対談
Interview
この記事では、PMFパターンや事例についてが分かります。
【株式会社才流 代表 栗原康太氏】
BtoBマーケティングや法人営業、新規事業開発など、コンサルティングサービスを提供。
「メソッドカンパニー」をビジョンに掲げ、ノウハウ発信に注力している。
【世界へボカン株式会社 代表取締役 徳田 祐希】
日本の魅力を世界へ伝えるというミッションの元、13年以上にわたり、多国籍メンバーと共に越境EC、海外BtoBマーケティングに取り組む。
越境EC企業の年商を35億→500億、14.7倍の成長を導くなど数多くの実績を残す。
Shopifyマーケティングエキスパート。
世界へボカン株式会社 徳田祐希(以下:徳田)
こんにちは、世界へボカンの徳田です!
前回に引き続き才流の栗原さんに、PMFについてお話を伺います。
前回はPMFとは何か、どうやって見極めれば良いのかをご説明いただきましたが、今回はPMFパターンや事例の話を伺いたいと思います。
よろしくお願いします!
株式会社才流 代表 栗原康太氏(以下:栗原氏)
よろしくお願いします!
栗原氏
前半の動画でも詳しくご説明させていただいた通り、お客様のニーズを満たす商品で潜在的なお客様がたくさんいる市場にいることというのがPMFの定義として挙げられております。
このPMFという概念はわかったけれども、具体的にどのように新規事業や既存の事業をPMFさせていけば良いのか、多くの方が気になっていると思いますので、事例ベースでその方法をお話していきたいと思います。
栗原氏
PMFに至るための変数として、まずプロダクト側で変えられることが3つあります。詳細はのちほど説明いたします。
栗原氏
またマーケット側から変えられることは2つあります。
栗原氏
合わせて大きく5つのPMFパターンが存在します。
プロダクト側を変えるというところでは
・製品を変える
・メッセージを変える
・価格を変える
またマーケット側を変えるというところでは
・ターゲットとなるようなセグメントを変える
・市場規模を変える
となります。
詳細をご説明します。
栗原氏
まずはマーケット側の事例から、お話をさせていただきます。
具体的な事例ベースで進めていきますが、各企業様のPMF事例の詳細は弊社のサイトや最近出版しました「新規事業を成功させるPMFの教科書」に細かく載っておりますので、参照いただければ幸いです。
まず、ターゲットを変える事例です。
栗原氏
こちらは「Akerun」さんという、鍵をスマートフォンで開けられるスマートロックというプロダクトを提供されている上場企業さんの事例です。
Akerunさんは、最初は「家庭向けの鍵がスマートフォンで開く」というところからスタートしているのですが、お客様がアクティブに使ってくれていないことがデータからわかり、最初の3か月で「PMFしてない」と気づきました。
その後、個人向けから始まったプロダクトを法人向けに変えました。最近はセキュリティや働き方改革の影響でオフィスの入退室管理市場が非常に大きくなっており、そちらに使える製品としてターゲットを変えたんです。toCからtoBに変えた結果、PMFを達成し、2021年の末に上場に至りました。
栗原氏
次に、弊社のお客様でもある「Shirofune」さんという会社の事例です。主に広告代理店や広告主さん向けに広告運用の自動化ツールを提供されています。
最初は広く広告代理店、広告主さんに製品を売っていたのですが、あるとき想像以上に売上が伸びていないことに気づきました。
そこで、セグメントを6つぐらいに分類し、注力するターゲットを決め、代理店さんの中でも特にこのセグメントに対してはこういう機能を開発していこう、広告主さんのこのセグメントに対してはこういうプランに練り直してやっていこう……というようにターゲットを変えた結果、PMFを達成し、現在、有料アカウント数や売上といった指標が伸びている会社になっています。
徳田
セグメントごとに提供するソリューションを特化させていったんですね。
栗原氏
おっしゃる通りです。
このとき、提供するソリューションの内容や、それに伴う価格の見直しなども含めてしっかりターゲットごとに変えていったことが成功の要因であったと思います。
栗原氏
最後の事例はタイミーさんです。こちらもテレビCMで有名なスタートアップさんで、隙間時間でのバイトのマッチングサービスを提供されている会社さんです。
もともと非常に伸びている企業でしたが、コロナの影響で、アルバイト求人の主な供給先である飲食店が一気に閉まってしまいまい、そこの売上が大きく減ってしまいました。PMFが外れてしまったわけです。
一方、コロナをきっかけにECサイトが使われるようになり、小売や通販の物流が非常に伸び、飲食店のセグメントでもデリバリーは非常に伸びました。タイミーさんはそこに向けて営業部隊を作り、提案内容も変えました。タイミー社長の小川さんは「2度目のPMFを達成した」とおっしゃっていましたが、ターゲットを変えて大きく成長した事例になります。
栗原氏
次に、市場規模を変えた事例です。
こちらは「うるる」さんという上場企業の新規事業でfondeskというサービスを提供しています。企業にかかってくる電話にオペレーターが出てくれて、クラウド型で通知が来るサービスです。
このサービスも比較的初期からお客様のニーズにフィットはしていたのですが、電話代行というカテゴリー自体がなかなかお客様の中で想起がされていないという課題がありました。PMFでいう「マーケットが顕在化していなかった」という状態です。
そこで、「電話代行サービスというカテゴリーがあるんですよ」ということを知ってもらうために、マーケティング的な手法で記事広告を出したり、広報活動を行いました。もともとプロダクト自体は非常に優れていましたので、市場自体を大きくしたことで、PMFを強くしました。
徳田
潜在的なニーズを掘り起こしたという感じなんですね。
栗原氏
おっしゃる通りですね。
事業責任者の脇村さんは「電話代行のアウトソーシングそのものの認知度を高めようとした」と仰っています。脇村さん自身もそのようなカテゴリーがあることを知らなかったため、こうした取り組みをされたとのことです。
続いてプロダクト側の変数の事例をお話します。
栗原氏
まずは製品の機能を変えるという事例です。
こちらは「FLUX」さんという非常に成長されているスタートアップの事例です。
大手のメディアさんの収益改善をするプロダクトを提供しており、現在は20~40%まで収益アップできるようなクオリティになっているのですが、リリース当初は3%台に留まることが多かったそうです。
そこからお客様と一緒に機能を改善したり、海外の類似サービスの事例を参照して機能改善に生かしたところ、あるタイミングでお客様の希望に沿うような収益アップ率になり、どんどん売れていくような状態になったとおっしゃってました。
これは皆さんの事業でも使っていただける品質を磨くという事例です。
栗原氏
次に、こちらも非常に急成長されている「XICA」さんというスタートアップさんの事例です。
このケースの場合、製品はもともとあったのですが、お客様の中で「製品を使いこなせない」という問題がありました。よくある課題かと思います。
XICAさんは、プロダクトだけではなく、サービスの中にハイタッチな人的サポートを入れ、「プロダクトと人でお客様の課題を解決する」という形で、人的な機能を加えることでPMFを達成しました。
徳田
ツールだけではなく、それを導入する人材も投入することによって全体的な顧客満足度を上げたということですか?
栗原氏
おっしゃる通りですね。
これもよくある解決策といいますか、弊社でご支援している中でもどうしても人によるサポートが必要なときも当然ありますので、そうした点を見直すと、PMFに近づくことがございます。
栗原氏
3つ目の製品を変える事例は「ノバセル」さんです。
マーケターの方はご存知かと思いますが、ノバセルさんはもともと運用型テレビCMという、いわゆる広告代理サービスのような形でローンチをされていました。現在は、ノバセルアナリティクスや効果測定ツール、調査ツールなど、クロスセルできるような商材を多数開発されていらっしゃいます。
お客様は、広告やテレビCMを出稿したものの効果測定がうまくできていないという課題を抱えていたり、事前に「どのようなコンセプトでテレビCMを作っていけば良いのか?」といった部分の消費者調査を必要としてたりします。そうしたニーズに答えることで、よりPMFを強めていきました。
周辺ニーズもソリューションとして提供できることで、よりお客様の課題を解決できるようになったという事例です。
栗原氏
続いて、メッセージを変えるという方法です。
こちらは「HERP」さんという採用領域のSaaSで、スタートアップの会社さんなのですが、いわゆる採用管理システム、ATSの領域でサービスを提供されてらっしゃいます。
栗原氏
皆さんご存じかもしれませんが、「スクラム採用」というメッセージを開発しました。HERPさん独自の、プロダクトの思想につながるようなメッセージを出したことで、一気にマーケティングの効率が上がり、ワード自体が広まることで新しいニーズが生まれました。訴求メッセージを変えたことで、PMFを達成したという事例です。
栗原氏
続いて、BtoBマーケティングのツールとして有名な「ベーシック」さんが提供している「ferret One」というツールです。サイトの更新をできるように、CMSの機能やメールマーケティングの機能が載っています。
こちらのマーケティングを弊社でご支援させていただいたのですが、上記の画像にある通り、改善前のferret Oneは、「BtoBマーケティングに必要な機能がこれ1つに」といった訴求メッセージになっていました。これを見込みとなるお客様に見せてみると、「どういうサービスなのかよくわからない」という声があったんです。
そこで、右側がWEB制作から集客、広告、顧客管理までというように、具体的に「こういうツールですよ」と伝えるようにしました。また、ツールの利用シーンがイメージできないとお客様に刺さらないということがわかりましたので、ツールの操作動画をメインのページに掲載しました。
他の改善の効果もあり、次のバージョンでCVRが1.5倍になり、1年でリード獲得数が3倍になりました。このあたりはマーケターの方でも、すぐにプロダクトをいじらずともできるのでぜひやっていただければと思います。
栗原氏
続いて価格の部分です。
こちらは「WACUL」さんという、AIアナリストというサービスが有名なマーケティング関連の上場企業さんです。
AIアナリストは、最初、初回無料でWEBサイトの分析をし、次回以降は1回の解析につき3万円という価格プランでリリースされていたそうですが、蓋を開けてみると、2回目、3回目の依頼がないため収益性がなく、そもそもお客様がプロダクトを使ってくれなかったそうです。
そこで、単発のいわゆるチケット制のような課金形態から月額制に変更し、機能やサービス内容も「継続的にサイトを改善する」「分析のレポートを出す」というように変え、価格プランを達成することで、PMFが1つ前に進みました。
価格プランを見直すことはあまりないのではないかと思いますが、意外と自社の価格の高さ・低さや、それをどのようにお客様に請求するかというプランを見直すと、お客様が買いやすくなる・使いやすくなるということもありますので、ぜひこのあたりもオープンに取り入れていただけると良いのではないかと思います。
栗原氏
また、価格を下げるということでPMFを達成した事例があります。
有名な「サイゼリヤ」さんの事例を書籍から持ってきました。
サイゼリヤさんの1店舗目は全然お客さんが入っていなかったそうです。創業者の方いわく「値打ち感が出ればお客様が来るのでは」という仮説はあったものの、値打ち感の出し方がわからなかったとのことでとりあえず5割引きにしたそうです。
それでもあまりお客さんが来ないので、7割引きまで下げてスパゲティの価格帯を150円〜200円にしたところ、1日20人ぐらいしか来なかったお客様が600人~800人ぐらいまで増えたということです。価格を大きく下げることでお客様のニーズにフィットしました。
これも再現性が高いかと思います。
栗原氏
前半の動画でもお話した通り、製品が売れていないときは、どうしてもマーケティングの仕方・広告の打ち方や営業マンのスキルなど、そうしたところにフォーカスが行きがちなんです。しかし、プロダクトを見直す・マーケットを見直すことで一気に売れることもありますので、ぜひこのあたりも考えていただけると良いのではないかと思っております。
徳田
プロダクト・マーケットという軸があって、一定のリサーチがないと根拠を持ってアクションが取れませんよね。成功されてるところは皆さんリサーチをして、ここに市場があるはずだというように、定量的にも分析した結果アクションを取っているわけですよね。単純にまぐれで当たったというよりは、4Pのどこの要素に力を入れていくことで変化をもたらすことができるかを考えたり、そもそも市場を見直したりしています。
一方、僕らのお客様の場合、アメリカとかヨーロッパとかざっくり決めてしまって市場を選んでいるところもあります。そもそも市場のニーズを把握してないこともあるんですよね。
御社としてPMFするように支援していく中では、まずリサーチからスタートしていくようなイメージですか?
栗原氏
そうですね。リサーチからスタートすることにはなるのですが、ただ、新規事業では最初なのでデータが足りないということもあるんですね。
特にBtoBでは市場調査をしようと思っても、被験者が集まらなくて正確なデータが取りにくかったり、諸々の問題でデータが不充分になってしまい、そこから仮説を立てなくてはならないというケースもあります。
それだとどうしても精度が低くなってしまうので、弊社でおすすめしている手法としては、言い方は悪いですが、一旦広告を打ったり、一旦リードを取ったり、一旦商談をたくさんこなすことです。そうすると当然データが取れますよね。
栗原氏
極端に言うと3件しか商談してないときで立てる仮説と、200件商談したあとに立てる仮説だと、絶対に後者の方が、どういう課題があって・どういうニーズがあって・どれぐらいの価格感だったら買ってくれるか……といった精度の高い仮説が出ますよね。
調査のための調査といいますか、実際に行動した結果それを振り返って分析し、仮説を立てるという方法の方が、再現性が高く成果が出るな……というのが、弊社もいろいろ試行錯誤しての見解ではあります。
徳田
プロダクトとマーケットという視点があったとき、一旦まず今持っているプロダクトをその市場に投下してみましょう、ということですね。一定の期間を絞ってその成果を見て、100件商談したときの結果を見て、先ほどのPMFシグナルのところを判断して、「これはうまくいっている・いっていない」と判断するわけですね。
そして、価格やプロダクトなどに変化をもたらさないと市場にフィットしない、または、そもそも市場に対してニーズがないから市場を変えなくてはならない、と判断していく……というイメージですか?
栗原氏
今ご紹介したようなこれらの事例も、一旦サービスをローンチされてらっしゃいますよね。「売れなかったな」「お客様に別のニーズがあったな」など、実際に試したあとにやられているんですよね。
たとえばスマートロックのAkerunさんが非常に象徴的かと思うのですが、toC向けにスマートロックを1回ローンチし、大量にお客様がいらっしゃったものの「全然使われていない」「もっと別の市場の方がニーズがあるのでは」と、事後的に軌道修正しているというケースがあります。
今回書籍執筆にあたって非常に大きな学びだったのですが、机上の空論とかデスクトップリサーチだけで何かをやるというよりは実際に市場に身をさらしてみて、そこからの仮説とかデータで方向性を決めるというのが皆さんが実際にやられていることなのかと思います。
徳田
最初からPMFしているのではなく、山に対して岩を持ち上げている期間があって、そこでようやくPMFするシーンが存在するということが理解できました。
PMFについてもっと書籍や才流さんのサイトで詳しく書かれていたりするので良かったらチェックしてみてもらえればなと思います。
貴重なお話をいただきありがとうございました!
栗原氏
ありがとうございました!
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