対談
Interview
この記事では、BtoBニッチビジネスのコンテンツマーケティングについてご紹介します。
【株式会社A-can 代表取締役 白砂ゆき子氏】
コンテンツに関わる様々な業務で経験を詰んだ後、
2018年に独立し多くの企業のサポートを行う。
検索ニーズと行動分析で最適な提案を実施する。
【世界へボカン株式会社 代表取締役 徳田 祐希】
日本の魅力を世界へ伝えるというミッションの元、13年以上にわたり、多国籍メンバーと共に越境EC、海外BtoBマーケティングに取り組む。
越境EC企業の年商を35億→500億、14.7倍の成長を導くなど数多くの実績を残す。
Shopifyマーケティングエキスパート。
世界へボカン株式会社 徳田祐希(以下:徳田)
こんにちは、世界へボカンの徳田です!
本日はA-canの白砂さんに「BtoBニッチビジネスのコンテンツマーケティングについて」お話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
株式会社A-can 代表取締役 白砂ゆき子氏(以下:白砂氏)
株式会社A-canの白砂と申します。
私は企業さんのコンテンツマーケティングのお手伝いの仕事をしています。今までオウンドメディアやコンテンツの設計を20社以上は担当してきているので、今日はおもしろい話ができると良いなと思っています。よろしくお願いします!
徳田
今回はBtoBやニッチビジネスのコンテンツマーケティングに取り組む方に向けて、白砂さんにコンテンツマーケティングの秘訣等のお話を伺えたらと思っています。
僕がコンテンツマーケティングの初心者の体でいろいろ質問をさせていただきますので、そちらにお答えいただきたいと思います!
徳田
まず1つ目の質問です。
コンテンツでSEOをして集客をしていきたい方・集客して売上を伸ばしたい方がいらっしゃると思うのですが、このときに気をつけるポイントって何ですか?
白砂氏
「売上を上げたい」と最初から言われることがあるのですが、コンテンツを作って流入が増えたからそのまま売上になるというわけではないんですよね。
また、コンテンツマーケティングを「コンテンツを作って検索流入を得る」ものだと思っている方もわりと多いのですが、そうではないんです。コンテンツマーケティングというのは「コンテンツを使って潜在顧客・見込み顧客・既存顧客とコミュニケーションを取る」ものなので、SEOだけではないんです。
上記の図で言うとSEOとコンテンツマーケティングが交わっている部分がコンテンツSEOで、さきほど徳田さんがおっしゃった「コンテンツを作って検索流入を稼いで売上を上げたい」といった部分はごく一部です。配信方法や見せ方はSEO以外にもありますので、もっと広い意味で捉えておいた方が良いです。
徳田
コンテンツマーケティング=コンテンツSEOだけではないということですね。
白砂氏
そうなんです。
メールマーケティングの中でも、クーポンやカートリマインドメールを送るのはコンテンツマーケティングではありませんが、ニュースレターを送るのはコンテンツマーケティングに入りますよね。配信方法がいろいろあるということを、最初に理解したうえで始めていただきたいです。
SEO対策をやりながらコンテンツを作っていく中でも、コンテンツマーケティングはもっと広いものであると考えたうえで始めていただければと思います。
白砂氏
また、「検索ユーザーさんを捕まえてくる」というのがコンテンツSEOなのですが、この検索ユーザーさんに向けて作るコンテンツというのはいわゆるプル型コンテンツで、置いておいたら勝手に来てくれるというパターンですよね。一度来てくれてコンテンツを読んで「よし買おう」となることはまずないと思うんです。そこからメールマーケティングやSNSなど、何かしらつながりがないとお届けできません。
今撮っているこの動画も、たまたま検索してヒットしてくれた人たちはこの図の動画SEOにあたりますが、チャンネル登録していただかないと、再度その人に向けた良い動画を作ったとしても届きませんよね。だから登録していただいてサブスクライバーにしていくというのをやっていると思います。
それはSEOとコンテンツも同じで、SEO経由で来てくれた方にどんどん登録してもらう、例えばメールマガジンに登録してもらったり、Facebook・Instagram・Twitterなどフォローしてもらうという形でサブスクライバーにして、そこで複数回コミュニケーションを取りながら売上に変えていく……というふうにしなくてはならない点を注意していただきたいですね。やり始めてもすぐに売上が上がるわけではないです。
徳田
コンテンツSEOだけでは売上が上がらないんですね。SEOで流入を取ってそこから会員登録していただいたり、メルマガ登録していただいてコミュニケーションを繰り返していって、関係を構築して売上につながるような形で進めなくてはいけないということですね。
白砂氏
そうなんです。先ほど徳田さんがおっしゃったような相談をされる方は、コンテンツSEOをやってそのままそれが売上につながると思ってらっしゃることが多いんですよね。流入が増えたらそのまま売上が上がると思っているような方、いらっしゃいませんか。
徳田
そうですね。流入が増えたら売上が上がると思ってるけど実はそうではないということが結構多いです。そのあたりを説明するのに今の話はわかりやすいと思いました。
白砂氏
そうなんです。「今すぐコンバージョン」というのは非常に難しいんですね。
コンテンツSEOは人を集めることはできるのですが、その先の施策を必ず考えておかなくてはいけないので、コンテンツマーケティングを総合的に考えて計画を立てていただきたいと思います。
徳田
コンテンツSEOだけをやっても売上が上がらないということですが、どのようなことを考えなくてはいけないのでしょうか?
白砂氏
コンテンツSEOをやってPVを上げていくことはまず最初にやらなくてはならないのですが、そもそも、コンテンツSEOをやってアクセス・オーガニック流入を得てコンバージョンをさせていきたい、という動機が少し不純なのではないかと思います。「SEOをやりたい」、「コンバージョンを上げたい」といった考え方になっているのですが、そうではなく、最初から全体の絵を描いておくことが大切です。
商品や製品・サービスに対して、潜在顧客や見込み顧客がどんな人で何に困ってるのかを洗い出し、その疑問や課題についてコンテンツを作ってお届けしていくというのがコンテンツマーケティングです。その届け方がSEOに向いているかどうかという問題もあります。SEOに向いていればやれば良いですし、そうでない場合は広告で届けるしかないので、そこも考えて設計していくことが大事です。
徳田
ペルソナを設定し、その方のお困りごとを解決するためにコンテンツが存在するということですね。そのコンテンツでもSEOに向いている、つまり検索ニーズがあるものとそうでないものがあるので、コンテンツをどうやって届けるかという部分は設計しなくてはいけないんですね。
白砂氏
そうですね。最初のこのご相談は、コンテンツを作ってSEOをして流入を増やしてコンバージョンを上げたいです、ということですよね。それは上記の画像の上のところになります。考え方の起点が「オーガニック流入が欲しいからSEOをやりたい」となってしまっていて、順番が違うのではないかと思います。
そうではなく、顧客起点で考え、そのあとコンテンツを考え、コンテンツのデリバリー方法が検索エンジンが向いているのかどうかを考えます。
白砂氏
コンテンツを作り始めるとき、全体の設計をペルソナから考えていく、潜在顧客・見込み顧客から考えていく……というふうに進めていただくと良いと思います。
徳田
概要はわかったのですが、具体的にどのように進めるのでしょうか?
白砂氏
まずは提供しているサービスが何で、どんな人をどう助けるのかをちゃんと明確化していただきたいです。
たとえばボカンさんだと「越境ECのノウハウを提供しています」といったところをしっかり定義して、それを欲しいと思う潜在顧客・見込み顧客はどんな人たちなのかを書き出していく。それがペルソナの設定になります。
このパターンで言うと、たとえば「EC事業者で、越境ECをまだやっていない人も含む」といった形です。売上を上げたいと思ってるけどどうすれば良いかわからない人に「海外展開」という提案は正解だったりしますよね。「これからECを始める人」なども良いですし、このように少し広く見ておいた方が良いです。そういったところを設定していきます。
その方たちにコンテンツを届けることによって、「越境、良いかも」と思っていただくこともとても大事なので、その方たちが困っていることを越境EC起点以外でもいろいろ洗い出していきます。
「売上を上げたいな」、「ECサイトをもっと良くしたいな」といったものも含めて課題を挙げていくと、それらに対してノウハウがあればコンテンツを提供できるので、そこでコンテンツを作りますと提案できます。そうすると、そもそも越境ECなどを知らない人たち・頭にない人たちも、たとえば商品写真をきれいに撮りたくて物撮りのコツや取り方を検索してくると、そこからボカンさんとつながりができ、そこから「越境ECをやっている会社なんだな」、「ここに頼んだらおもしろいかも」という感じでどんどん仲良くなっていけば、コンバージョンにつながる、というイメージですね。
徳田
越境ECをやりたい人だけでなく、良い写真を撮りたい人やECに関しての課題を解決したい人というのは売上を上げたい人であるという解釈から、その人たちのお困りごとに対する解決策を提供していくことで見込み客にアプローチできるということですね。
白砂氏
ですので、この3ステップになりますね。
1.自分たちのサービスが何をやるのか、誰の何を助けるのか
2.「誰」というペルソナをしっかり定義
3.ペルソナの困りごとを、自分たちのサービスよりも少し広い部分まで洗い出す
それに対してコンテンツを作るというステップになります。
徳田
疑問や課題はどうやって見つけていくのでしょうか?
白砂氏
疑問や課題については検索に向いてるかどうかという問題があり、検索クエリを最初に理解しておいた方が良いと思いますので、まずは検索エンジンの話をさせていただきます。
ご存じの方も多いと思いますが、検索クエリは大きく分けて3種類あります。
・情報収集型のクエリ
・案内型のクエリ
・取引型のクエリ
現在はKnow、Go、Do、Buyと言われていますが、私はこの3分割の方がわかりやすいのではと思うのであえてこの古い言い方を使っています。
この中で、コンテンツで集客するためには情報収集型クエリになります。
案内型というのは、あるWEBサイトに行きたいという検索意図になり、「Amazon」と検索するのはすぐにAmazonのサイトに行きたい人です。たとえば私がAmazonで1位になりたいと思っても無理ですよね。
取引型はもう何か買おうとしていて、たとえば「将棋アプリ ダウンロード」と検索するのは今すぐダウンロードしたい人ですし、「スイーツ 通販」は今からコンバージョンする人たちです。ここもコンテンツというよりはサービスページや、ECであれば商品ページで狙っていく部分になってきます。
ですのでコンテンツとなると情報収集型クエリになってきます。
白砂氏
この情報収集型クエリを分割するとこの4つになると私は思っています。
・「とは」を知りたいとは検索
・やり方を知りたいHowTo検索
・どちらが良いか、どれが良いかを知りたい比較検討
・感情をそのまま検索窓に入れる感情検索
です。洗い出した疑問や課題がこの4タイプに当てはまるかを考えます。
白砂氏
ここに当てはまるということは検索ニーズがあるということになるので、課題や疑問などをたくさん洗い出してみます。たとえば
「こういうことに困っている人たちに対するコンテンツが作れそう」
「写真の撮り方を探している」
「お問い合わせメールのテンプレートを探している」
「ECサイトの運営者はどうやって売上を上げるんだろう」
「広告のことを調べていそう」
といったものであればHowtoクエリに当てはまる、ということは検索しそうだよね、という流れで私はやっています。
徳田
まずは、自分たちのペルソナの人たちが、どんなことで疑問や課題を持っているかを洗い出すことが大事なんですね。
白砂氏
そうですね。洗い出し、それが検索クエリに当てはまるかを考えていきます。多くは「とは」とHowToなんです。
たとえば越境ECという言葉を聞いて「それって何?」と思えば「越境ECとは」といった検索をしますよね?また、商品写真の撮り方のようなものはHowToですし、多くは先程の図の右上に当てはまります。
左下の比較検討クエリは、「このようなSNS広告をやりたい」「どれが良いのだろう」とおすすめなどを探したり、また、iPhone VS Androidという検索があるのですが、「iPhoneとAndroidどちらが良いのでしょうか」といったAとBの比較のようなものもあります。このあたりはどんなビジネスでもだいたい存在するので、そこを起点に洗い出した課題に当てはめていきます。
右下の感情検索については、たとえば「仕事に行きたくない」といったクエリで、かなりボリュームはあるのですが、対応できるビジネスがあまりありません。カウンセリングや占いぐらいでしょうか。
ですので私はこの3つを当てはめていきます。「知りたいことは何か?」というところにそれに対して回答するコンテンツを作るだけなので、すごくシンプルですよね。そんなに難しいことではないです。
「とは」やHowToがあまり明確でない、つまり明確な「探している」行動がなさそうな場合は、感情的な、楽しいものをお渡しするようなコンテンツになってしまいます。そうなるとSEOではなく、たとえば動画を作って配信するにしても広告で少しインプレッションを出したり、テキストコンテンツであってもSNS広告とかでばらまいたりと、そういったやり方になるかと思います。
白砂氏
疑問や課題など、設定したペルソナの困り事を解決できるものを探すところからやってみて、それに対してさっきのクエリを当てられるかどうかを考えるんです。当てられないのであれば配信は必要ではないかもしれません。検索ニーズがあるような課題であったら、検索流入は狙えますね。
徳田
SEOなど、コンテンツマーケティングをやるときは、通常、キーワードプランナーなどでどれぐらい検索ニーズがあるか、ボリュームがあるかから考えますよね。
しかし、最初に質問させていただいたように、売り上げを上げるのがゴールなので、売上を上げるためにはサービスがなくてはならないし、潜在顧客の困りごとを見つけないといけない、ということで、そもそも順番が違いますよね。
白砂氏
順番が違うことに加えて、検索クエリーから探していくと、たとえば月間検索回数がとても多く、これで作ったら流入が増えるだろうと思い、実際に流入が増えたものの誰もコンバージョンしないという事態が起こったりするんですね。
白砂氏
なぜなら、潜在顧客の困りごとからだいぶ離れているなどといった状態になっているからです。ですので、いったん困りごとをちゃんと洗い出していただきたいですし、困っている人たちと出会うことによってサービスの宣伝になるのではないかと思うんです。たとえば「ECサイトを作ろうかな」というフェーズの人よりも「売上を上げたいな」と思っている人の方が越境ECについて興味を持つ可能性が高いですよね。
月間検索回数よりも、サービスに遠いか近いかというところでコンバージョンは大きく変わってくるんです。月間検索回数が1万ぐらいあっても、このペルソナの困りごとから遠い場合はまったくコンバージョンしません。
白砂氏
でも月間検索回数が300ぐらいでも、困りごとが潜在顧客・見込み顧客とマッチしていればコンバージョンレートが高くなるので、月間検索回数やキーワードを起点に選ばない方が良いですね。
徳田
なるほど!とても理解が進みました。
白砂氏
ありがとうございます。
では今までお話したことをいったんまとめていきますね。
白砂氏
まずはコンテンツの作り方です。
・提供している自分たちのサービスをしっかり定義していきます。
・そのあと潜在顧客・見込み顧客に対してペルソナを設定、つまり「どういう人たちなのか」を定義します。
・そして、その人たちの困りごと・課題を洗い出していきます。
・その困りごと・課題が検索クエリとマッチしそうかどうかを考えていきます。
白砂氏
検索クエリを考えるときは、とは/HowTo/比較検討/感情検索の、4つの検索意図を意識してください。
白砂氏
検索ニーズがあり、検索クエリを対象としてコンテンツを作って検索流入を稼いだとしても、今すぐコンバージョンするわけではないのでその先の施策も合わせて考えていきます。
白砂氏
検索ユーザーをサブスクライバーにしていくという考え方でコンテンツの制作を進めます。
まとめは以上です。
それでは次回への導入です。
これらの施策は、ただコンテンツを作っておくだけではなく、コンバージョンさせていく、最終的に契約を取っていくというところまで考えなくてはならないため、かなり複雑なんです。
なんとなくやるのではなく、最初にバイヤージャーニーという顧客が契約・成約・購入するまでの道のりに沿ってどのようにコンテンツに配置していくかをちゃんと設計したうえで始めた方が、後々のためには絶対に良いです。次回はそのあたりをお話していきたいなと思います。
徳田
ありがとうございます!
コンテンツマーケティングについて概要を理解しましたし、そもそもこのコンテンツとは、SEO=コンテンツ、コンテンツマーケティングではないということがわかり、「どのようにコンテンツを作り分けていくのか」というイメージが湧きました。次のコンテンツバイヤーズジャーニーもぜひいろいろと伺えたらと思います。
ありがとうございました!
白砂氏
ありがとうございました!
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