対談
Interview
この記事では、マーケターの育成や採用が難しい問題の解決策についてが分かります。
【ブランディングテクノロジー株式会社 CMO 黒澤 友貴氏】
「日本全体のマーケティングリテラシーを底上げする」をミッションに10,000人近くのマーケターが集まる学習コミュニティ「マーケティングトレース」を主宰。
2020年2月に書籍「マーケティング思考力トレーニング」(フォレスト出版)を上梓。
【世界へボカン株式会社 代表取締役 徳田 祐希】
日本の魅力を世界へ伝えるというミッションの元、13年以上にわたり、多国籍メンバーと共に越境EC、海外BtoBマーケティングに取り組む。
越境EC企業の年商を35億→500億、14.7倍の成長を導くなど数多くの実績を残す。
Shopifyマーケティングエキスパート。
前回(「マーケターを育成・採用できない」問題の解決策とは?)の記事はこちら:
「マーケターを育成・採用できない」問題の解決策とは?|マーケティングイネーブルメント黒澤氏×海外Webマーケター徳田
世界へボカン株式会社 徳田祐希(以下:徳田)
こんにちは、世界へボカンの徳田です!
本日はブランディングテクノロジーの黒澤さんに、マーケターの育成や採用が難しいという問題の解決策を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします!
簡単に自己紹介をお願いします。
ブランディングテクノロジー 黒澤 友貴氏(以下:黒澤氏)
よろしくお願いします、黒澤です!ブランディングテクノロジーという会社でマーケティングの責任者をやっております。
ボカンチャンネルにも第1回で出させていただきましたが、普段は「マーケティングトレース」という誰でもマーケティング戦略を考えられる力を身につけられる型を広めていこう!という活動をしております。よろしくお願いいたします。
黒澤氏
こちらはマーケターの仕事のフローです。ここはきちんと図解して、プロジェクトの要件定義書やチームの役割定義に入れ、意思決定される経営者層の方と共有しておくことができると良いかと思っています。
つぎに、求められるマーケターや、そもそもマーケターの役割とは何かを整理した図がこちらになります。
黒澤氏
マーケターの役割には色々な定義があると思いますが、やはり最終的なゴールは損益計算書のPLの部分、つまり利益創出ですね。顧客価値を最大化したときに、利益が最大化されるというのが基本ロジックだと思っています。Willingness to Pay、つまり支払い意欲なので、通常の価格より高く払っても「買いたい」と思ってもらうようなブランド価値の伝え方や、体験の作り方を生み出したときに、最終的に利益に返ってきます。
ここをいかに作るかというところに立ち戻り、マーケティングのチーム内やプロジェクト内で議論をすることが重要ですよね。これは経営層の方ともすり合わせもし、最初に知っておいていただけると良いかと思います。
そして、このWillingness to Payの引き上げや、ブランド価値の最大化は、マーケターの皆さんはやりたいと思ってるものの忙しくて追求しきれてないのが現状なので、ここを追求する環境を整えていくことができると良いのではないかと思っています。
マーケターの役割定義については以上です。
徳田
前編のスライドにあったインプリメントとコントロールのところだけやっていると、価格を落とすことやコストを下げることばかりに意識が行ってしまい、「価値を上げる」ことに意識が行ってないから、Willingness to Payが上がらずどんどん縮んでいってしまうんですね。
黒澤氏
それは大いにあると思います。広告運用などでもよくありますよね。
利益の最大化やブランド価値の引き上げよりも、CPIの最適化することを優先すると、セグメントを絞ることが正解となってしまいます。
徳田
事業を成長させるという面でも、買いたい気持ちを引き上げ売れる仕組みを作るために、既存の業務を最適化するというよりは、戦略面から考え直していくのがマーケターとしての役割ということですね。
徳田
このように自社の価値を高めて、ブランド体験などを設計できるマーケターはとても少ないですよね。一般的な定義は知っていても、それを自社にどうやって当てはめるかを考えて実行できる人はなかなかいないと思うんです。採用するとなるとおそらく数千万というレベルになってしまうので、育成ができたらいいですよね。
黒澤氏
こういうことができる人を採用するとなると当然年収1000万を超えますし、そもそもなかなかいないので難しいです。特に中小企業の方は、マーケティング強化をしていくうえでいきなりそういう方を採用するのは結構難しいと思います。
ですので、育成をより強化していけると良いかと思っております。
黒澤氏
ここからは、私のその考え方をもう少し体系化し世の中に浸透させられないかと思い、始めているプロジェクトについて、考え方も含めてご紹介できればと思います。
採用するのは難しいので、本来のマーケターの役割をしっかりと果たせる方を育成をしていったり、育成を組織の仕組みとして行っていくことが重要ではないかということで、マーケティングのイネーブルメント発想を持つことが根づくと良いなと考えています。
セールスイネーブルメントなど、海外のイネーブルメント組織では事業を横串で全最適化されており、セールスでは1人の人が成果を出すのではなく、組織として成果を出し続けられるような仕組みが作られています。
徳田
マーケティングのイネーブルメントとは、マーケティングを有効化するようなイメージですか?
黒澤氏
そうですね。有効化だったり、マーケティングの力を使って事業が成長できるようにするというような意味合いで言葉を使っています。
黒澤氏
このマーケティングのイネーブルメント自体は、私たちが作っている考え方になります。
前編で、人材定義が曖昧であるために業務も曖昧になってしまい、外部への依存が高まってしまうという負のサイクルをご説明させていただきましたが……。
ここではまず最初に人材定義をします。マーケターと言われる人、これは育成の候補者や採用した方になりますが、その方の特性を診断します。経験や思考行動特性、目指しているもの等を元に「どういうタイプの方なのか」を診断をさせていただき、そのうえでスキルセットの定義や業務の定義を改めて棚卸ししていくんです。そして、どの領域をその人が担っていくのか?どの領域をパートナーに依頼していくのか?……といったところを整理をしていきます。
徳田
そのマーケターの方をどう活かすかというところですね。
黒澤氏
そうです。
先ほどWillingness to Payのところでお伝えしたように、マーケターとは、付加価値をしっかり最大化できたり全体作業ができる人であることが大前提なのですが、とはいえ、チームを作ることが得意な方もいれば、もっと抽象的な経営戦略を作ることが得意な方もいますし、新しいチャネルを開拓して新規顧客獲得をガンガンやっていく人が得意な人もいるなど、人によって特性が違うと思います。
ちゃんとその特性を踏まえたうえで、その人とその組織に合ったマーケターの業務提供をしていくというのが非常に重要だと思っています。
黒澤氏
私の認識ですが、徳田さんはチームを作っていったり、良いパートナーを発見してそこで一緒にオーガナイズしてやっていくような、そういった特性が強かったりされるのかな、と感じています。
たとえばですが、その徳田さんの強みを生かしてもっと尖った仕事の設計をした方が良いとか、私だったらどちらかというと戦略やコンセプトを作る方が得意なので、そこをメイン業務としつつ、「では苦手なところをどのようにパートナーに依頼するのか」というのを設計をした方が良い、といった整理をするんです。
徳田
マーケターとしてのべースを整えつつ、得意領域を伸ばして自分たちがやるべきところと依頼すべきところを整理するというのはとても重要ですね。
黒澤氏
それをやらずに「これやって」と業務だけ当てはめても、当然うまくいかないといいますか、マーケターの仕事にやりがいを感じられなくなりますよね。
自分の良さを尖らせながら顧客を動かし本来の役割を果たす、ということができない。
ですので、ちゃんと特性のところから逆算するというやり方を入れ込んでます。
徳田
自分がどのタイプに分類されるのかすごく気になりましたね。
黒澤氏
このタイプ診断は開発中でして、アンケートに答えていただくと「どういうタイプの方なのか」という結果が出てきます。それをもとに「こういうことを学習できた方が良いのではないか」というのを出させていただいています。まだベータ版なのですが。
黒澤氏
まず人材定義から入ることが非常に重要ですのでそこを設計しますが、そのうえで行うマッピングイネーブルメントという育成のサービスがあります。
しっかり全体設計ができる・土台を作ることができるというのがCMOの役割です。自社にとってのCMOはどういう人なのかという定義はしますが、やはり、CMOに求められる土台の考え方というものがあると思いますので、その基礎思考を身に着けることが、Next CMOには必要です。
黒澤氏
経営層と認識を合わせることが重要なので、経営とマーケティングをつなぐ土台となるマーケティング戦略を作り、計画に落とし込まなければなりません。
黒澤氏
また、PLとマーケティング計画の整合性を合わせるスキルが必要です。
黒澤氏
そして、実行するときに外部のパートナーに丸投げするのではなく、良いパートナーシップを組むことと、それをプロジェクト化するというのがとても重要だと思います。そのためにマーケティングと実行をつなぐスキルの土台を身につけていただけるよう、イネーブルメントプログラムというものを組んでいます。
黒澤氏
これを2か月でインプットをして、戦略のフレームや計画を作るフレームをお渡ししてアウトプットを出していただき、事業会社でマーケティングの経験があるメンターからしっかりフィードバックをもらう、という流れです。ここではメンター制度を採用しています。
黒澤氏
代理店の方などはどうしても自社のプロダクト優先になってしまいますし、コンサルの方もやっぱりご自身の型があります。それは悪いことではないのですが、第三者の客観的な立場で「自分はこうしていた」とか「客観的に見るとここが抜け落ちてるんじゃないか」といったところを、フィードバックをしてもらいます。
黒澤氏
このようにして回していき、2か月で先ほどの基礎思考を身につけていくのですが、2か月でできるのかどうか、私もこれからやっていくところです。
マーケティングイネーブルメントの発想を身に着けるために、まず自分の特性に合わせた土台を作って、基礎スキルを身につけ、インストールする、というプログラムを作ったわけですが、サービスを広げたいという思いはもちろん、このような発想を世の中に根づかせることができればと思っています。
徳田
良いですね。
経営者としてマーケターのメンバーにそういった上流の思考を持って会話ができたらとても良いと思いますし、社内のマーケターが全部できなくても良いと思うんですよね。良いパートナーを見極める力だったり、自分たちに足りないところは何なのかを判断する力があれば、そこに対して予算を投下できると思うので。「全部丸投げ」というさっきの悪い循環のところから、かなり抜け出せるのではないかと思います。
せっかくプロダクトが良いのに、マーケティングがしっかりできてなくて衰退してしまっている産業や企業がたくさんあると思っているので……そういった企業を支援したいという思いで僕も事業をやっているので、とても共感します!
黒澤氏
ありがとうございます!
徳田さんも海外WEBマーケというかなり難しい領域のご支援をされると思うのですが、やはり、担当の方がしっかりマーケの考えを持っていればうまくいくことがあるのではないかと思っています。なんとなく「経営者にこういう目標を言われているから」ということでお願いされてしまうと、プロジェクトとして難しくなってしまうのではないでしょうか。
海外WEBマーケティングはとても難しい領域だからこそ、このような人材をしっかり中に育てていき、覚えていくことが重要なのではないかと考えているところです。
徳田
良い担当者さんがいる会社だと、本当にプロジェクトの成功確率が上がります。この良い担当者さんを育成することは、支援事業者にとってもメリットがあるのではないかと思いましたね。
黒澤氏
捉え方は難しいですね。僕も支援サイドなので「仕事がなくなるのではないか」という見方もできます。
ただプロジェクトとしては絶対良いものが増えると思っています。僕も代理店の立場で支援させていただく仕事を長くやっていますが、やはり丸投げのプロジェクトは難しいです。どうしても双方が部分最適なところで仕事が完了してしまい、健全ではないなと思っています。業界で当たり前になってしまっている「特定のチャネルを代行して終わってOKなんだよ」という基準をなくせたら良いなと思いますね。ホームページの制作なども同様です。
徳田
良い担当者が育成されて経営者もマーケティングに対する理解が深まれば、マーケティングに対する予算も増えてクライアントの売上も伸びるし、我々支援側が支援する幅も広がり、日本としてプラスになるのではないかと思います。スケールが大きすぎますが、本当にそう思っています。
というのも、疲弊している社内のマーケターが多いんですよね。
徳田
それは全体像をつかめていなかったり、センターピンをちゃんと理解していなくて代理店にやられてしまっているところもあります。それを見て「今やってることって本当に必要なんでしたっけ?」というのを僕らから突っ込んだりしているんです。「これは自分たちでできるんじゃないですか」とか、「そこ、それが得意な事業者さんじゃないですよね」ということで「今お付き合いしてるところって、なんでお付き合いしてるんでしたっけ?」というのを再度整理することもあるんですよね。
そのあたりの棚卸しが事業サイドでできると、健全なポートフォリオで予算を組めてとても良いのではないかと思ったので……これは僕がもし事業会社さんだったら投資したいなと思いました。
黒澤氏
ありがとうございます!
ベータ版を出し始めてから、経営者の方から「二番手を育てたい」という形でご相談いただくケースと、マーケターの方から「ぜひ上の方にこれをあげたいです」とご相談いただくケースの両パターンがあります。
どちらも問い合わせ数がとても多くて、サービスをどんどん提供してるところです。こちらのリソースが足りず、十分にできてない面もありますが。
非常に濃い課題感を持っている方にご相談いただくというケースが多いのですが、逆に、今後はそういう課題感を持つ方を増やしていくこともできたら良いなと思っています。
徳田
本日は貴重なお話いただきありがとうございました!
黒澤氏
ありがとうございました!
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