対談
Interview
この記事では、韓国越境ECの参入の仕方、韓国のEC事情についてが分かります。
【藤田 裕貴(フジT)氏】
1983年カリフォルニア州生まれの日米2重国籍。
韓国ECに特化して情報を広く発信する。
日本の魅力を海外に伝える為に日々活動中。
【世界へボカン株式会社 代表取締役 徳田 祐希】
日本の魅力を世界へ伝えるというミッションの元、13年以上にわたり、多国籍メンバーと共に越境EC、海外BtoBマーケティングに取り組む。
越境EC企業の年商を35億→500億、14.7倍の成長を導くなど数多くの実績を残す。
Shopifyマーケティングエキスパート。
世界へボカン株式会社 徳田祐希(以下:徳田)
こんにちは、世界へボカンの徳田です!
本日はフジTさんに、韓国越境ECの参入の仕方や、韓国のEC事情についてお話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
藤田 裕貴氏(以下:フジT氏)
よろしくお願いいたします!
現在韓国9か所のECモールに出店しており、クーパンの公式パートナーをやらせていただいています藤田と申します。
徳田
京都にいながら韓国向けの越境ECを活発にやられているということで、よくTwitterを拝見させていただいています!
今日はYouTubeコラボという形で、フジTさんのチャンネルと僕のチャンネルでコラボさせていただき、韓国の越境EC事情などについてお話を伺えればと思います。
具体的に今、韓国はどのような状態なのでしょうか?
フジT氏
まず「韓国はどのような国なのか?」と申しますと、人口が2022年の統計で5163万人おりまして、日本の半分以下です。
ただECに関しては、公のデータが少ないので2019年の古いデータなのですが……
フジT氏
EC化率といって、全商取引の中でECの割合が18.8%。一方、日本は6.76%。おおよそ日本の3倍ぐらいですね。
また、1995年から自国にAmazonのようなインターパークというECモールがありまして、非常に早期からECの市場や、モールを利用して通信販売で買い物をするという文化が根付き、国民の中では当たり前になっています。
徳田
人口は半分ですがEC化率が高く、インターパークというモールが盛んに使われているんですね。
フジT氏
そうですね。
スマホ決済も非常に盛んでして、人口に対するモバイル決済のシェア率が、世界2位の高さです。
国民一人当たりが年間の通販に使う金額を独自に計算したのですが、世界で3位でした!
小売りにおけるEC売上高シェア率は世界3位です。
ECの売上額の伸び率ですが、だいたい日本の2倍ぐらいの勢いでずっと伸び続けています。
一方、日本からも、越境ECの進出対象国で、シェアが12位です。市場規模は大きいのですが、参入がしづらいため競合が少ないという状況です。
また、ITについては自国での発達が早いです。検索エンジンはGoogleではなくNAVERを基本としており、電子マネーや、Googleにあるような地図やクラウドなど……基本的なサービスはすべてインフラが整っていて、NAVERを中心に経済圏ができあがっています。チャットアプリは、日本は皆さんLINE使ってらっしゃると思うのですが、韓国はカカオトークですね。
徳田
かなり独自の生態系なんですね。
NAVERの検索結果もSEOの枠が結構下の方にあって、上の方はブログだったりと、特殊なんですよね。
フジT氏
そういった絡みもあり、NAVER系のサービスが非常にSEOに強く、ブログを書くならWordPressではなく、NAVERが提供しているNAVERブログを使った方が良いです。
フジT氏
また、Facebookグループのような、NAVERカフェというサービスも浸透しています。オンラインサロンのようなものが無料で作れるサービスです。自社ブランドやD2Cブランドのコミュニティを作ったり、オンラインサロンを提供する際にはこちらもSEOに非常に有利ですので、マーケティングとして非常に有効なツールだと思いますし、実際によく使われています。
徳田
そんな独自の生態系の韓国市場ですが、どのようにして参入されているんですか?
フジT氏
「ECモールに出店しよう」となったときに用意すべき書類はほぼ共通しています。
個人事業主の方は開業届、法人の方は履歴事項全部証明書という謄本を、英語に翻訳して公証役場に持参し、「原本と英語の文が一致しています」という認証をいただいて、それを提出します。また、海外送金が受け取れる英語の残高証明書とパスポートが必要になってます。
徳田
それらの書類を用意して、韓国モールに参入するんですね。
フジTさんが参入するときには、どのようなモールを活用するのでしょうか?
フジT氏
韓国の特徴としてモールが非常に多く、私が知る限り400以上ありますが、まったく均等ではないものの、同じぐらいのポテンシャルです。
日本のようにAmazonや楽天が大きく飛び抜けているような状況とは違い、各モールがそれぞれ大きな力を持っており、その中での変動も大きかったりするんですね。例えば2018年まではGmarketというモールがダントツで1位のシェアだったのですが、そのときに6位圏外だったクーパンが、次の年にはもう1位になっているというような状況です。
フジT氏
前置きが長くなってしまいましたが、複数のモールに分散させておくと、各モールでまとまった売上が上がるので、モールを併用します。
また、自社サイトを運営する場合は、NAVERのサービスを使うというのが非常に一般的で、私もそうしています。
これも韓国の大きな特徴ですが、やはりSEOでNAVERが強いです。ですので、独自ドメインの自社サイトで販売するときは、NAVERが提供する「スマートストア」という独ドメのECサイトのカートサービスを利用します。SEOでも非常に有利ですし、NAVERの「NAVER Pay」という電子マネーがあるのですが、これを使ってる方が非常に多いので、決済してもらいやすいんです。
フジT氏
続いて、モバイル決済のユーザーシェアについてです。2021年上半期の統計では45.6%で、世界で2位につけています。
また、国民一人当たりが年間で通販に使う金額を独自に計算したのですが、3位でした。
徳田
イギリスが1位なのが意外ですね。
フジT氏
そうですね、単価が高かったんです。イギリスも国民の数が少ないですが、単価が非常に高いということで大きな市場になっています。
総合の売上だとイギリスが3位ですが、小売りのBtoCのECの売上高のシェアについては、アメリカのマーケティング会社の統計では、32.2%で韓国が3位ですね。
徳田
韓国語のサイトから買う人は、基本的には韓国の人が多いわけですよね。独自の生態系で自国の中で、これだけ売上高を上げているというのはすごいですよね。
フジT氏
そうですよね。他の国と比べて閉鎖感があるのに、これだけの規模になっています。
徳田
それだけEC化率が高いということですよね。
フジT氏
続いてBtoCのECの売上市場規模ということで、2020年の統計になります。こちらは5位で、12兆円規模です。ただ2019年(前年)からの伸び率が日本のおよそ倍です。
フジT氏
続いてECサービスの決済金額です。
2022年の第一四半期1月から3月までで、クーパンが9兆6226億ウォンということで、一番使われているECモールになります。
2位がNAVERなのですが、こちらは先ほどのスマートストアという独ドメのサイトサービスや、中古品を扱うメルカリのようなサービスもやってるんです。それらも全部合わせてということなので、このクーパンの伸びといいますか、大きさがわかるのではないかと思います。
徳田
約1兆円ってことですよね。
フジT氏
2021年、昨年まではNAVERが1位だったのですが、逆転する勢いです。また、3位のSSGドットコムは新世界という百貨店です。百貨店のモールがこれだけ人気があります。
徳田
伊勢丹モールのようなところが、6000億円売れてるということですか?すごいですね!
フジT氏
おっしゃる通りですね。日本で言うと伊勢丹や高島屋のような、百貨店がやっているECモールです。私も出店してるのですが非常に高単価商品が売れやすく富裕層の会員さんが多いという特徴があります。
4位が配信の民族という、ウーバーイーツのような、出前のサービスです。韓国は深夜の出前が割と一般的です。
徳田
ヤンニョムチキンとかジャージャー麺とか、よく食べますよね。
フジT氏
最近では、ここのアプリのライブコマースで物販を始めて、ネイバーと二強ぐらいの勢いで伸びています。余談ですが、日本からは撤退している「フードパンダ」の親会社であるベルリンの「デリバリーヒロ」という会社が、配信の民族を運営してます。
5位の11番街というところが、ECモール単体で見るとクーパンの次にユーザーが多いモールになります。日本で言うとドコモのような、大手通信キャリアのSKという会社が運営しているモールになっていまして、キャンペーンやセールを頻繁に打つので売れやすいという特徴があります。
徳田
それぞれが大きなシェアを持っているので、「楽天とAmazonだけ出しておけば良いよ」という感じではなく、複数のモールに対して出品をしなきゃいけないというところが、韓国の特徴ですね。
フジT氏
そうですね。それぞれ大きいので1つずつ出していっても売れるのですが、複数出していくと倍増していくというイメージになります。
徳田
よく楽天にいる人とAmazonにいる人は違う属性だから「新しい人にリーチできるよ」という話がありますが、韓国でも、「SSGに富裕層がいる」というように、少しずつ属性が違ったりするのでしょうか。
フジT氏
一番最初にお伝えした「インターパーク」というサイトは、1995年からありますので50代60代のユーザーが多いです。一方「クーパン」はわりと新しいので20代など若年層の方が多いです。
若い方以外は、モールに1回会員登録すると面倒になってずっとそこで買い続ける傾向がありますので、そういった特徴があります。
フジT氏
続いて、韓国の買い物アプリの利用者数です。2022年の3月のデータでは、こちらもクーパンが1位で、2655万人がアクティブユーザとして在籍しています。2位の11番街が840万人ですので、およそ3倍ぐらいです。カッコの中はちょうど1年前の統計です。
徳田
複数のアプリやモールが存在しているということなので、ECの運用が大変だと思うのですが、日本の「ネクストエンジン」のような在庫管理システムもあるのでしょうか?
フジT氏
まさにおっしゃる通りで、私も管理しきれなかったりするので、業務効率化のためにネクストエンジンのようなショップリンカーなどを使っています。
フジT氏
サバンネットというところが有名なのですが、そういったツールを使って複数のモールを連結させて、商品管理・出品や価格改定、受発注の管理を一元管理するというのが一般的な運用方法になっております。
徳田
このクーパンは実際にかなり注目されていると思うんのですが、どのようなモールなのでしょうか?
フジT氏
クーパンは、2010年の7月に設立され、2015年にソフトバンクの孫会長が10億ドルの投資したということで話題になりました。2021年の3月にアメリカで上場しております。
現在時価総額は29兆ウォン、売上高が22兆ウォンでして、2021年で2兆7000億円ぐらいでしょうか。これはどれぐらいの金額かと申しますと、日本のAmazonが2兆5378億円ということで、Amazon.co.jpより2000億円ぐらい売れています。
徳田
すごい規模ですね……人口が半分なのに、日本のAmazon以上に売上高が上がるということですね。
フジT氏
利用者数で見たら、Amazonより多いかもしれません。10代から50代、それぞれの買い物アプリの利用者のアクティブユーザーの統計は、すべてでクーパンが1位になっています。
フジT氏
続いてクーパンのサービスについてです。ECモールというのはおわかりいただけたと思いますが、具体的にどんなサービスをやってユーザーを伸ばしてるのかというところです。
まず月額500円ぐらいで入れるROCKET WOW会員という、Amazon Primeのようなサービスがあります。
この月額500円ぐらいを払うと……
・早く配送してくれる
・配送無料
・クーパンプレイというOTTサービス
という特典があります。Amazonプライムビデオに似ており、オリジナルの、ネットフリックスのようなものが視聴できます。
ロケット配送というのは朝7時以前到着保証がついていて、高速配送のサービスも使えるので生鮮食品などを買われるときに人気です。
Amazonフレッシュのような、ロケットフレッシュという生鮮食品の専門のサービスもありますし、クーパンイーツというウーバーイーツのような出前をアプリで頼めるサービスもあります。
また販売面のサポートとして日本人セラーの専門のサポートがありまして、専用の電話窓口が常設されており、月に1回日本人販売者向けにウェビナーを開催しております。
フジT氏
最後に韓国のライブコマース市場についてです。中国では非常にライブコマースが盛んだと思いますが、昨今韓国でも非常に盛んになってきております。
だいたい2023年で10兆ウォンの売上市場規模になるのではないかという予測がされております。2020年時点ですでに4000億ウォンぐらいの規模になっており、2022年上半期の取引額は3500億ウォンをすでに突破し、2020年の年間の数字に近くなっています。累積の視聴回数は32億回です。
具体的な人気プラットフォームですが、NAVER、クーパン、また、出前アプリの配信民族も、ライブコマースで物販を扱っていて、出前だけではなくてこちらでも活躍しています。
徳田
この独自の生態系で複数のモールで、いろんな属性の方がいらっしゃることがわかりましたが、日本から韓国に越境ECで販売する場合、どのようなものが売れるのでしょうか?
フジT氏
いろいろなものが売れるんですけども……韓国の自国で製造メーカーがない、作ってないものが売れます。
日本のアニメグッズですとか、韓国には主だった時計のメーカーがないのでカシオやセイコーがとても売れますし、キャンプ用品なども売れます。
また、クーパンがLinkedinなどで公式に発表してる通り、ゴルフ用品が爆売れですね。
徳田
ゼクシオのような感じですか?
フジT氏
そうですね。ブリヂストンとかブルーグラウンドも非常に売れます。
また、アメリカなど他の国もそうだと思いますが、包丁やまな板などのキッチン用品も売れますね。他には、電圧の違いを注意しなければいけませんが電化製品も売れます。
徳田
キッチン用品とかアニメとか電化製品とか、そういったものを取り扱っている方は、韓国市場というのも1つ可能性としてはあるんじゃないかというふうに考えられるということですね。
フジTさんは、韓国モールへの出品のサポートもされてるんですよね?
フジT氏
オンラインサロンという形ですが「韓国貿易を勉強したい」「参入したい」という方向けにサポートをやらせていただいています。
あとは韓国のバーチャルオフィスや、各ECモールを連携する商品管理ツールなども現在開発中です。
徳田
そもそも僕はハングルを読めないし、韓国のモールで売れるものがあったとしても自分で出品しようと思わないので……興味ある方はチェックしていただければと思いました。
本日は貴重なお話いただきありがとうございました!
フジT氏
ありがとうございました!
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