対談
Interview
この記事を読むことで、越境ECの国際税務についてがわかります。
【オプティ株式会社 代表取締役CEO 淵上 暁】
University of Texas留学後、大企業に務める。
海外企業で税務戦略部門設立し100者以上に貢献。
オプティを設立し、日本企業の海外税務を援助する。
【世界へボカン株式会社 代表取締役 徳田 祐希】
日本の魅力を世界へ伝えるというミッションの元、13年以上にわたり、多国籍メンバーと共に越境EC、海外BtoBマーケティングに取り組む。
越境EC企業の年商を35億→500億、14.7倍の成長を導くなど数多くの実績を残す。
Shopifyマーケティングエキスパート。
オプティ淵上氏との1回目・2回目の対談記事はこちらから:
▼間接税・VATの基本編
越境ECの国際税務【間接税・VATの基本編】オプティ淵上氏 × 海外Webマーケター徳田
▼Shopify・海外モール編
越境ECの国際税務【Shopify・海外モール編】オプティ淵上氏 × 海外Webマーケター徳田
世界へボカン株式会社 徳田 祐希(以下:徳田)
こんにちは、世界へボカンの徳田です!
本日も越境ECの税務について、オプティの淵上さんにお話を伺いたいと思います。
よろしくお願いいたします!
オプティ株式会社 淵上 暁氏(以下:淵上氏)
よろしくお願いします!
徳田
1回目は越境ECの税務の基本編という形で概要をお伺いしました。
2回目では、どのプラットフォームを活用して販売しているか、どのエリアに対して何を販売しているかによって税務まわりのルールが異なるというお話をしていただきました。
ラストの3回目は、デジタルコンテンツとフィジカルコンテンツで税務面がどう異なるのか?というお話を伺っていきたいと思います。
淵上氏
上記の画像にありますが、商材の大きな分類として「フィジカルグッズ」と「デジタルグッズ」というものが存在します。
こちら経済産業省が出しているものですが、画像でいいますと灰色の方がフィジカル、赤色の方がデジタルです。
例えば音楽でいえばライブのチケット料やCD販売などがフィジカルに分類され、楽曲のダウンロード、ストリーミングなどはデジタルグッズとなります。
出版の場合ですと、通常の書籍と電子書籍・電子新聞/雑誌とで分かれてきますし、
映像も昨今の動画配信サービスなどはデジタルに分類されます。
ゲームでも、以前はソフトを購入してゲーム機やパソコンで遊ぶことが一般的でしたが、昨今の場合ですと月額課金のゲーム、あるいは基本プレイ無料ゲームの中でアイテム購入をするシステムがあったりしますよね。
以上の例を見て分かるように、特に昨今ではデジタルコンテンツが非常に大きなウェイトを占めるようになってきています。
徳田
なるほど。
当然、デジタルグッズの販売にも税金がかかってくるんですよね?
淵上氏
はい、そうです。
税金のお話に移る前に、市場について少しご説明させていただきます。
こちらのグラフにあるように、2014年から2023年までずっとデジタルのコンテンツの世界市場規模は増加し続けています。
フィジカルのほうはそんなに変わっていない訳なので、今後デジタルコンテンツが急激に産業として大きくなっていくと言えるでしょう。
淵上氏
またそれぞれのデジタルコンテンツの中で、どのジャンルが特に伸びているのかという点については……
まずこの中で一番大きいのがゲームの市場です。
デジタルゲームの市場がどんどん伸びていて、その次に映像が入ってきて、次に出版と。
さまざまな国において、こういったデジタルコンテンツがどんどん大きくなっていっている状況です。
徳田
なるほど。
ちなみに僕らはYouTubeを使って動画を発信しているんですが、例えば今後、有料のメンバーシップ限定動画の配信を始めるとなった場合、それをヨーロッパの人が見ていて課金していたらそれはもう課税対象なんですか?
淵上氏
そうですね、そうなります!
徳田
なるほど……
思っているよりも、自分たちにとって身近なトピックかもしれないですね。
具体的にどんなことに気を付けるべきなのでしょうか?
淵上氏
まず対象としている販売相手が個人なのか法人なのかによって異なります。
今回の話が個人だったとすると、たとえばのヨーロッパの場合でしたら、先ほどお伝えしたようなワンストップショップというもののVAT番号がございまして。
これを一つ持っておけばヨーロッパ全域での販売が可能にはなります。
イギリスの場合、ブレグジットでEUから離れてしまいましたので、別途UKのVAT番号を取る必要があります。
徳田さんが今仰ったYouTubeの例でいうと、売上金額の20%ぐらいがVATとして課税されますのでそれをきちんと現地で納税をする必要が出てきますね。
徳田
納税額を見据えた価格の設定や、配信エリアの選定が必要になる訳ですね。
ヨーロッパだったらEU内のみにするのか、イギリスを含めるのかにもよって手続きも変わってくると。
淵上氏
アメリカではShopifyを活用した越境ECのケースと同じように、いわゆる閾値というか、エコノミックネクサスというものがあります。
デジタルグッズの販売の場合においても、この閾値を超えたらやはり現地での税登録・税申告の義務が発生しますね。
ただアメリカの場合ですと州がたくさんありますので、「そもそもどんなものがデジタルグッズの販売なのか」「それらがそもそも現地での課税対象なのか」などということが州ごとに異なる場合があります。
そこを細かくチェックする必要性が出てきますね。
徳田
前回のお話では、フィジカルグッズだったら年間10万ドル・200取引を一つの閾値として考えておくと良いということがありましたが、デジタルコンテンツではいかがでしょうか?
淵上氏
閾値の金額はほぼほぼ同じと捉えていただいて良いかと思います。
なので10万ドルを超えたら現地での税登録や税申告が必要という認識は最低限持っておいていただければと。
ただ取引回数については、200ダウンロードなどといった回数の閾値がある訳ではありません。
徳田
州の閾値を超えていたら、そういった税務の課税義務が発生する……ということを覚えておかないとですね。
淵上氏
はい。
改めてまとめますと、越境ECやデジタルグッズの海外向け販売は、各国ごとに税制が異なります。
今回はヨーロッパやイギリス、アメリカを中心にお話をさせていただきましたが、当然ほかの国にもさまざまな税制があります。
なので海外向け販売を始められる際には、販売先となる国の税制を理解しておく必要があります。
税制を理解しないまま販売を進めてしまった場合、間違ったスキームの設計をしてしまい、そのスキーム上で受注し、今度は発行するインボイスも間違って発行してしまったり間違った税率をかけてしまったり……などという話になりかねません。
ですが売ってからは元に戻せないため、場合によっては納税の義務を放置してしまう可能性もあります。
結果的にそうなると、それが事件化して税務調査が入ってしまったり、重加算税が加算されたり、あるいはAmazonで言えばアカウントが凍結されてしまいます。
また税登録やそういった税申告の義務を無視してしまうと、物が配達されないということもあります。問題がエスカレートする前に、事前に仕組みを確認して未然に防止することが重要だと考えております。
徳田
税務面に関してはアメリカ向けに販売するほうが楽だなと思ったんですけど、EUに販売するメリットってどんなことがありますか?
淵上氏
EUの場合ですと、よく言われていることとしては……粗利を10%ぐらい高く取れると聞いたことがあります。
製品の価格差を調べるようなツールってあるじゃないですか。
ああいったところでも見てみると、確かにヨーロッパのほうが高く売れるようなものとかもあります。
あとアメリカ向けのAmazon・Shopifyの販売は結構参入している企業が多いわけですから……競合が多い分大変な面もあると思います。
徳田
なるほど、確かにアメリカ向けは競争が激しくなりますね。
淵上氏
またアニメグッズなどであれば、フランスなどヨーロッパの国でも結構売れたりします。
自社の商材がどの地域に適しているかを考えた結果、ヨーロッパで売れそうなものであれば、ヨーロッパでの販売も念頭において良いのではないでしょうか。
徳田
確かに、伝統工芸品や抹茶、アニメグッズ、包丁など、EUでも売れている・売れやすい商品があったりしますもんね。
そのあたりを意識しながら、正しい税務知識を持って取り組めたら良いなと思いましたね。
ここまで3回に分けて、越境ECの税務について伺ったんですけども……
やはりマーチャント(事業者)さんが税務まわりをすべて処理するのは難しいと思ったので、オプティさんに相談できればなと思いました。
本日は貴重なお話いただきありがとうございました!
淵上氏
ありがとうございました!
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