対談
「マーケターを育成・採用できない」問題の解決策とは?|マーケティングイネーブルメント黒澤氏×海外Webマーケター徳田
- 2022.12.16
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対談動画
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この記事では、マーケターの育成や採用が難しい問題の解決策についてが分かります。
【ブランディングテクノロジー株式会社 CMO 黒澤 友貴氏】
「日本全体のマーケティングリテラシーを底上げする」をミッションに10,000人近くのマーケターが集まる学習コミュニティ「マーケティングトレース」を主宰。
2020年2月に書籍「マーケティング思考力トレーニング」(フォレスト出版)を上梓。【世界へボカン株式会社 代表取締役 徳田 祐希】
日本の魅力を世界へ伝えるというミッションの元、13年以上にわたり、多国籍メンバーと共に越境EC、海外BtoBマーケティングに取り組む。
越境EC企業の年商を35億→500億、14.7倍の成長を導くなど数多くの実績を残す。
Shopifyマーケティングエキスパート。
ブランディングテクノロジー株式会社 CMO 黒澤 友貴氏の自己紹介
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世界へボカン株式会社 徳田祐希(以下:徳田)
こんにちは、世界へボカンの徳田です!
本日はブランディングテクノロジーの黒澤さんに、マーケターの育成や採用が難しいという問題の解決策を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします!
簡単に自己紹介をお願いします。
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ブランディングテクノロジー 黒澤 友貴氏(以下:黒澤氏)
よろしくお願いします、黒澤です!ブランディングテクノロジーという会社でマーケティングの責任者をやっております。
ボカンチャンネルにも第1回で出させていただきましたが、普段は「マーケティングトレース」という誰でもマーケティング戦略を考えられる力を身につけられる型を広めていこう!という活動をしております。よろしくお願いいたします。
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徳田
今日は「なかなかマーケターを採用できない」、「育成が難しい」という問題について伺います。
これは、企業の経営者の方や、中で働いているマーケターの方は皆さんお悩みだと思うのですが、その解決策を黒澤さんが考えてきてくださいました。どのように解決すればよろしいのでしょうか?
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黒澤氏
これがとても大きな課題だというのは、僕も10年以上このマーケティングの業界で仕事をしていて感じています。
改めてそこを体系化し、何が課題なのか、その課題にどのようにアプローチすればよいのかをまとめましたので、その部分のお話ができればと思っております。
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黒澤氏
今日は「マーケターの育成・採用ができない課題をどのように解決するか」というテーマをメインにお話できればと思っております。
最初に経営者やマーケターの悩みを整理をさせていただきます。共通課題を整理するとこのようになります。
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黒澤氏
1つ目が「マーケターの人材定義ができない」。
マーケターという言葉はとても認知が高まっており、「マーケターを採用したい」「自社にマーケターを育成しよう」という動きが出ていると思うのですが……「そもそもマーケターって何をする人なの?」「どういうスキルを持ってる人なの?」という点が曖昧になりやすいです。まずここが大きな課題だと思っています。
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黒澤氏
2つ目は、「マーケティングの仕事が部分最適になる」。
これはずっとマーケティングトレースの文脈でもお話してきましたが……。マーケティングの仕事というのは、広告運用とかSEOの対策や、最近だとSNSでインスタの運用など、どうしてもわかりやすい手段の部分が先に来てしまいやすいと思っています。
3つ目は、「曖昧なまま外部への依頼・依存が進む」。
部分最適のまま進めたものの、今の成果や運用手法が良いのか悪いのかわかっておらず、曖昧なまま外部の代理店やコンサルに依頼し頼ったままになってしまう、という問題があると思います。
これが三大課題です。
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黒澤氏
そして、この図のような負のループになっています。この4つの要素に整理ができるのではないかと思います。
人材定義や業務が曖昧になり、だからとりあえずSNS最適化などのわかりやすい行動をとる、しかし成果が出ないまま外部に丸投げし、部分最適を繰り返す、ということが起きてしまいます。
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黒澤氏
この負のループが起こりやすいため、経営者の方から部分最適になりすぎないよう組織の体質を変えたいという話を伺ったり、マーケターの方からも「本当にこれで良いのか」「根本のところをどうすれば良いのか」というご相談をいただく機会が増えてきたと思っております。
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徳田
確かに。
戦術施策の成功が、ビジネスの成功につながっているかどうか、よくわからないまま代理店やコンサル任せになっていることが多いですよね。
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黒澤氏
言い方が良くないかもしれませんが、マーケターの仕事が伝書鳩のようになってしまっていますね。代理店からレポートをもらって経営者に報告するだけになっていたり、これは良くない傾向だと考えています。
採用はしたものの「その後どのようなことをやってもらうのか」を定義できていないため、活躍できていないんです。
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黒澤氏
マーケターの育成については、Eラーニングのサービスはたくさん出ていて、学習コンテンツは大量に溢れています。しかし、インプットはしているけど、それをどうを活かせば良いのかというところで乖離が出てしまっています。
これも、代理店やコンサル任せになってしまう原因になっていると思っています。ここをまず解決し、この状態に陥らないようにしようという認識を持つことが、まず最初に重要だと私は捉えています。
ここまでが前半部分のまとめになります。
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黒澤氏
外部の良いパートナーと仕事をするのは、とても重要だと思っております。
丸投げにならず、一緒にパートナーとして仕事をするためには、社内にしっかりとしたマーケティング戦略の土台が必要です。
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黒澤氏
たとえば、コミュニケーション部分にフォーカスしたものですと「誰にどのチャネルで自分たちのブランドのどんな価値を伝えていくのか?」を整理する、などです。
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黒澤氏
ある程度は社内で土台の部分を作ったうえで外部のパートナーと協業していったほうが、圧倒的に成果が出やすくなるのではないかと考えております。
本日の、マーケターの採用・育成がうまくいかないという課題において、まず「社内のマーケターにどのような人が必要なのか」という定義が曖昧になっています。「誰に・どこで・なにをやってもらうか」という土台設計ができる人が必要であるという認識を持つ……というところから始められると良いのではないでしょうか。
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徳田
この辺りの設計ができていないために、部分最適になってしまっているところが多いですからね。
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黒澤氏
部分最適に陥ってしまいがちですよね。陥ってしまうともう全てデータでしか見ることができないので、その細部のデータを見て最適化を図っていく……となりがちだと思っています。
ここまでがマーケティングとして、最低限まず自社でやるべきことです。
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黒澤氏
「概念はわかっているけど、何からやれば良いのかわからない」というところが大きいと思うので、もう少し具体的なお話をしましょう。
最初にやるべきこととして推奨しているのは、採用や育成をする上で当たり前なのですが「人材定義をしましょう」ということです。
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黒澤氏
ここが曖昧になっていると、世間でよく言われていることや、「こういうのをやった方が良いですよ」という声に流されやすくなると思います。
自分たちがやるべき業務と、代理店やパートナーさんに依頼する業務がどこなのかを整理し、「自社に必要なマーケターってどういう人なんだっけ?」という人材定義をしていきます。最初にこうした棚卸しをしていくことを推奨しています。
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黒澤氏
一例として、このようなマーケターのスキルセット表を基準に、これが全部当てはまるというよりは「こういう考え方を持ってできれば良い」というイメージを持っていただければと思っています。
マーケティングの業務といっても、派生した領域はとても広いです。経営戦略のところとマーケティングをつなぎ込む部分の仕事もありますし、組織を作るところもマーケターの役割としてあります。また、集客チャネルの設計や、マーケティングのリサーチといった領域、GIの分析とかも含めたデータ分析なども含みます。
この中で自分たちが注力するのはどの領域か、身につけていくべきなのはどこの領域か……を最初に洗い出しをしていくべきかと思います。
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黒澤氏
そのために、このような図を使って整理し、そのうえで調査・戦略・戦術・実行・分析という一連のフローの中で、自分たちがやるべき領域と、外部に依頼する領域と、外部から知見をいただく領域はどこなのか?というところを整理をしていきます。
これは我々ブランディングテクノロジーの組織の一部を切り取ったものですが、「どういう業務が発生して」「どこを自分たちでやるのか」を棚卸しをしています。そうすると外部に依頼するパートナーはどこで、自分たちはどこまでの領域を行っていくのか?といったところが見えてくるようになります。
一連のスキルを棚卸ししたり、身につけるべきことと外部に依頼することを分類をしていく。まずここができると良いと思います。
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徳田
僕らが海外向けのWEBマーケティングを支援させていただくときにも、クライアントの社内にいる外国人メンバーがマーケティングの業務をできます、というふうにおっしゃる方がいらっしゃいます。
しかし、業務を細分化してみると、その外国人メンバーの方ができることと僕らが提供できる価値とで乖離があったりするんです。
お互いふわっとしたマーケティングという業務の中で、できるできないという話になってしまい衝突してしまうのですが、このように共存関係も考えられる中で「そもそもなにやるんだっけ」というところを細分化することは、企業のマーケターにとっても支援事業者さんにとってもスコープがクリアになるのでとても良いですよね。
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黒澤氏
今のお話をお聞きして思ったのですが、たとえば越境ECのプロジェクトを始めるという段階になったとき、まず最初にパートナーの方と話し合い、全体の設計をやるという考え方を持てると良いのかもしれませんね。
たとえば「今、どの領域まで出てきてますか」というところや、「この領域はパートナー側から介入した方が良いですか」といった話し合いです。他にも、今の戦略資料などを見せていただいたり、「ここの調査はどこまでやっているか」、それを「この基準でやっていった方が良いですね」といったところだったり、また、自分たちができない領域については「もうパートナーの方でリサーチャーの方をうまくアサインしましょう」といった話し合いができるといいかもしれません。
これはフレームというほど体系化して整理しているわけではないので、少しカスタマイズして使っていただければなと思います。スキルセット、棚卸、業務の棚卸しといったところを、最初にやっていただければ良いのかなと考えています。
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黒澤氏
今日のテーマであるマーケターの採用・育成に関しては、マーケティングの組織立ち上げ期や、マーケティングを強化していくフェーズにおいては、「どういうマーケターが求められるのか」を把握したうえで、求められている人を採用・育成する、と考えると良いのではないかと思っています。
ですので、そもそも「求められるマーケターはどんな人なのか」をお話させていただければと思います。
ここはぜひ徳田さんにもご意見をいただきながら、深掘りしていきたいと思ってます。
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黒澤氏
これは私が推奨しているといいますか、わかりやすいイメージ共有の図です。
これから求められていくマーケターというのは、表面的に表に見える部分、例えばSNSの表現法や広告手法ではなく、裏側の根底の戦略である「誰に何をどこで」「どういう顧客価値をどういう体験フローで設計していくのか」を設計できる人です。
そのようなマーケターがいるかいないかで、プロジェクトの成功確率が決まってくると思っております。ですので、一番下にある裏側に潜っていくことができる人を採用・育成していくと良いかと思います。
そのために、先ほどのスキルセット表みたいなものを元に「こういう人だよね」と具体化していくことができると良いのではないかと考えています。
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黒澤氏
ここまでの話をまとめます。
マーケターの仕事の基本フローは、広告運用の最適化をする、PDCAを回すというよりは、全体のR-STP-MM-I-Cと言われる、コトラーさんが体系化している一連のマーケティングの流れになります。
この全フローを回していけるような人が、しっかりプロジェクト内・チーム内にいるかが重要なので、この全体フローを設計することをマーケターの仕事と捉えると、土台が整いやすいのではないかと考えています。
戦術・実行や分析・管理を部分的に回してしまうと、伝書鳩の仕事や部分最適の仕事になってしまいがち……というのは先ほどお話させていただいた通りです。
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徳田
これは、そもそも経営者自体がこれを理解していないと、マーケターとして取り組めませんよね。
リサーチや戦略立案の必要性を経営者が感じていないと、そこにマーケターが時間を割いたり、予算を投下することに対して「なにやってるの」と言い出し、もっと戦術の実行と分析の管理を、PDCAをどんどん回してよという話になってしまいます。
ここは経営者側もしっかり理解して、戦略や調査がないと、先ほどの表面的なところで勝負してしまい、なかなか差別化が難しいというところを理解してもらえると良いですね。
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黒澤氏
そうですね。そこが一番マーケター側でも、課題を抱えている方が多いですよね。上の方がわかってくれないとか、そこを組織として求められないということで「どうすれば良いですか」という相談は結構いただきます。
ですから、先ほどのスキルの棚卸しや業務の設計など、ここの考え方を経営者とすり合わせていくことが、ものすごく重要だと本当に思います。
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徳田
良いマーケターを育成する土壌には、マーケティングを理解している経営者がいなくてはいけないということですよね。
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黒澤氏
そうだと思います。
たとえば外部のパートナーの方がマーケティングのプロジェクトに入るときは、やはり、担当者の方がコミュニケーションを取りやすいですよね。経営者の方からは厳しいオーダーが入ったり、場としても当然緊張しますよね。
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黒澤氏
経営者・マーケティング担当者・外部のパートナーの3者がしっかり認識を合わせる場を作るというのは、外部から入る方も意識した方が良いかもしれないと感じますし、その場のセッティングができる方というのはこれから求められてくると思います。
ファシリテーション力とかもそうですし、経営者と共通言語を作る力というところがマーケターに求められる力のとても大きな要素として私は捉えています。
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徳田
自社で雇っているマーケターの方が「今ICの部分しかやっていないので、戦略から見直したほうが良いですよ」とか「リサーチからやりましょう」と言ってきてくれたら嬉しいですけどね。
そのように言ってきてくれたときに嬉しいと思い、そこに対して予算や時間を投下できるような経営者でなくてはいけないというのと、マーケターとしてはこのインプリメントコントロールのところだけではなく、しっかり「今の戦略で良いんだっけ」と振り返る、立ち戻るということが大事だと思いました。
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徳田
本日は貴重なお話いただきありがとうございました!
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黒澤氏
ありがとうございました!
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