り出す」というテーマがあります。いかにお客さんの時間を作り出し、その時間で本当に大事で、大切なことに取り組んで頂ければ、と思っています。
加納
EC運営やっていましたが、煩雑な定形業務って本当に多いですね... その負担が無くなり、事業の方向性や課題に時間を使えるようになるのは、本当ありがたいです。
大塚
ECは大きなメリットは「時短」で、お客さんは店舗に行かなきゃ買えなかったものが自宅で買える。でもECサイトの運営側、バックオフィスは煩雑な毎日やってる作業をもっと短くしてお客さんと本来向き合わないとだめじゃないですか。その時間を作り出そうよっていう考え方です。
非効率な部分をBI ツールなどを使ってどんどん可視化してあげて、ここ直すだけで売り上げが上がる、作業効率が上がるとか、サポートできる存在でありたいなっていうのはあります。
加納
最後にこの記事の読者へ伝えたいことはありますか?
大塚
Refineでは今、開発部門のすべてをお任せできるCTO候補を募集しています。要件定義等の上流フェーズから開発手法と最適解を考え、カスタマイズしていくポジションです。裁量が大きく、自分の考えたアプローチを実行できる自由さがあるため、いち技術者としても、とても腕が鳴る環境だと思います。この記事を読んで興味を持って頂けたら、以下のリンクからお問い合わせください!
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※編集部注:被写体には、写真撮影時のみマスクを外してもらっています。インタビューはマスク着用のほか、感染症対策を施してから行なっています。
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