対談
Interview
この記事を読むことで、売上アップに繋げるための仮説構築・仮説検証についてがわかります。
【データサイエンティスト 松本 健太郎氏 略歴】
定性分析、消費者心理、行動経済学を学び、デジタルマーケティング、消費者インサイト等の業務を経験したマーケター兼データサイエンティスト。
政治、経済、文化など、さまざまなデータをデジタル化し、分析・予測を行う。
ラジオや雑誌に登場するほか、ビジネス書約16冊を出版。
最新著書「データ分析力を育てる教室(マイナビ出版)」は6/28発売。
【世界へボカン株式会社 代表取締役 徳田祐希 略歴】
日本の魅力を世界へ伝えるというミッションの元、13年以上にわたり、多国籍メンバーと共に越境EC、海外BtoBマーケティングに取り組む。
越境EC企業の年商を35億→500億、14.7倍の成長を導くなど数多くの実績を残す。
Shopifyマーケティングエキスパート。
世界へボカン株式会社 徳田祐希(以下:徳田)
こんにちは!世界へボカンの徳田です。
本日はデータサイエンティストの松本さんにお話を伺っていきます。
松本さん、よろしくお願いいたします!
データサイエンティスト 松本 健太郎氏(以下:松本氏)
データサイエンティストとして仕事をしております、松本健太郎と申します。
本日はお時間を頂戴して、ありがとうございます。
よろしくお願いいたします。
徳田
松本さんはめちゃめちゃ書籍を出版されているのと、様々な場にデータサイエンティストさんとして出られていて、僕も以前から存じ上げていました。
今日は「売上を上げる仮説の作り方」についてお話を伺います。
マーケターの方がお客様の打ち手を考える時に役立つ情報かなと思いますので、楽しみにしています!
徳田
早速ですが、仮説の構築と仮説の検証というのは、どうすればできるようになるのでしょうか?
松本氏
これはですね、めちゃめちゃ難しくて……
マーケターに限らず、多くの方が苦戦されていると思います。
中でも特に、“仮説の構築”に苦戦されるケースが多いように思います。
ゼロベースでいきなり「仮説を作ってください」と言われても、「どこから着手したらいいんだろう」と困ってしまいますよね。
仮説の検証に関しては、ある程度「こうじゃないか」と思う仮説があって、それが正しいかどうか確認するという作業なので、何かしらのプロセスのようなものがありますけど。
なので本日は、特に「こういう風に仮説の構築をすると楽なんじゃない?」という手法をご紹介できればと思っています。
松本氏
まず、おそらくご存知の方もいらっしゃると思いますが、演繹法と帰納法を使った仮説の作り方についてご紹介します。
まずは演繹法について、このようなイラストを作ってきました。
大前提というのは、普遍的なルールと思っていただければと思います。
「野菜には栄養がある」という大前提のもと、「ニンジンは野菜である」という小前提があり、ならば「ニンジンには栄養がある」という結論に至っていると。
大前提というルールがあるから、小前提に対する結論が導き出せる。これが演繹法というものです。
大前提は抽象的なもの、小前提や結論はより具体的なものだと思っていただければと思います。
松本氏
続いて、帰納法についてです。
いきなり小難しい話に聞こえていたら申し訳ありません……(笑)
帰納法は、個々の具体的な話をひっくるめると、ある種普遍的で抽象的な結論が導き出せるというものです。
ニンジンには栄養がある、カボチャには栄養がある、ケールには栄養がある。
だから、「野菜には栄養がある」という結論が導き出される。
松本氏
ここまで野菜に例えてご説明しましたが、ECやマーケティングに関しても同じだと思うんですよね。
例えばLP(ランディングページ)で、あのサイトも縦長、このサイトも縦長、こっちも縦長……という現状があり、そこから「縦長のLP1枚が結果的に良いんじゃないか」ということが帰納法的に導かれている訳なんですね。
1個1個の事象を見たうえで、結論が導き出されている。
マーケティング、EC、物販の分野に様々な方が携わられる中で、何か策を作るという際には、帰納法的または演繹法的に案が導き出されていると思います。
ここから仮説をポコポコ生み出していくためにどうしたらよいか、ということについては、皆さんに馴染み深いよう「鬼滅の刃」に例えてお話できればと思います。
徳田
面白いですね!
松本氏
鬼滅の刃見てません!キメハラじゃないか!と思われる方がいたら本当に申し訳ないですが……
徳田
大丈夫です、みんな観てますよ!(笑)
松本氏
なら良かったです!(笑)
まず鬼滅の刃の世界に登場する人たち、特に鬼殺隊の方たちは、帰納法的に「あらゆる鬼は人に危害を加える存在である、だから鬼は滅さなければならない」という風に思っていると言えるでしょう。
それは「鬼は人を襲い食べる存在である」、「十二鬼月はたくさん人を喰っている」という事象が存在していて、また鬼殺隊の人たちが「大事な人を鬼に殺された」という経験を持っているからこういう結論になっていますよね。
松本氏
この結論があるからこそ、演繹法的にも、御前会議のとき「竈門禰豆子は絶対に殺すべきだ」と鬼殺隊の人たちは言っていたわけです。
「あらゆる鬼は人に危害を加える存在である」という大前提に立っている時に、目の前に竈門禰豆子という鬼が現れたから、当然「この鬼も人に危害を加える存在である」という結論に至りますよね。
松本氏
ところが、炭治郎や鱗滝左近次さんは、そうじゃない結論に至っている。
なぜかと言うと、実は従前の帰納法的に出ていた結論(あらゆる鬼は人に危害を加える存在である)、そしてその結論を支える事象らに合致しない事象を経験しているからなんですよね。
そこがまさに「竈門禰豆子は人を襲わない」という事象であり、炭治郎に至っては鬼である珠世にも出会い、家族を助けてもらったという経験もある。
よって炭治郎たちが帰納法的に導き出した結論は「人に危害を加える悪い鬼もいるし、人に危害を加えない善良な鬼もいる」というものなんです。
松本氏
御前会議で炭治郎が発した「善良な鬼と悪い鬼の区別もつかないなら、柱なんてやめてしまえ!」というセリフがあったと思います。
これは炭治郎が、他の鬼殺隊の人たちとは違う帰納法的結論に至っていることが現れた言葉だと言えます。
ここで「どうやって仮説の構築をしたらいいの」という話に戻りますが、まさに今回の鬼滅の刃の事例からも分かるように、ビジネスの結論には必ず、演繹法・帰納法的な前提や事象があるはずです。
そして、結論に合致しない事象・前提にどれだけ出会えるかということが、仮説の構築におけるポイントになります。
有り体に言ってしまうと、今みなさんのビジネスを支えている結論と合致しないファクトを探しにいってください。
その合致しないファクトに出会うことで、結論や前提が崩れる。
すると「なぜこうなったんだ」という仮説が生まれてくると思います。
徳田
なるほど。
多くの事象に触れているから、ベテランの人やシニアの人は「こういうことも考えられるんじゃないか」というふうに視野を広く見て考えられるということですね。
では若手の人たちにとっては、事象にひたすら触れる機会を作ることが重要ということでしょうか。
松本氏
おっしゃる通りです。
事象に触れる時には、自分たちのビジネスに関係することにだけフォーカスするというのはあまり良くないです。
少しレイヤーを広げて見てみる、ということをやってみていただきたいです。
例えばECのビジネスをされている方であれば、リアル店舗に足を向けてみたりとか。
違う領域に目を向けることで「こういう観点があるんだ」という気付きが得られると思います。
よく「どうやって店舗観察をしたらよいか」とか「具体的に何に着目するべきか」というご相談をいただきますが、そういう時は先程お話したように、皆さんのビジネスを支えている結論があるはずなので、その結論に合致しない事実を店舗の中で探してみるというのが良いかもしれないですね。
徳田
確かにそうですね。
僕らのクライアントの中にも実店舗を持っているお客様がいらっしゃいますが、Webサイトが頭打ちになった時に、実店舗に足を運んでどんな接客をしているのか見たりすると「実店舗でできていることが、オンラインだとできていない」ということが結構あるんですよ。
「この取り組みもこの取り組みもやった、だから上手くいかない」と思っていても、実は外の事象に触れてみるとまだまだできることがあったりします。
一度は「打つ手がない」と導き出してしまった結論を、そうやって覆していくようなイメージですよね。
松本氏
おっしゃる通りです!
徳田
ここまで、仮説を構築するには、演繹法・帰納法を理解しながら異なる事象に触れるというお話を伺いました。
すると、「仮説を構築する力」というのはどのように培われていくものなのでしょう?
松本氏
有り体に言ってしまうと、「場数」という答えになってしまうのですが……
例えば、将棋の世界には藤井聡太さんという類稀なる棋士の方がおられますけど、私達が将棋のルールを学べば藤井聡太さんになれるかというと、それは別問題じゃないですか。
なので、ルールを覚えるということと素晴らしい成績をあげるということは恐らく別なんだと思います。
先程「こうすれば仮説を構築できますよ」とお話しましたが、あれも仮説構築におけるルールの1つをお話したということなので、ルールを覚えたからと言って素晴らしい仮説がポコポコ生み出せるようになるかというと、これも別問題になります。
その前提でお話をさせていただくと、仮説を立てる力を培うには、まず仮説構築のルールを身につける。
そして場数を踏んで、筋肉のようにちょっとずつバルクアップすることがとても重要です。
松本氏
どうやってバルクアップするのかというと、日常の中で常に意識し続けることだと思っています。
ほんの些細なことでも良いので。
例えば僕が最近ハマっているのは、「今日家に帰ったら、妻がどんなご飯を作ってくれているでしょうかゲーム」のようなものをやっています。
徳田
仮説を立てて、検証するわけですね!
面白い!
松本氏
朝起きて、朝食代わりの豆乳を出す際に冷蔵庫の中身を見て、食材があるかないかをチェックする。
無い時は、妻にさりげなく「今日スーパー行く?」と聞きます。
そして行くと言われた場合、「そういえば、あの肉安いって書いてあったよ」と伝えます。
それに対して「へ―」と返ってきた場合は、買う可能性が高いんです。
逆に「あそうなんだ!それ安いやん」と反応だと、絶対買わないんですよね。
そのリアクションから「これを買わないということは、食材は決まっていて、肉じゃないということは魚なのかな」と考える訳です。
徳田
なるほど。
松本氏
そして仕事から帰宅して、答え合わせをすると。
そんな風に、どんな些細なことでも良いと僕は思っています。
ビジネスに関わることだけじゃないくても良いと思いますし、もしかしたら友人関係でも使える手法かもしれないですね。
大事なことは、何かしらのフレームワークを意識して実践してフィードバックをする、ということです。
これを1週間続けるだけでも、意外と物事の見方がカラッと変わってきます。
徳田
「今日夜ご飯何かな?」と考える習慣はなかったですね。
それを毎週やり続けると、事象に触れて傾向が見えてくるから、色んな結論が出せるようになっていくというわけですね。
松本氏
そうですね。
ある時、「今日はスーパーのお惣菜じゃないかな?」と考えた時に見事に当たって、お惣菜のカニクリームコロッケが出たことがあって。
そこで「妻はカニクリームコロッケが好きなんだ」という情報をインプットして、2週間後くらいに僕が晩ごはんを買う日があったので、カニクリームコロッケを買って帰ったんです。でも今度は非常にリアクションが悪くて。
2週間前との差分を考えると「今回はコロッケを温めなかった」という事があったので、妻はコロッケを温めて食べたい派だということが分かりました。
そして次の機会に、神戸コロッケのカニクリームコロッケを買ってきて出すと、今後は「カニ感が強くで好みじゃない」と。
カニじゃなくてクリームが良いんだ!とそこで分かります。
そこで次はコーンクリームコロッケを買ってみると喜んでくれたので、「やっぱりクリームが好きなんだ」という結論に至るわけです。
徳田
すごい!
なんか、いい旦那さんですね。
松本氏
そうですよね!(笑)
徳田
僕らは普段支援する側にいますが、コンサルタントとして「なんでお客様は、僕らを頼ってきてくださるんだろう?」と考えることがあって。
おそらくそれは「異なる事象に触れている」ということに価値を感じてくださっているのかな、とお話を伺っていて思いました。
松本氏
おっしゃる通りだと思います。
僕は今の会社で、事業側でもあり支援側でもあるという立場を経験していますが、事業側に立ってみると「いかに世界を知らないか」ということを痛感するんです。
一方支援側として色んな会社の方とお話をすると、「客観的に見て、自分たちのビジネスのどこが良くないのかを相対的に教えてほしい」とおっしゃる方が多いです。
僕自身の経験をもとに、相対的に「ここが難しいんじゃないですか」「ここが凄いと思っています」というお話をすると、「そういう話は社内では聞けない」という表現をされるんですよね。
これはまさに、僕自身の経験や会社としての経験から帰納法的に導き出した結論を、色んな会社さんが求めていらっしゃるんだろうなという風に思います。
徳田
なるほど!すごく勉強になります。
それでは、前編はここまで。
後編では、実際にデータを読み解いて打ち手を導き出す方法について伺っていきます。
後編へ続きます!
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