対談
Interview
この記事では、中国の越境EC事情、中国のトレンドについてが分かります。
【株式会社ENJOY JAPAN 営業部長 瀧澤 慧氏】
前職の広告代理店で目標売上300%を達成。
実績を買われ、2016年にENJOY JAPANに参画。
担当したクライアントはほとんどリピートする。
【世界へボカン株式会社 代表取締役 徳田 祐希】
日本の魅力を世界へ伝えるというミッションの元、13年以上にわたり、多国籍メンバーと共に越境EC、海外BtoBマーケティングに取り組む。
越境EC企業の年商を35億→500億、14.7倍の成長を導くなど数多くの実績を残す。
Shopifyマーケティングエキスパート。
世界へボカン株式会社 徳田祐希(以下:徳田)
こんにちは、世界へボカンの徳田です!
本日も前回に続きENJOY JAPANの瀧澤さんに、中国のトレンドについて、中国国内のブランドが台頭してきているというお話を伺えればなと思います。
よろしくお願いいたします!
株式会社ENJOY JAPAN 営業部長 瀧澤慧氏(以下:瀧澤氏)
株式会社ENJOY JAPANの瀧澤と申します。弊社は中国に特化しておりまして、今期で13期目を迎えます。
代表の瞿史偉は上海出身です。上海に現地法人があり、瞿が中国と日本を行き来しながら、日本のものを中国に、中国のものを日本に、ものだけでなくプロモーションなどもそれぞれに提供している会社です。
2010年設立ですので、その間に東北大震災や尖閣諸島問題、今回のコロナ等、逆風も多い中、乗り越えながら頑張ってきています。
我々のチームは日本と上海の法人と連携させながら、ビジネスをさせていただいております。日本企業の皆様に関しては、私のような日本人のスタッフがお客様の窓口になり、非常にパワーを持っているインフルエンサーでもある松浦がクリエイティブ面を統括し、中国の数字やデータについては中国人スタッフがプランニングをしております。
中国側のノウハウが必要であれば、瞿史偉が我々の窓口を受けながら現地スタッフをアサインしてお客様の課題解決に向かっていく……というように、ワンチームでやらせていただいております。
瀧澤氏
簡単に事例をお話させていただきます。
こちらはヤクルト化粧品様の事例です。
ヤクルト様は2020年に越境ECをスタートをさせました。中国ではヤクルト飲料の知名度が非常に高く、多くの人が知っているのですが……そこが化粧品を出していることは知られていないので、ヤクルト飲料の高い認知度をうまく使いながら化粧品に落とし込んでいく形で進めています。
ヤクルト様の場合、プランニングして実行するというよりは、いろいろやってみながらそこから出てくるユーザさんの反応やコメントを拾い、その上で「このようにやっていった方が良いのでは」といった逆算をする形でプロモーションを展開をさせていただいております。
その中で、弊社で中国語のキャッチコピーを作ったり、また、日本在住でライブコマースができて売上も出せるような方はなかなかいないのですが、弊社でそれができる方を発掘いたしましたので、定期的にライブをやっております。また、SNSのインフルエンサーを起用したプロモーションなどもお手伝いをしております。
そろそろ訪日観光客が戻ってくるタイミングかと思いますので、インバウンド施策の事例もご紹介させていただきます。
瀧澤氏
こちらは資生堂薬品様のモアリップというリップクリームの事例です。
2017年に中国の「同道大叔」というキャラクターを起用しました。商品3個のパッケージの上にヘッダーシールをつけ、ICカードシールを4種類作成しておまけで1種類ずつ入れるという施策をドラッグストアさんにて展開したのですが、大きな反響がありました。
当初2017年だけお試しでということだったのですが、翌年2018年になったら今度はドラッグストアさん側から「今年はやらないのか」という声が上がり、2018年、2019年と続けて実施しました。2020年はコロナ禍ということで見送りになってしまいましたが、非常に大きく当たった企画でした。
瀧澤氏
それでは本日のメインテーマである国潮をご紹介させていただきます。
瀧澤氏
「国潮」とは、1990年後半から2012年ごろに生まれたいわゆるZ世代の若者の間で流行ったものや価値観を説明するとき、頻繁に使われるようになった言葉です。2021年ぐらいから言葉としては出てきており、国は中国、潮は流行という意味です。
もともとファッション業界のトレンドを指す言葉として使われてはいたのですが、最近ではファッションだけに限らず、中国の文化やテクノロジーなど幅広いジャンルで国産、つまり中国産を意味する言葉として使われるようになっています。
瀧澤氏
なぜ「国潮を無視してはならない」のかと申しますと……以前は我々日本人も、中国製品には安かろう悪かろうというイメージを強く持っていました。しかし現在、さまざまな分野で中国製の品質がコストを抑えつつ非常に上がってきています。そのため比較的若いZ世代と言われる人の間では、海外製だから買おうとか日本製だから買おうといった価値観が非常に薄れてきています。
中国製も含めてどこの国のものでも良いので、コスパが良いものを買うという価値観にシフトしてきているという大きな流れがあります。
瀧澤氏
こちらは化粧品の例です。
パーフェクトダイアリーという化粧品会社で、中国メーカーとして初めて2020年にアメリカの証券取引所に上場を果たしており、お金の面でも売上の面でも非常に勢いがある会社です。
また、このパーフェクトダイアリーと同じく、中国を代表するコスメブランドである花西子があります。このブランドは、アリババにおける売上が、海外のハイブランドコスメであるエスティーローダーやランコムの売上を上回るようなところまで来ています。中国国産のブランドが非常に勢いがあるという良い事例かと思います。
花西子のデザインを見ると、日本の化粧品にはあまりないようなデザインであったり、ちょっと昔の中国を連想させるようなデザインなどを商品に落とし込んでいます。写真映えするというところでも売れてるのではないかと思います。
瀧澤氏
もともと国潮という言葉がファッションからスタートしているので、ファッションの例もご紹介いたします。
李寧というスポーツブランドの事例です。李寧自体は昔からあるブランドなのですが、2018年にニューヨークのファッションショーで人気に火がつき、これが国潮のきっかけを作ったとも言われております。
また、ベビー用品の事例も見逃せません。もともと日本のベビー服ブランドもメイドインチャイナだったこともあり、中国のベビー服ブランドにも人気が集まるようになっています。ただ口に入るような粉ミルクなどに関しては、まだ信頼度が低く、海外製・日本製の方が安心というイメージがあり、まだ国潮の流れが弱いと思います。
瀧澤氏
まとめますと、この流れというのはもう誰にも止められないと思います。ですので、いかにこの流れに乗ったうえでマーケティングを考えていくのかというのが重要になるかと思います。
越境をやるうえで、今までは競合というのは日本企業、韓国、欧米諸国などを考えておけば良かったのですが……これからは中国企業を競合のベンチマークとすることが必須になってくると思います。
徳田
この国潮を理解し、彼らのトレンドとなっているブランドをチェックしながら、日本企業としてどのようなポジションを築いていくかを考えていくわけですね。
瀧澤氏
そうですね。
次に、我々が普段お客様とお話をさせていただいていて非常に気になっていることがあるので、ご紹介します。
瀧澤氏
失敗例をいくつか挙げさせていただきます。
中国の広告運用会社さんに任せていたとある企業さんの例です。自社の快手の投稿なのですが、どこが失敗かわかりますか?見ただけでは難しいかもしれませんが、色の組み合わせで失敗しているんです。
赤と緑というのは一昔前の中国の服装によく見られた色の組み合わせで、「ダサい」という印象を与えてしまいます。これではブランディングがまったくもって無意味になってしまう、という事例です。
瀧澤氏
続きまして、これは日本の越境ECの運用会社さんに任せていた事例になります。
子紅本(レッドブック)のインフルエンサーの投稿なのですが、こちらは文章の長さに問題があります。今は文章を少なめにするのが主流です。このあたりは流行り廃りがあり日々変化しているので、こういったトレンドも敏感にキャッチをしていく必要があります。
瀧澤氏
また、こちらも中国の越境EC会社さんに任せていたとある会社さんなのですが、こちらではインフルエンサーを起用していました。
弊社で開発を進めているマーケティングツールを使い、起用したインフルエンサーのバックデータを見てみました。このツールを使うと、そのアカウントが抱えるフォロワーの年齢層や、フォロワーが興味を持っているワードを拾えるようになります。
化粧品の会社さんですので、本来であれば「美妝」が一番上に来ているようなインフルエンサーを起用しないと意味がないのですが、この方は「美妝」が4番目になっています。
こうしたバックデータまできっちりと見て、インフルエンサーの施策もアサインができるようなパートナーと組んでいかないと、お金の無駄になってしまいますよね。
こういったマーケティング戦略が、中国の企業に任せきりになっているのではないでしょうか。その中国企業がマーケティングのこともわかっていれば良いのですが、我々の感覚値では、お店の運用などは得意でもマーケティングとなると苦手という会社が非常に多いです。お願いする日本企業からすると、1社にマーケティングも店舗の運用もお願いできれば、非常に楽ではあるのですが、しかしやはり会社さんによって得手不得手があります。店舗の運用はプラットフォームとのやりとりなどになるので得意な会社も多いのですが、マーケティングになると非常に苦手な会社さんも多いです。
信頼するのは大事なのですが、本当にマーケティングや流行を理解しているとは限らないという目線は非常に重要ではないかと思います。そこをどうジャッジするかというのは、運用の担当者が自分自身でしっかりと中国マーケティングを理解し、丸投げにせずにパートナーをコントロールすることが非常に大事であると思っております。
徳田
どこのプラットフォームを選ぶかというところもそうですし、マーケティングの戦略を考えることとどういった施策を行うのかといった戦術を考えることは別の話になりますよね。プラットフォームとのやりとりが得意なところ、戦略を考えるのが得意なところ、戦術の実行やPDCAを回すのが得意なところとある中で、それがひとつの会社で完結することはなかなかないです。
また、現地の会社にお願いしたから大丈夫と思っている方が英語圏でも多いのですが、日本の企業ほどきめ細やかにいろいろ考えて取り組んでくれる会社や、説明してくれる会社はないと思います。中国語や英語の言語の問題ではなく、こちらの思いが伝わらずコミュニケーションがとれなくて、マーケティングがうまくいってるかどうかがよくわからないという相談も多いです。
そういった課題を持ったお客様も御社に来られているのではないか思いました。
瀧澤氏
状況としては同じですね。
徳田
そうですよね。
一緒に伴走していくというスタンスやマーケティングの視点を持っていて、上流工程から一緒に取り組めるところと組めると良いのではないかと思いました。そもそも選ぶプラットフォームを間違ったら勝てるものも勝てませんからね。
瀧澤氏
今回、2回にわたってお話をさせていただいたものの要点をまとめます。
商品を並べれば売れるとか、インフルエンサーに紹介してもらえば売れるということが、まったくなくなったと思っていただいて問題ありません。中国の越境ECというのは、やはり片手間では絶対に成功しません。「インバウンドで売れていたお土産だから」という理由だけでは、もう売れないと思います。
ですので、数百万の予算でかつ短期的に黒字を出すのは難しいです。しっかりと予算組みをし、中長期的なビジョンを持って取り組まないと絶対に成功は見えてきません。腰を据えて本気でやらないと成功しないという状況になってると思います。
徳田
これは英語圏も同じで、やるならば覚悟をもって取り組まなくてはならないし、予算も人的リソースも必要になるというのは世界共通なんだなと思いました。
お話を伺い、非常に真摯に取り組まれていると感じたので、中国向けの案件があればぜひ相談させていただきたいと思いましたね。
瀧澤氏
ありがとうございます!
話の中で紹介させていただいた、弊社が開発しているマーケティングツールのミーエルというものがあります。こちらは今、東京都から援助を受けて開発をしているのですが、中国語がわからない日本人の担当者の方でも中国ECまわりのマーケティング情報を検索できるサイトになります。
もしこういったものにご興味ありましたら、ぜひENJOY JAPANまでお問い合わせをいただければと思います!YouTubeチャンネルも同時にやっておりますので、ぜひよろしくお願いします。
徳田
今回コラボという形で、こちらのチャンネルでも私の方でお話させていただいていますので、両方見ていただけたらなと思います。
本日は貴重なお話いただきありがとうございました!
瀧澤氏
ありがとうございました!
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