対談
Interview
この記事では、PMFとは・PMFしてるかどうかの見極め方についてが分かります。
【株式会社才流 代表 栗原 康太氏】
BtoBマーケティングや法人営業、新規事業開発など、コンサルティングサービスを提供。
「メソッドカンパニー」をビジョンに掲げ、ノウハウ発信に注力している。
【世界へボカン株式会社 代表取締役 徳田 祐希】
日本の魅力を世界へ伝えるというミッションの元、13年以上にわたり、多国籍メンバーと共に越境EC、海外BtoBマーケティングに取り組む。
越境EC企業の年商を35億→500億、14.7倍の成長を導くなど数多くの実績を残す。
Shopifyマーケティングエキスパート。
世界へボカン株式会社 徳田祐希(以下:徳田)
こんにちは、世界へボカンの徳田です!
本日は才流の栗原さんに「PMFとは」「PMFしてるかどうかの見極め方」についてお話を伺いたいと思います。
よろしくお願いいたします!
簡単に自己紹介をお願いします。
株式会社才流 代表 栗原康太氏(以下:栗原氏)
株式会社才流(サイル)の代表をやっております栗原と申します。
本日PMFというテーマでお話をさせていただきます。才流は主にBtoBの企業様向けに営業やマーケティング、新規事業まわりのお手伝いをさせていただく、いわゆるコンサルティング会社です。
栗原氏
弊社は過去4年で150社ほどご支援をさせていただいているのですが、今回のテーマである「PMF」に関しては、スタートアップの企業様から中堅・大手の企業様まで、社内で新規事業に取り組まれてらっしゃいます。
そうした企業内の新規事業において数多くの支援実績があります。
栗原氏
私自身は、10年以上BtoBマーケティングを専門にやっております。
複数の書籍を出版しており、2022年の11月には「新規事業を成功させる PMF(プロダクトマーケットフィット)の教科書」というPMFをテーマにした書籍を出版いたしました。
徳田
「PMFってなんだろう」、「自分たちではPMFしてると思っているけど実際どうなんだろう」という見極め方のようなところについて、お話を伺えたらと思います。
栗原氏
ではPMFについては私から解説をさせていただきたいと思います。PMFはプロダクトマーケットフィットの頭文字を取った概念で、「商品と市場が適合している状態」と一般的に定義されております。
これだけだとイメージがつきにくいと思うので、まずは、逆に「PMFをしていない状態」というのはどういう状態なのか?というのをご紹介します。
栗原氏
皆さんもなんらかの商材、もしくは事業を担当されているかと思いますので、こちらを見ていただくと、自分自身の事業がPMFしているのかどうかがわかると思います。
PMFをしているかどうかを計測する指標がいくつかあるのですが、定性的に見極められるものをご紹介をさせていただきます。
たとえば営業については、商談をしてから受注するまでの期間が非常に長くなってしまう、お客様の検討の熱量や優先度が低い、営業の研修としてロープレ的なトレーニングを行うものの受注率が上がらない、といったものがあります。
もしくはマーケティングという側面ですと、マーケティング投資をしてコンバージョンやリードは取れるが受注につながらない、などです。
栗原氏
象徴的な例として、導入したお客様に事例インタビューをお願いするケースがあります。事例インタビューはお客様側で満足していただいていたり、プロダクトを使っていないとOKしてくれないことが多いと思います。
PMFしていないものを扱っていると、そうした事例インタビューを依頼できるお客様が全然いらっしゃらない状態になります。
徳田
これは海外WEBマーケティングでも使える思考ですね!
メールを返信したけど、全然そこから音沙汰がないことがよくありますし、事例インタビューがなかなか取れないことも多いです。
日本の市場ではフィットしてるけど、海外の市場でフィットしていない、つまり「PMFしていないのではないか?」というときに、見る視点としてもとても良いですね。
栗原氏
そうですね。
問い合わせが発生していないという指標がありますが、非常に強くPMFしている商材であれば、お客様がどこからともなく聞きつけてきて問い合わせが月数十件発生していたりするんです。しかしPMFしていない商材は、サイトや広告を見ている人はいてもお客様のニーズに刺さっておらず、問い合わせが発生しません。
これは海外マーケでも一緒だなと思います。
栗原氏
続いて有名な企業さんや人の事例で、「PMFしている状態」をいくつかご紹介いたします。
まずグループウェアを提供されている上場企業の「サイボウズ」さんです。kintone(キントーン)などのCMで有名かと思います。
こちらの場合、創業してなんと1期目から計画の3倍弱ぐらい売上がありました。
非常に面白いなと思ったのが、当時2000年前後でしたのでFAXで有料ライセンスの申し込みを受け付けていたところ、申し込みのFAXが止まらなくてロール紙が床にトグロを巻いていたそうです。
それだけの反響があったということですね。
栗原氏
つづいてSmartHRさんという非常に有名なHR領域のスタートアップの企業様です。
プロダクトをローンチするとき、Facebook広告を予算2万円と非常に少額で出稿したところ、まだプロトタイプすらできていなかったにもかかわらず、口コミ等で「こういうサービスあるよ」と広がり続け、1か月でなんと200名ほど応募があったそうです。
栗原氏
これはマーケティング業界の言葉で言うと、CPA獲得単価が非常に安いです。100円ぐらいで1リード取れているようなケースですが、普通そんな施策はほとんど存在しません。
かなり強くPMFしているという事例ですね。
栗原氏
あと「こんまりさん(近藤麻理恵さん)」という世界的に有名な片付けコンサルタントの方がいらっしゃいます。
こんまりさんはもともと片付けが非常に好きで、19歳のころから"片付けコンサルタント"と名乗っていたそうですが、一旦就職したもののこんまりさんへのオファーが全然絶えなかったんです。
独立すると、半年先まで一気に予約待ちになったそうです。
おそらくこれを聞いている方は、「自分の事業もこんなふうになったら嬉しいな」と思うのではないでしょうか。こうした状態がPMFしていると言われています。
こちらの図はPMFを非常にわかりやすく表現していると思うのですが……
栗原氏
PMFが見つかる前というのは、大きな岩を押しながら山を登っている状態であるとよく言われています。営業やマーケティングの努力をするものの、なかなか成果に結びつかない状態です。
PMFをしたあとは、山から岩が転がり落ちていくのでそれを必死に追いかけなければなりません。お客様からの問い合わせが大量に来たり、それに伴って社内の人員が必要になり採用を急がなければいけなかったり、サーバーの契約をどんどん増量していかなければならないような状態です。
栗原氏
このように前後で変化があるというのが、PMFの定義としてわかりやすいかと思います。
PMFという概念は、マーク・アンドリーセンさんという方が提唱しました。アメリカのアンドリーセン・ホロウィッツという世界的に有名なベンチャーキャピタルの方で、ご自身でも起業家として大成功され、その後ベンチャーキャピタリストとしても大成功されています。
この方がいろんなスタートアップを見てきた中で、成功に必要な概念だということで提唱し、今、海外の企業家にも日本の企業家にも一般的になってきています。
栗原氏
マーク・アンドリーセンさんは、「市場を満足させることができる商品が、正しい市場にいること」と定義しており、この「正しい市場」というのは大きな市場……たとえば1000億円の企業が存在できるだけの充分な潜在的なお客様がいらっしゃる市場であることが重要だ、と言っています。
栗原氏
たとえば日本で5社しか買ってくれなくて、1社さんあたり50万円と市場があまりにも小さすぎるのであれば、それは正しい市場ではないということですね。
先ほどのSmartHRさんやサイボウズさん、こんまりさんの例で紹介しましたが、PMFしているというのはお問い合わせが殺到したり、お客様から「こんな機能も欲しい」といった要望をたくさんいただくような状態です。
当然受注が増えていきますので、営業パーソンやサポートの人員をどんどん増やさないといけなかったり、非常に利益が出ているという状態がPMFのシグナルと言えるのではないかと思います。
栗原氏
より細かく見ていくと、営業やマーケティングでお客様の反応が非常に良く、商談して2週間後や当日で決まっていくようなケースです。
一方、代表の方、もしくは営業部長さんは売れるけれどそれ以外の営業さんは売れないというケースがよくありますが、これはPMFが不充分な状態ではないかと思っています。
PMFをしている商品であれば、経験の浅い営業パーソンでも受注できてしまうこともあるんです。
先ほど海外マーケティングのところで、事例インタビューを依頼できるかというお話をしましたが、事例インタビューに応えてくれる方がいらっしゃったり、どんどん口コミで商品が広がっていくような状態は、PMFしていると言えます。
こちらをお読みいただいた方は、自分たちの商材がどれぐらい当てはまるのかを見ていただくと良いのではないかと思います。
栗原氏
最後に、こちらは、新規営業の失敗理由ということである調査を引用しました。
スタートアップが撤退をする理由の一位は「市場が存在しなかった」でして、撤退企業の42%がこれに該当するという調査結果があるんです。
ようはお客様のニーズがなかったということで、PMFできなかったために撤退することになった確率が高いです。
新規需要をやっていく、もしくは既存事業でもっと売上を増やしていきたいというときは、本当にお客さんのニーズが存在しているのか・フィットしているのかという観点で見ていただくと良いのではないかと思っております。
栗原氏
徳田さんもいろんな企業のマーケティングをご支援されているのでご経験あるかと思うのですが、よくある間違いとして、商材を作って売れないときに、「営業研修をして営業ロープレをしよう」とか「サイトリニューアルしよう」とか「もっと動画を作ったら売れるのでは」と考えて、営業や広告宣伝で伸ばそうとしてしまうことがあります。
そうではなく、今日お話した「商品が正しい市場にいるのか、商品がお客様のニーズにフィットしているのか」という着眼点から始められると、より新規事業の成功につながると思います。
この視点をぜひ参考にしていただきたいです。
徳田
なるほど、わかりました!PMFについて理解が深まりました。
海外市場でも成功している企業には2種類しかなくて、ひとつは自社の商品が売れる市場を見つけている企業、もうひとつは市場でニーズのあるものに対して自社の商品をカスタマイズして売れる商品にしていたり、売れる値段で売っている企業で、プロダクトを変えるかマーケットを変えるかをしているんですよね。そういった意識が必要なんだなと思いました。
栗原氏
そうですね。表に出ているマーケティング施策によって成功しているのではないかと要因分析しがちなのですが、まさに徳田さんがおっしゃるようなプロダクトやマーケット自体を見直すことが、本質的な解決策になりますので、ぜひこの概念を生かしていただけると良いのではないかと思います。
徳田
前半では「PMFとは何か」というところをお話していただきましたが、次回は実際にプロダクトやマーケットを変えて、どのように成功したのかという「PMFパターン事例」のお話を伺えればと思います。
ありがとうございました!
栗原氏
ありがとうございました!
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