対談
「ひとりD2C」で成功するマーケティングとは?【前編】麹王子 オミ氏 × 世界へボカン 徳田
- 2022.08.24
- D2C

対談動画
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この記事を読むことで、ひとりD2Cを成功に導くオネストマーケティングについてがわかります。
【株式会社麹王子 代表取締役 阪田真臣氏 略歴】
某広告代理店から楽天(株)にて営業部署配属、営業部門Professional“楽天賞”受賞。2017年楽天(株)を退社、2017年起業、2020年7月株式会社麹王子を設立。3事業運営、体質改善ワークショップ、セミナー講師/TV3度出演/無店舗型で業界初の認証済み公式LINEアカウント獲得/LINE@登録者1300名【世界へボカン株式会社 代表取締役 徳田祐希 略歴】
日本の魅力を世界へ伝えるというミッションの元、13年以上にわたり、多国籍メンバーと共に越境EC、海外BtoBマーケティングに取り組む。越境EC企業の年商を35億→500億、14.7倍の成長を導くなど数多くの実績を残す。
Shopifyマーケティングエキスパート。
麹王子 阪田真臣氏の自己紹介

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世界へボカン株式会社 徳田祐希(以下:徳田)
こんにちは、世界へボカンの徳田です!
本日は麹王子こと阪田真臣さん(オミさん)に、ひとりD2Cのマーケティングについてお話を伺いたいと思います。
まずは簡単な自己紹介をお願いできますか?
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株式会社麹王子 阪田 真臣氏(以下:オミ氏)
株式会社麹王子、代表のオミと申します。
甘酒の製造販売を行っていまして、冷凍の甘酒を「amakouji(甘麴)」という名称で販売しています。
甘麹は酒粕(アルコール)を使っていない、米だけを使用して作った甘酒でして、これをEC販売のみで提供しています。このビジネスを始めてから現在5年目になりますが、製造から販売、マーケティング・プロモーション含めてすべて一人で行っており、いわゆる“ひとりD2C”ということになります。

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徳田
オミさんの甘麹はすごく人気商品で、半年待ちとかになっているんですよね?
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オミ氏
そうですね。
タイミングによって3ヶ月待ちだったり半年待ちだったりするのですが、基本的には1ヶ月はお待ちいただく状況になっていますね。
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徳田
そんなヒット商品を完全にお一人で手掛けられているということで……
一人でどうやってそんなヒット商品を作って、ビジネスを継続してこられたのか伺っていきたいと思います。
これからD2Cブランドを立ち上げようとしている方や、一人~少人数でブランドを運営している方にとって、特に参考になるお話になると思います!
ブランド立ち上げの経緯
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徳田
製品について、もう少し具体的にお話を伺えたらと思うんですけど、どういった経緯で作ろうと思われたんですか?
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オミ氏
知人から「発酵」について教えてもらったことがきっかけになりました。
日本で生まれ育っていたら、味噌やお漬物という発酵食品は当たり前に知っていると思うんですけど、改めて発酵について考えることはそれまでの人生でなかったんですよ。
実は僕、昔から体が非常に悪くて……俗に言う虚弱体質というものなんですよね。
幼少期から小中高、その後社会人になってもずっとその体質と向き合ってきたいんですけど、やはり年齢を重ねるとともに体力の限界を感じて。特に30代に突入したとき、「このままサラリーマンとして、激務に耐えうる体力がなくなってきている」と痛感したんです。
そんな時に、先ほどお話した知人から「酵素というものが体に良い」と教えてもらって、甘酒を作る教室に行ってみることにしました。

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オミ氏
正直当時は全然興味がなくて、甘酒も苦手だったんですが、お世話になっている方から勧められたので渋々参加したんです。
ですが参加してみて、甘酒の美味しさに感動してハマってしまって。身体に良いものは美味しくないというイメージがあったんですが、それを見事に覆されたので「こんな商品はなかなかないぞ」と思い自分でも作り始めたという経緯です。
はじめのうちは、サラリーマンとの二足の草鞋でスタートしました。

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徳田
そういう経緯だったんですね。
実際にその商品を食べることで、ご自身やお客様が健康になられたということでしょうか?
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オミ氏
そうですね。
会社員との二足の草鞋でやってる頃、まずは身内や知人に試作品を渡して何回か食べてもらうということを行っていたんですが……
なんて言うんでしょうね、明確に体の変化が出たというか。例えば10人中1人にしか効果がなかったら、その商品による効果なのか分からないじゃないですか。
それが10人中8、9人くらい、ほぼ全員が変化を感じてくれていたので、「これはいけるな」という確信が得られましたね。

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徳田
なるほど。
まずご自身が虚弱体質で困っていたという原体験があって、この商品を同じように困っている人に届けたら良いんじゃないか?というところから始められたんですね。
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オミ氏
仰る通りです。
その二足の草鞋で始めたのは6,7年前くらいなんですが、そのころはまだD2Cという言葉はあまり耳にすることがなくて。
後から「自分はD2Cというものをやってたんだな」と認識しました。
“ひとりD2C”を続ける理由
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徳田
一人ですべての業務や工程を担うってめちゃめちゃ大変だと思うんですけど、社員を雇ったりはしないんでしょうか?
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オミ氏
雇おうかなと思ったことはあるんですが……
雇うほどの売り上げをなかなか出せなかったというのがまずありますし、甘麹はすべて自分で作っている秘伝のタレのようなものなので、情報を外に出さずにビジネスを拡大していくというのは難しいなと……
どちらかというと、人を雇うことはリスクの方が大きいと感じていました。
結果、一人でどこまで回せるのか考えていったり、一人で回す仕組み化をつきつめていったりして、今それで回せているという感じですね。

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徳田
なるほど。
僕らもD2Cブランドを運営している方によくお伝えしているんですけど、そもそも年間1億売りたいのか10億売りたいのか、3000万5000万なのか……どのぐらいの規模でやるか次第で運営方法も変わってきますよね。
規模を追いすぎるとお客様を幸せにできなくなってしまったり、自分が実現したいこととずれてしまう場合もある訳ですし。
なのでそのブランドというか市場における健全なシェアというか、健全な売上みたいなものが存在するのかなと思っていて。
あえて人を雇う必要がないケースというのは確かに存在するかもしれないですね。

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オミ氏
はい、僕も本当にそう思います。
“ひとりEC”で成功するマーケティングとは?
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オミ氏
少し前に流行ったclubhouseというSNSがあるじゃないですか。
一気に流行ってもはや祭り状態になっていた時、僕も24時間入り浸っているくらいやっていたんですよね。
そこで一度大きなバズが起きて、甘麹が30分で200万円ぐらい売れたんです。それまでに3回くらいテレビ出演もしていて、その時も大きな反響があったんですが、clubhouseをやった時の方が売上が大きかったんですよ。
clubhouseのプロフィールにインスタアカウントへのリンクを付けて、「インスタでDMを送ってくれたらクーポンを配ります」というキャンペーンを実施したんですが、1000件くらいのDMが届いて。

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徳田
1000件も!すごいですね。
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オミ氏
それらのDMに対して、コピペなどをせずに一通一通返信を打って返したんですよ。
全部返すのに8時間くらいかかったんですけど(笑)ただ売上というよりは「ひとりひとりのお客様にちゃんと商品の良さをわかってもらいたい」という気持ちが強かったので、その一心で地道にメッセージのやり取りを行っていました。

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徳田
なるほど。
まずはclubhouseで商品の魅力やブランド立ち上げの経緯などをお話されて、そこあでいいなと思ってくださったお客様にDMでクーポンを配布するというキャンペーンを行ったと。
そしてDMを送ってくれた方には、一人ひとりに対して商品の魅力をしっかりお伝えして丁寧に対応していたら、短時間で200万円ものの売上に繋がったということなんですね。
オミさんとしては、そういった“どぶ板営業”じゃないですけど、地道な取り組みを大切にされているのでしょうか?
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オミ氏
そうですね。
会社員時代も営業マンをやってたのですが、10年ほどの期間ずっとその“どぶ板営業”というスタンスで仕事をしていました。
なので、それが板についていたというのもあるかもしれないですね。僕のやり方はすごく非効率ですし、上手にやっている人から「あいつどんくさいよね」「あんなに手間かかることを、なんであんなに時間かけてやってるの」みたいなことを言われることもありました。
ただその結果、効率を優先するような同僚よりは高い売上を出していたんですよね。
亀がウサギに勝ったと言いますか。その経験が今のベースになっていると思います。

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徳田
オミさんのやり方は、これからD2Cブランドやろうとしている方や、現在少人数で回しているような方に対して再現性があると思われますか?
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オミ氏
あると思います。
マーケティングという概念って、非常に抽象的で広い分野だと思っていて。
会社員時代も起業してからも、「マーケティング」というものを意識して市場や売上規模を調べたり戦略を考えたり……ということはしてこなかったんですよ。ただD2Cというワードが自分の耳に入るようになってきた頃から、マーケティングというものを教えてくださった方が何人かいらしたんですね。
その方々の教えと、僕が今までやってきた売り方を照らし合わせた時に「それすごいマーケティングだよ」「結構先進的なマーケティングをやってるんだね」と言っていただけたんです。

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徳田
なるほど。
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オミ氏
僕としては、どちらかというと古臭いことをやっているという意識しかなかったので、先進的と言われたことはとても意外でした。
再現性という観点でも、これまでやってきたことを誰かに教えて、その人ができるのか?と考えたら、全然できると思います。
ようは、店舗と同じように、お客様一人ひとりに対して接客を行っているだけなんですよね。
それがLINEだったり、Twitter、インスタグラム、FacebookのDMでお声がけするとか、問い合わせに対してテンプレートで返さずに、普通に話しているような感覚で返信するとか……そうやってコミュニケーションが密になれば、エンゲージメントというか普通に仲が良くなってくると。
すると自ずと商品のことを愛してくれる。本当に再現性というか、それだけなんですよね。

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徳田
そうなんですね。
ここまでのお話を一度整理させていただくと、オミさんはそもそも虚弱体質という悩みがあって、その原体験を活かして商品を開発されたと。
そして似たような悩みを持つ人たちにclubhouseやTwitterなどを通してリーチしていって、相談をしてくれた方には一人ひとり丁寧に対応していた。すると「この人から商品買いたいな」とか「この人信用できるな」というふうにお客様と信頼関係が結ばれて、商品を買ってくれたり、使い続けてくれたりするようになって。
そうやって取り組んできたことが結果的にマーケティングになっていたということなんですね。
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オミ氏
仰る通りです。
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徳田
このマーケティング手法って、何てネーミングにしたらいいんですかね?
“どぶ板マーケティング”だとちょっとあれだから……(笑)
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オミ氏
そうなんですよ、“どぶ板営業”って本当に昭和だなというか、かっこよくないな……みたいな(笑)
でもこの概念ってこれからの時代でも絶対大切だし、広まってほしいとなってくると、かっこいい名前じゃないといけないよなと思って。
そこで定義づけするための言葉を作ろうとして生まれたのが、オネストマーケティング(Honest Marketing)という名前です。


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