対談
Interview
この記事を読むことで海外進出後の海外子会社や拠点管理についてがわかります。
【株式会社マルチブック 代表取締役 渡部学氏 略歴】
香港を拠点としたアジア地域における財務統括の運営や欧米の外資系企業のCFOを務め、グローバルなビジネスで活躍するスペシャリスト。
【世界へボカン株式会社 代表取締役 徳田祐希 略歴】
日本の魅力を世界へ伝えるというミッションの元、13年以上にわたり、多国籍メンバーと共に越境EC、海外BtoBマーケティングに取り組む。
越境EC企業の年商を35億→500億、14.7倍の成長を導くなど数多くの実績を残す。
Shopifyマーケティングエキスパート。
世界へボカン株式会社 代表取締役 徳田祐希(以下 徳田)
こんにちは!世界へボカンの徳田です。
本日は株式会社マルチブックの渡部社長にお話を伺いたいと思います、よろしくお願いいたします。
簡単に自己紹介をお願いします。
株式会社マルチブック 代表取締役 渡部学氏(以下 渡部氏)
マルチブックの代表の渡部と申します。
今現在マルチブックのCEOとしてこの7月から事業をリードしていますが、実はCFOとしてこの会社に入りました。
どちらかというとバックオフィスの経験のほうが長く、ファイナンスの分野や総務、シェアードサービスなどを国内の企業、外資系の企業にリードする役割でやってきました。
ERBシステムで有名なSAPやオラクルなどがあるんですが、この約20数年の経験の中で4つ導入した経験があります。
よろしくお願いします。
渡部氏
私たちマルチブックは現在25か国240社にこのERPシステムを提供しております。
基幹システム、会計システムというのはかなりクリティカルなシステムです。
着実にお客さんを作ってきてクラウド上で止まらない安全安心なシステムという方向性になってきたところから、私が今経営のバトンタッチを受けてこの事業をリードしています。
渡部氏
クラウドシステムを使う会社は小さいと思われがちなんですが、実は大きいところではサイゼリヤさんやニチバンさんなど、大きな上場企業で子会社は実はあんまり大きくないところで使って頂けます。
この業界の中だと第二標準ERPという言い方をしていますが日本だとSAPのような大きなシステム、海外は現地システムを入れているところが多いです。
そこを統合していこうと今どんどん進めていっているのが我々の事業でございます。
渡部氏
今はタイとかフィリピンなど特にアジアが日系企業が多いのでそちらの拠点に提供し、使って頂いているというのが多い事例となっております。
徳田
我々もアジアに進出する製造業・メーカーさんが多い中で、本社は大きいが各国の拠点のメンバーが限られていたり、日本人だと本当に数人しかいないことが多々あります。
管理が煩雑になってしまうというのはよく見受けられるのかなと思います。
どんな課題に対してサービスを提供されてるんですか?
渡部氏
特に小さな拠点はSAPを入れていることが多いんですが、小さなところは目が届かない、後回しにされがちなんですよね。
どちらかというと海外戦略でものすごく大事だから行こうと経営会議とかで号令がかかります。
いざ行くと決めたけどあとは現地任せだったり「あとよろしくね」的なところが日本の会社はわりと多いです。
そのあとのモニタリングが全然できていないという事例がかなり多いなというのが実感です。
徳田
確かにそうですね。
どんな管理をしていく必要があるんですか?
渡部氏
特に数字面の管理はとても重要でかなり大きな会社さんがいろんな問題を抱えています。
実は行って時間が経ってから問題が出るよりは進出して出店をしたあとすぐに思った状態ではない、経営上にインパクトがあるなどで上場を意図した会社さんもいったん上場を見送らざるを得ない。
そういった数字のインパクトがかなり出てきているのがこのビジネスをリードしていてお客様から聞くところですね。
なので今日のお話の特に大きなトピックとしては、今特にコロナになってからニューノーマル時代という言い方をして、海外子会社をどうやって管理していくのかという課題がかなり大きくなっています。
なので今日は進出後のトラブルをどうやって防止するのか、いったいどんなトラブルがあるのかなをお話します。
徳田
海外に拠点を持っている企業様、企業の担当様が見られると参考になる内容ですね。
渡部氏
そうですね。
特に海外に出てみて営業系で行く方はもちろん行ってらっしゃると思うんですが実はその方が管理も担わなきゃいけないパターンもあったりします。
そういう観点でいわゆるいつもフロントライン、営業的に見るよりは管理の視点で今日のお話ができると良いかなと思っています。
渡部氏
ニューノーマルで一番の問題は結局人が移動できなくなってしまったということです。
日本の会社さんは海外出張して「ちょっと見てくる」みたいなところで管理していることが多かったのではと思います。
たとえばタイに行くと決めたは良いが今は行けないという状態になったというのが現実的に起こっている。
これが今コロナ以降に大きく発生していることかなと思っています。
ですのでこのニューノーマルの時代、人の移動制限がかかった状態をどうやって解決していくのかは、これからの海外管理、海外経営では避けられないかなと思っています。
渡部氏
一言で言うと日本人が海外拠点にいない中で経営管理をどうやっていくのかがこれから考えていかなきゃいけない課題かなと思っています。
渡部氏
実は日本の経営管理にコロナ前からまだ変わっていない問題点があると思っています。
英語力はもちろん外国人と仕事をする際の理解は経験で、と曖昧に濁らせがちなところがあります。
あえて言うと海外に行ってまで日本流でやろうと行ってしまい結局管理ができていないということがすでに起こっているし、コロナ以降になってそれがさらに顕著になってしまっています。
今までなんとなく会って解決していたものが会えなくなったことによって一気に問題が顕在化してきているのが直近の事例で出てきていますね。
渡部氏
結果として今何が起こっているかというと、広い意味で言うトラブルです。
たとえば会計上、税務の問題や労務の問題、そして最悪では内部の不正といったトラブルがわりと発生をしています。
直近連絡を頂いたお客さんの事例は、実は内部監査室が動いて今回システム導入したいというような話が出てきているんです。
要はもう問題が起こっており、本社部門のしかも内部監査の部門が出てきて法務部分とタッグを組んで導入しようといったことまで起こってきている。
だいぶ現地とのギャップが出てきているというのが率直な印象です。
問題がかなりを顕在化してから動くという日系企業さんが多いというのも事実かなと思いますね。
徳田
この記事を読まれている方ですでに拠点を持っている、またこれから海外に拠点を持とうと思われている方は、どのような会計や税務、労務の問題が発生するのかというのを知っておく必要がありますね。
マルチブックさんを導入しておくのもひとつ手としてあると良いかもしれないですね。
渡部氏
そうですね。
そういう使い方をして頂けるとすごく良いし、特に予防的にこういうことってよく起こるんだと知っておいてもらえれば、システムはなくても当然見る目が養われると思います。
当然ながらシステムを入れておけばそういったことが予防的に動けるかなというのはあるかなと思います。
徳田
問題が発生しない状況を作るのが一番良いですよね。
渡部氏
もちろん予防というのが一番大事です。
特に日本流経営の弱みというところで特に強調しておきたいのがアイコンテキスト文化というものです。
どうしても日本人って以心伝心のようなものを求めるところがあるじゃないですか?
それを海外でやってしまうとなかなかスケールしにくい。
要は日本人的な影響やマネジメントをやってしまうと外国人が結局離れてしまう。
「こんなところでやってらんないよ」といった不満も出てきてしまったりします。
なかなか海外のビジネスが大きくなれない1つの理由に日系企業がハイコンテクストにこだわりすぎるというところがかなり大きいんじゃないかなと思っているんです。
徳田
15年くらい外国人と仕事をしているので「伝えないとわからないよ」ということは多々感じ、日々を反省する感じです。
ちゃんと役割を設定する、お願いしたいことをちゃんと言葉にして伝えないと伝わらないです。
販路を拡大するにあたって1人だけ日本人の社長であと全員インド人みたいなって結構あったりするじゃないですか?
その中でどういう風にマネジメントしていくかやお金に関わる部分の問題が発生しないようにどうやって未然に防ぐのかが大事なのかなと思いますね。
渡部氏
そうですね。
労務の面では今おっしゃったようなジョブディスクリプション:職務記述書をちゃんと作っておくとかですね。
日本人だとモヤっとした中でやっちゃってるんですが海外の人だとジョブディスクリプションに給料が結びついていたりします。
その辺をきちんと明示した上で金銭的な動機をちゃんとつけないと経営できないというのがありますよね。
特に業績面においても同じことが言えて、数字で業績管理はどちらかというと日本人ってわりと得意じゃないです。
数字で詰めると言うと悪い印象があるんですけど海外の人はその辺ははっきりしていて、予算達成してないんだからもうちょっとやるといったところの感覚が日本人よりもすごくしっかりしていると思います。
逆にそういうマネジメントをしてあげることによって外国の人材を活用できるかなと思っているのでぜひローコンテクスト文化にシフトすることについて発信をし続けていきたいなと思っているところです。
徳田
そんな労務管理の問題を防ぐ、ローコンテクスト文化にアジャストしていくところでいうと今までどんな問題が発生し、それをどんな風に解決していたんですか?
渡部氏
典型的な例として3つの事例をお話します。
事例1:偽造した領収書による立替金精算
偽造した領収証あるいはレシートを作って経費精算に回してしまうというパターンがかなり見られます。
台湾や中国のように領収書が固定されている国であると使い回しはあるんですが領収書の偽造はしにくいです。
そうでないところは領収書の偽造が割と多いかなと思っています。
ですので現物をしっかり確認する、支払記録を見る、あるいはコーポレートカードを導入したりするという企業さんも出てきています。
特に拠点管理をされている方だと次の事例は本当に注意してもらいたいです。
事例2:海外GM分の代理精算による着服
海外のGM職に就かれる方、営業で行かれる方とかいるじゃないですか?
お忙しいというのはあるんですが出張が多かったりして経費精算の額がすごく大きいんですよね。
そうすると代理で経理のマネージャーとかに懐刀みたいなつもりで頼んでいるんだと思うんですが、結構あるのがその方が着服するというものです。
たとえば直近であった典型例が2つあります。
GMが日本に出張したという建て付けで、経理のマネージャーが自分の観光旅行で日本に行ったぶん経費を会社で精算したんです。
ビジネスクラスに乗って日本に移動したやつを会社のGMの出張費の中に入れちゃうんですよ。
徳田
普通にばれますよね。
渡部氏
そうなんですよね。
バレそうなんですけど、実はGMは見ないともうわかっちゃっているのでその方のやりたい放題が起こっていたというがあるんです。
もう1つは金額がすごく大きくなっている。
例えば出張費とか日当全部入れて56万円の経費精算をしていました。
それが46万円振り込まれていてもよくわからないうちに10万円が本人に向けられたりしているんです。
支払いの記録のところまできちんと清算をして出勤の記録までのトラッキングができていないとそういうことが起こります。
事例3:仮払金の不適切な経理処理
小さいところでお金がいるからと会社で仮払いを先にしてしまっていうような会社は要注意です。
ある会社さんの場合だと、仮払金が適切に最後処理されないまま何年も積もり積もって、上場準備をするとなったときに「経費と認められません」というようなことが発生、結局本社にまで影響する。
本社が「これどう負担するんだ」というやりとりまで発生してしまいます。
特に仮払いの処理が放置されていないかというのは本当に見て欲しいところですね。
徳田
上場前にそんなことやってられないですもんね。
渡部氏
上場すると決めてからだと結構遅いです。
それをやっているとすると結果としてもう火がついている状態になるので、上場を見送るまたは後回しにせざるを得ないということが起こります。
特に海外の小さなところを放置しているパターンというのは結構危険かなと思いますね。
渡部氏
結局共通しているのはいずれも本社がほったらかしにしているという点です。
全部管理丸投げで特に本社が管理しなきゃいけないのはGMレベルの人間で、どういう権限や役割、ロールを与えているということです。
そのロールに対してほったらかすんじゃなく本社もきちっと牽制を入れていかないと見られてないから何やっても良いとなっちゃうんですよね。
本社が一体となってやるというのが今この時代に求められている経営管理かなと思います。
徳田
物理的にも見に行けないのでそういったのをSaaSでやらないといけないところがありますよね。
渡部氏
そうですね、今までだと現地に任せっきり、または現地のシステム入れたりしていて結局行かなきゃ見れないという状態にしちゃっていました。
今は行かなくても見なきゃいけない時代なのでそれができるようなツールというところでクラウドシステムはぜひ使ってみてもらいたいなと思っています。
渡部氏
今一連に挙げた、現地に行かなきゃわからない、現地とコミュニケーションしてなんとかしていたものをリモートで管理できるような仕組みを提供しているのがマルチブックという我々のサービスになります。
渡部氏
特に経営の会計伝票では、入れて頂くのは当然なんですけれども先ほど申し上げた一連の問題に対応するために不正につながるような事柄を発見するような機能を実装しています。
特に一定額以上の頻繁に移動しているもののお金や同じところに振り込んでいる記録、あるいは在庫管理システムで基準の金額よりも高い額で発注してキックバックをさせるような事例ですね。
そういった事例をを見つけるためのモニタリング機能というものを設けています。
ですのでブックマッチを使って頂ければ海外現地法人で行われているトランザクションが日本にいながら抽出して見ていくことができるので、「これどうなってんの?」日本から聞いて頂くと良いかなと思っています。
そうすることによって牽制になると思います。
渡部氏
実際どう使って頂いているかというと、東証の上場企業さんでタイ、グアム、台湾、シンガポール、フィリピン、カンボジア、ベトナム、上海などの会社を一気にマルチブックで統合し、それらの数字が全部取れるようになっています。
この会社さんは各国で行われている問題を日本の経理部門であっても監査部門であっても簡単にマネジメントコックピットの機能で見て調べて問い合わせをするということができるようになってきています。
徳田
各国で使用しているツールは今までは違ったってことなんですね。
渡部氏
そうなんですよ。
各国各様のシステムを使っていたので日本で見ようと思っても各国の仕様のシステムに入らなきゃいけませんでした。
それが同じシステムの1つのインターフェイスで見ることができているのが大きな違いかなと思っています。
しかも全部が6か月ぐらいの短期で導入できるようになっているのでかなり便利です。
私が昔やっていたときは1年~2年がかりで海外を入れていくプロジェクトだったのが、今はかなり短期間でしかもリモートでできるようになってきています。
自慢の導入方法だなと思っています。
徳田
良いですね。
せっかく懐刀みたいな感じで採用したのに不正でその人自身も失いたくないですし、そういった不正をさせない状況を作るというのが一番良いですよね。
渡部氏
本当におっしゃる通りで、大事なのは貴重な人材。
せっかく雇った人たちとか優秀な人たちが不正に手を染めない環境を作ってあげるというのが本当に経営管理上は大事だなと思っています。
渡部氏
特に今ニューノーマルの時代の海外管理は日本人がいないとか行けないところを管理するような時代だと思っています。
ですので日本の本社部門が主導して積極的に海外に関わってグローバルの経営ノウハウを溜めていくというのが必要かなと思っています。
そのやり方としては先ほど申し上げたようにロジックですね。
論理と数字でいわゆるローコンテクストの文化を作ることこそが海外で成功するためのものすごく重要な経営管理の在り方なんじゃないかなと思っています。
徳田
こういった財務管理をひとまとめでやるとなるとかなりコストもかかるのではないですか?
渡部氏
しかし実はそんなことなくてですね。
6万円から始められるようなプランを作っています。
私が昔導入していたところは数億円の世界でやっていた手法が、今はSaaSでクラウドで提供することによってコストがかなり抑えられ、月額6万円からこういった会計機能が提供できるような環境を今作っております。
徳田
人材を流出させない、変な不正を発生させないとなったら全然ありな投資だなと思いました。
海外に拠点を持たれている方、これから海外に進出される方というのはこういうことが発生し得るんだと知って頂き、ぜひマルチブックの渡部さんにコンタクトして頂けたらなと思いました。
本日は貴重なお話頂きありがとうございました。
渡部氏
ありがとうございました。
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