対談
ECサイトのOMO事例を徹底解説 App Unity水野氏 × 海外Webマーケター徳田
- 2022.12.08
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対談動画
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この記事では、OMOとは何なのか?について、様々な企業の事例を交えながらご紹介させていただきます。
【App Unity 事業開発責任者 水野 正和氏】
日本に適したShopifyアプリの連合App Unity コンシェルジュ(株式会社フィードフォース)。
事業開発責任者を務めチーム全体を統括する。
ZORNとDJ Mitsu the Beatsが好き。【世界へボカン株式会社 代表取締役 徳田 祐希】
日本の魅力を世界へ伝えるというミッションの元、13年以上にわたり、多国籍メンバーと共に越境EC、海外BtoBマーケティングに取り組む。
越境EC企業の年商を35億→500億、14.7倍の成長を導くなど数多くの実績を残す。
Shopifyマーケティングエキスパート。
App Unity 水野 正和氏の自己紹介
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世界へボカン株式会社 徳田祐希(以下:徳田)
どうも徳田です。
本日もマーケティングを学んでいきましょう!本日はApp Unityさんとのコラボで、OMOについてお話を伺いたいと思います。
よろしくお願いします!
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App Unity 水野 正和氏(以下:水野氏)
App Unityの水野です。
よろしくお願いします!
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徳田
オフラインとオンラインの融合であるOMO(Online Merges with Offline)について解説いただきながら学んでいきます。
OMOについては水野さんがApp UnityのYouTubeチャンネルでも解説しているので、そちらも一緒に見ていただければと思います。
早速お願いできますでしょうか?
OMOとはなんなのか?
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水野氏
OMOとは何かいうと、このタイトル通りです。めちゃめちゃOMOローです!
お客さんの体験が大きく変わり、やればやるほど商売がオモローになっていきますので、ぜひ聞いていただければと思います!
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水野氏
私はApp Unityのコンシェルジュをやらせていただいています。
いろんなマーチャントさんのOMOに関するご相談を受け付けて、それをApp Unityに加盟している制作パートナーさんやアプリケーションを組み合わせて、快適に商売に専念できるような環境をご提供しています。
私自身はイオンネットスーパーの立ち上げ等、もう16年ほどECの世界におりまして、「EC大好きおじさん」と思っていただければと思います。
ちなみにOMOとはOnline Merges with Offlineの略で、この言葉が出てきてから5、6年になります。「実際に何をすれば良いのか」というと、僕の中ではCX+EXという公式になっています。
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水野氏
CXは顧客体験、カスタマーエクスペリエンス。EXは従業員の体験、エンプロイーエクスペリエンス。
顧客体験を高めるだけではダメで、従業員体験をどうやって高めるかを併せて考えていく必要があります。
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徳田
カスタマーだけじゃないんですね。
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水野氏
お客様の視点で考えるとなると、やはり経営層から現場の末端の皆さん、従業員の方々も含め、会社一丸となって戦略に沿ってやっていかないと、OMOは実現できないと思います。
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水野氏
そのために、このEXというところも非常に重要だと思っています。
具体的な図ですが……
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水野氏
例えば本部が「こういう戦略で行こう」と言っても、それが現場に浸透しないということがあってはなりません。
お客様のCXを考えると、ここはもうECと店舗の垣根を全部取り払って「お客さんが最高の体験をできることってどういうことなんだろう」というのを、みんなで考えて実行していくことがとても重要になってきます。
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徳田
顧客接点を持っている店舗スタッフの協力なしに、OMOは成り立たないということですね。
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水野氏
ですので、OMOとは、私が勝手に作った言葉ですが顧客感動体験の装置ではないかと思っています。あくまでお客様が感動する体験を作ることが、とても重要です。
よくある問題点について
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水野氏
それとは逆に、たとえば店舗とECで会員が断絶しており、店舗では超ロイヤルカスタマーなのにECでは初めて来たお客さんかのような扱いをしてしまうという問題がよくあります。ロイヤルプログラムなどが何もできていなかったり、店舗とECのポイントが完全に断絶していて相互で使えない、などです。
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徳田
オンラインでポイントがたくさんあるのに、店舗で使えなかったらとても損した気分になりますよね。
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水野氏
そうなんです。ECでとても使っているのに、店舗に来たら他のお客様と平等に扱われてしまうと「なんかちょっと気分悪いみたいな」と思われてしまいます。OMOによってそのようなことを防げると思います。
僕自身、店舗に行ったらECで見たお目当ての商品が品切れしていたり、取り扱っていなくて、がっかりした体験があります。そこをどうやってシームレスにつなげるかが大事だと思います。
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水野氏
また本部側の悩みとして、各店舗ごとにLINE@のLINEビジネスアカウントを作ってしまい、店舗がどんどん拡大していくと1個ずつログインして配信しなければいけない……という事態になっているのをよく聞きます。
そこをどうやって解決し、どうすればお客さんにとって良い体験になるのか。池袋店、新大塚店、〇〇店…とたくさん配信が来てしまうとやはりつらいと思うので、「じゃあどうしたら良いか」というところも考えなくてはいけないところですね。
OMOの事例紹介
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水野氏
アップユニティにもご加盟いただいている、スタッフスタートさんという会社があります。
これは簡単に言うとスタッフコーデが、ShopifyのEC上に組み込める仕組みになっています。今までは、販売員さんの仕事は接客して売ることが中心でしたが、それだけではなく、やはりポストコロナといいますか、最近のソーシャルの考え方を汲み取り、売るだけではなく、それを着こなしてエバンジェリスト的に動く、そのブランドのエバンジェリストになることが重要だと思っています。
スタッフさんを目当てにお客さんがそれを買いに来たり、丸ごとそれを買ったりというのは、EXのもっとも成功している事例だと思います。
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徳田
確かにスタッフさんのコーデやサイジングはとても気になるので、そういう情報がECにあれば「自分と同じくらいの身長の人とか体型の人がどういうふうな着こなしをしているか」を見て買おうと思いますよね。
あとは平日の昼間は閑散期なので、そのタイミングでスタッフさんがそういうところに時間を使うことによって、オンラインの売上を上げたり来店を促進したりするのは、とても理にかなってますよね!
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水野氏
スタッフの方が好きだというのは、やっぱりバイブスで伝わってくると思うんですね。それはとても重要だと思っています。
ですので企業側は従業員にそういうことをやっていける環境を作ってあげるのも大事ですし、それによって売上が上がったら評価をしてあげるという制度も作っていかなければならないと思います。
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徳田
オフラインオンラインだけではなく、本社の方で場合によっては社長直下でそういうことに取り組んでいかないと、なかなかうまくいきませんよね。
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水野氏
社長が大号令しているところは、だいたいうまくいってます。
OMOの基本戦略はどちらかというとD2Cのところからスタートします。要するに、ECからスタートするときと、店舗からスタートしてからデジタルを加えていくときでは、だいぶ軸足は変わってくると思うんです。
ですがやはり悩みとして非常に多く我々のところに問い合わせが来るのは、店舗があって別でECを立ち上げたんだけどうまくいかない……というケースですね。
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徳田
連動してない、ということですね。
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水野氏
そうなんですよ。
そこで、横軸はオフラインとオンライン、縦軸は国内なのか国外なのかというところで、マトリックスを作ってみました。
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徳田
OMOのマトリックスがあるんですね。
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水野氏
これだけでは足りない部分も正直あるかもしれませんが、店舗でやることと、オンラインでやること、例えばECだけではなく来店予約やポイント、CRMなどを、この軸で整理します。
やはり肝はデータベースの構築だと思っています。商品や顧客、ポイント、メタ情報を溜めるところはどうするのか、ということです。
その点では、Shopifyがすごく優れていると思っています。メタフィールドや、いろいろな情報をシームレスに溜められる場所があるというのは、突出して素晴らしい仕組みではないかと思います。
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徳田
メタフィールド上の情報をトリガーにCRMの取り組みや、メルマガの内容を変えたりできますからね。
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水野氏
また、Shopifyと相性の良いアプリケーションで、CRM PLUS on LINEというものがあります。LINEでログインができ、LINEで取った情報も、店舗で取った情報も、オンラインで取ったメタフィールドの情報も生かしたCRMがLINEで出来ます。仕組みが非常に優れているので、これはいろいろ使える場があるかと思います。
あとはやはり徳田さんの主戦場であるインバウンドの部分や、それを活用した越境の部分も、シームレスに言語の壁も越えてできるという意味ではShopifyというのはすごくおもしろいです。
OMOを全体戦略だと捉えていただき、今は店舗しかやっていない人にはこれだけ広げられるフィールドがあるので、まだまだ伸びしろはあると考えていただけるのではないかと思います。
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徳田
越境ECを始められている方でも、実店舗に来店したインバウンドの客を一見客にしないために、OMO施策に取り組まれている方も多いです。
今回アップユニティのチャンネルで、そこに触れさせていただきましたが、本当にこの動きというのは進んでいるなと思いますね。
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水野氏
ではOMOの事例をいくつか紹介します。
今回はShopifyは関係なく、単純にCXというEXの観点で持ってきました。
すでに圧倒的に浸透していて、誰もが使っているところでは……マクドナルドのモバイルオーダーはとても優れてるなと思っていまして。
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水野氏
これが登場するまでの生活を思い出せないくらい優れていると思ってます。
簡単に言うと、モバイルオーダーを開くと一番近い店舗を選ぶことができ、その店舗のメニューを見ることができて、自分のためのクーポンも開けます。また、オーダーすると、持ち帰りの場合は店頭・カウンターで受け取るのか、駐車場で受け取るのか、ドライブスルーで受け取るのかを簡単に選べます。
これはまさにユーザーのエクスペリエンスをとても考えているというところで、非常に素晴らしい事例だなと思っています!
ちなみに購入後、そのお店で食べているとすると、たとえばちょっと時間が過ぎて「デザートいかがですか」という風にクーポンが進化してたりするんです。これも含めてすごいですね!
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徳田
クーポンあるから行こうか、となりますよね。来店促進施策とアプリが連動しているということなんですね。
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水野氏
店舗にいる間にアップセル・クロスセルができていくようなところが非常に優れていると思います。
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水野氏
あとこれは出たとき衝撃だった、Googleローカル在庫広告!
今までは「これ急ぎで買いたいんだけどあの店にあるかしら」「行ったらなかったわ」となり何件か行かなくてはなりませんでしたが、店頭にある在庫がなんとGoogleで検索できます。
これを実現するのは非常に大変で、POSの考え方とかを変えてなくてはなりません。今までPOSというのは、1日に1回のバッチでしたが、リアルタイムにその店舗にあるものを理解できるデータベースが必要ですので、DXはこういうところをトリガーに進めていけば良いと思っています。
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徳田
商品情報のPOSデータを登録して、オフラインとオンラインで同期する必要があるんですね。
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水野氏
その通りです。リアルタイムにPOS情報を反映していける仕組みであったり、それをAPIでShopifyやアドにフィードを送れるような仕組みというのは、やはりShopifyがすごく優れています。
そこもShopifyはおもしろいところですし、こういうことを企業さん自身でやろうとするとかなり大変だと思います。「ツールありきで何をやっていったら良いのか」というのがわかっていくというのは、考えるロジック次第ではすごくやりやすいと思います。
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徳田
これはCXとして素敵ですし、これを実現するためにツールを使い、EXのためにも簡単に導入できるようにした方が良いということですね。
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水野氏
その通りですね!
あとはやはり……もうこれは大革命ですねUber。
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徳田
Uberには助けられてましたよね。
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水野氏
すごく個人的な話をするとそうですね(笑) メルボルンで事故に遭って大変な時にUberで呼んで、すぐにそこから空港まで運んでもらったという経験があります。
Uberにログインすると、どのツールで移動したいかを選択できます。車だけではなく、キックスケーターや自転車などを選択できます。
次に、選んだのものの料金、つまりクラスですね。自家用車なのか、高級車なのかというのも選ぶことができます。
あとは行きたい場所を選択すればもうドライバーと話す必要がありません。決済自体そこで出来るので、料金が勝手に上がることもないし支払い行為も何もいりません。
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徳田
確かに安全ですね!
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水野氏
「どこで待ってれば良いのか」というのも最初に選んで、そこに来る車両の移動場所も全部見えるので、そういう意味でも非常に使いやすいです。
徳田さんは、車の運転をされますか?
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徳田
普段しないですね。
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水野氏
僕はよく運転するのですが、Googleマップはカーナビとは少しインターフェイスが違い、上から見てるものだけなので、都心の首都高速だと複雑でわかりづらいです。
カーナビのようなインターフェースを兼ね備えつつ、iPhoneやAndroid端末の中にはジャイロが入っているのですが、加速度センサーを利用して急ブレーキや急加速などを分析してくれるツールがあります。
Yahoo!カーナビだけにその分析があり、その分析のスコアを見て、あなただったらたとえばソニー損保が20%安くなりますよ、など表示してくれます。
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徳田
安全運転してる人か、危険運転をしているのか識別しているんですね。
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水野氏
そうです。僕のスコアがだいたい平均すると82点ぐらいです。100点を目指していますが。やはりこれを意識すると安全運転になっているところはあって、その評価をしてくれるというのはおもしろいなと思います。
このような、体験をフィンテックなどにつなげるような施策というのは中国ではだいぶ進んでいたのですが、ようやく日本でも出てきたなという感じです。
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徳田
顧客の活動データをベースに提案をするということなんですね。かなりパーソナライズしてますね!
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水野氏
ゆくゆくは車を買った人全員に対して必要かなと思います。もしかしたらテスラとかはそうなってるのかもしれないですけど、裏側はわからないです。買った車の買い取りの値段にも反映するとか、そういう部分が出てくるかもしれませんよね。
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水野氏
あともう1つ。
皆さんGoogleマップを使っていらっしゃると思いますが、よく見ると混雑する時間帯なども出ていて、曜日によって混雑具合も微妙に違います。
これはラーメン二郎の三田本店の混雑状況です。
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徳田
18時ぐらいは混んでないんですね(笑)
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水野氏
ちなみに気づかれたと思いますけど、9時より前にもうかなり混雑してるんです。8時半からやってるんです!朝次郎はたまに僕もやるのですが。8時半から食べられるので、8時ぐらいから並んでいる人もいらっしゃいますね。
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徳田
いつからオープンしてるかってわかるのも良いですね!
僕は銭湯によく行くので、夜中1時までやってるとか、そういう情報がわかるととても助かります。
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水野氏
そして最後、ワークマンのOMO事例です。
実は僕、結構ワークマンで買うんです。しゃれてるんですよ。キャンプグッズなどいろんな使えるものがあって、しかも安い!最近はワークマン人気が高まっていて、人気の商品はすぐに売り切れてしまうんですよ。
ワークマンは1つ特徴的な点があって、実はほとんどフランチャイズでやってる店舗が多いんです。
直営ではないフランチャイズの方々にもWIN-WINである提供をするために、各店舗の方に誘導する施策としてOMOをOMOという言葉を使わずにやっています。
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水野氏
自然な形でやってるのですが、たとえばオンラインで気になったものがあれば、店頭で受け取るか自宅で受け取るかを選択できるんです。
ワークマンは職人さんが利用するため「翌朝の現場に使いたい」というニーズがあり、夜に頼んでおけば出勤前の朝7時に受け取るということも可能です。
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徳田
店頭受け取りなら、物流でヤマトとか佐川さんに運んでもらうよりも、早く受け取れるかもしれませんね。
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水野氏
物流だとどうしても9時からになりますからね。さらに店頭の在庫をきちんとデジタル化して、在庫をきちんと管理しているからできる技です。
たとえばECで取り置きをすると、いったん仮の画面になるんです。次の段階で本当に店頭にあったというのを承認ができたら……要するに確保ができたら「商品を確保できました」という通知が来るので非常に安心して購入ができます。
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徳田
店頭に行ったけどなかったという体験を防げるということで、EXとCX両方とも叶えてますよね!
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水野氏
僕は実際に、夏にファンがついてる服を購入しました。普通は土方の方向けのシンプルなデザインが多いんですが、ワークマンのものはキャンプグッズに合わせた、オシャレな可愛いファンがついていたんです。
僕は上だけを買おうと思って行ったのですが、お店の方はクロスセルがとても上手で「ファンの本体やバッテリーも一緒に買いませんか」と勧める準備が整っていて……これはすごいEXが徹底できているな、と思いました!
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徳田
人気商品をフックに来店促進し、来店した方に対してクロスセルをするようなトークスクリプトも用意されている……という、マーケティング的に考えたらいやらしくなっちゃうんですけど、そこまで徹底されてるということなんですね。
最近アメリカでも、店頭受け取りをとても促進しているんです。従業員の賃金が上がっているので接客に対するコストを抑えたいということで、店頭受け取り用のカープールのような。
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徳田
駐車場を用意していたりとか、店頭受け取りの方を優先して接客するというのもやっていて、店頭受け取りはOMOが進んでるなという印象なんですよね。ワークマンさんも取り組みがとても素敵だなと思いました。
このように、OMOやECだけではなく、食品もそうですし、いろんな情報をどう開示してユーザー体験やエンプロイー体験をどう改善していくかという範囲になってくるということですね?
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水野氏
そうですね!
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徳田
なるほど、理解が進みました。ありがとうございます!
今回の動画でOMOの事例についてお話いただきましたが、次回Shopify Uniteの速報などもお話をいただければと思っています。
ありがとうございました!
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水野氏
ありがとうございました!
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